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エッセイや写真など、気分の赴くままに…

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二度読みは無駄か、効率的か?

ネットの普及に伴って「読みもの」が増えたと思う。ネットサーフィンをすれば次々と新しい記事が出てくるし、その間にもサイトの端にはカスタマイズされたおススメ記事が次…

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8年前
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反省ドラマ=「地味にスゴイ」

宮木あや子さん原作『校閲ガール』をドラマ化した「地味にスゴイ」のTV放送がつい先日終了した。 そもそも「地味」な職業の「地味」な話だから、ドラマ化して絵で見せるに…

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7年前
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「とんでもございません」

面白い記事を見た。日本人なら知らない人はいない超有名企業の就職求人に、 「弊社のことを『敷居が高い』と思って応募を躊躇しているあなた! とんでもございません」 …

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7年前
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「シンメトリーの反対語」についての哲学

「シンメトリー(symmetry)」:左右が同じ形であること。左右対称。 この言葉の反対語をご存知だろうか。 きっと、多くの方は、 「アシンメトリー(asymmetry)」:不均…

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8年前
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ファッション雑誌の校正

ファッション雑誌の校正をやっていた頃、周囲の人から「写真ばかりなのに何を校正するんですか?」と聞かれたことがある。単行本のように活字が多いものは「校正」をするイ…

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8年前
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電子メディアをなぜ読まないか

出版業界の人が「体験的」に知っていること。それは、電子メディアは「目が疲れる」ということ。 出版不況が長引き、打開策として期待が持たれる電子書籍。何とかして作り…

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8年前
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曖昧な「編集者」

「編集者」という職業は、実に「曖昧」である。 出版社に就職して、編集に携わる仕事をしている人は「編集者の○○です」と名乗る。でも、この人、いったいいつから、どう…

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8年前
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「覚えている本」を捨てない理由

 本が好きなおまけに本の仕事をしていると、当然本が増える。書評依頼で送られてくる本だけでも相当数になる。当然書架には入りきらず、段ボールに詰め込んで積み上げるハ…

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8年前
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「書評するなら褒める、酷評するなら書評を書かない」という哲学

以前は「書評誌」というものが多数存在した。書評の役割は、「この本を読んだらこんなに面白かった。だから多くの人に本書を薦めたい」という「推薦文」であると思う。しか…

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8年前
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些細なことも、鍛えなければ衰える!

「ちょっとしたことで入院した高齢者が、あっという間に(足の筋力が衰えて歩けなくなり)寝たきりになる」という話をよく聞く。「そんな1週間程度の入院で?」と思うかも…

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8年前
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ベルギーの教会

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8年前
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やわらかな光

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8年前
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電子書籍の謎

i-padが発売となり、「電子書籍元年」と呼ばれた2010年から早くも5年が経とうとしている。i-padに大量の本を入れておくことができ、旅行中も本の「おかわり」を気にせずに…

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8年前
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ウィーンのモーツァルト像

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8年前
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「ひらく」ことに思う

「ひらく」とは校正用語で、漢字を敢えて「かな」にすることを言う。昨今の出版業界では、なるべく「簡単に」「やさしく」本をつくる傾向があって、文章・内容は中学生でも…

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8年前
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モナコの船着場

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8年前
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二度読みは無駄か、効率的か?

二度読みは無駄か、効率的か?

ネットの普及に伴って「読みもの」が増えたと思う。ネットサーフィンをすれば次々と新しい記事が出てくるし、その間にもサイトの端にはカスタマイズされたおススメ記事が次々に表示される。

これらに次々と目を通している時、無意識に「斜め読み」か「流し読み」をしているらしい。確かに「ふ~ん」「ヘ~ッ」「おもしろ~い」と思って読んでいるのだが、寝る前などに意識して「本日読んだ記事」を思い出そうとすると、内容の「

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反省ドラマ=「地味にスゴイ」

宮木あや子さん原作『校閲ガール』をドラマ化した「地味にスゴイ」のTV放送がつい先日終了した。

そもそも「地味」な職業の「地味」な話だから、ドラマ化して絵で見せるには難しい題材だったからかどうなのか、真相は分からないが、原作はシリーズが3冊もあるというのに、TVの方は実に短期間で終わってしまった。ちょっと残念な気もするけれど、まぁ、無理もないかもしれない。

出版業界でもそれなりに話題になっていて

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「とんでもございません」

面白い記事を見た。日本人なら知らない人はいない超有名企業の就職求人に、

「弊社のことを『敷居が高い』と思って応募を躊躇しているあなた! とんでもございません」

とあった。さて、校正者は、この文章にどう対処したらよいのでしょうか?

今やほとんどの日本人が違和感を感じなくなっているこの文章に、ダメを出せばよいのか、それともスルーすればよいのか…と大いに悩んだわけです。

何を悩んだか、って。

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「シンメトリーの反対語」についての哲学

「シンメトリー(symmetry)」:左右が同じ形であること。左右対称。

この言葉の反対語をご存知だろうか。

きっと、多くの方は、

「アシンメトリー(asymmetry)」:不均衡であること。非対称。

と答えることだろう。もちろん、辞書にも上記のように記載されている(『精選版 日本国語大辞典』『広辞苑』など)。

ところが、である。「アシンメトリー」は「アシメトリー」とも言うのである。上記

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ファッション雑誌の校正

ファッション雑誌の校正をやっていた頃、周囲の人から「写真ばかりなのに何を校正するんですか?」と聞かれたことがある。単行本のように活字が多いものは「校正」をするイメージがあるのだろうけれど、モデルさんの写真や、モードな洋服の写真を見て校正をすることは想像できなかったのかもしれない。

しかし、雑誌も所詮「人」が作っているもの。実際は色々なことが起こるのである。締切前に目を真っ赤にして徹夜状態で仕事を

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電子メディアをなぜ読まないか

出版業界の人が「体験的」に知っていること。それは、電子メディアは「目が疲れる」ということ。

出版不況が長引き、打開策として期待が持たれる電子書籍。何とかして作り、売らなければならない立場の人間としては、できるだけポジティブに電子書籍について考えている。ロマンチストと呼ばれそうな「紙の風合いが良い」「インクの匂いが読書の気持ちを刺激する…」などという主観的なことには一切目をつぶり、「電子書籍の良さ

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曖昧な「編集者」

「編集者」という職業は、実に「曖昧」である。

出版社に就職して、編集に携わる仕事をしている人は「編集者の○○です」と名乗る。でも、この人、いったいいつから、どうやって編集者になったと言えるのだろうか?

いわゆる国家資格のようなものがない編集者は、名乗った者勝ちの風潮がないわけでもない。著者が入れた赤字が正しく直っているかを確認するような、いわゆる校正業務をしている人でも、編集に携わっているとい

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「覚えている本」を捨てない理由

 本が好きなおまけに本の仕事をしていると、当然本が増える。書評依頼で送られてくる本だけでも相当数になる。当然書架には入りきらず、段ボールに詰め込んで積み上げるハメになる。それだけで部屋が一部屋埋まり、更に廊下にも段ボールが浸食していく。

 重量もある。探す手間もある。1年に1度くらいは蔵書を見直し、泣く泣く手放さなくてはならなくなる。本好きの人には分かると思うが、手放す本を決めるのは至難の業だ。

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「書評するなら褒める、酷評するなら書評を書かない」という哲学

「書評するなら褒める、酷評するなら書評を書かない」という哲学

以前は「書評誌」というものが多数存在した。書評の役割は、「この本を読んだらこんなに面白かった。だから多くの人に本書を薦めたい」という「推薦文」であると思う。しかし、一般人が薦めても、「口コミ」に毛が生えた程度のものになって説得力がない。そこで、その分野の専門家や有名人に「書評」をお願いすることになる。そこで起こったのが「批評」や「評論」だ。

曰く、「こんな誤植があった」に始まり、「誤認識があった

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些細なことも、鍛えなければ衰える!

「ちょっとしたことで入院した高齢者が、あっという間に(足の筋力が衰えて歩けなくなり)寝たきりになる」という話をよく聞く。「そんな1週間程度の入院で?」と思うかもしれない。しかし、これは正真正銘の実話である。そのくらい人間の能力は鍛えないと低下するということだ。

実際に自分も似た体験がある。最寄りの駅の階段は何と140段あるのだが、毎日上っている時は問題ないのだが、土日を挟み、月曜出勤をする時は結

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電子書籍の謎

電子書籍の謎

i-padが発売となり、「電子書籍元年」と呼ばれた2010年から早くも5年が経とうとしている。i-padに大量の本を入れておくことができ、旅行中も本の「おかわり」を気にせずにすむ。そして何より、かさばって重い本を購入せずにすむことで書架にはゆとりができ、引っ越しも楽々できるようになる。本の虫にとっては夢のような世界が到来したかに思えた。

当時、出版社は電子書籍の導入に躍起になった。新しい物に魅か

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「ひらく」ことに思う

「ひらく」ことに思う

「ひらく」とは校正用語で、漢字を敢えて「かな」にすることを言う。昨今の出版業界では、なるべく「簡単に」「やさしく」本をつくる傾向があって、文章・内容は中学生でも分かるレベルが、漢字表記についても同様、できるだけ「ひらく」ことが求められる(もちろん、版元によっても異なるだろうけれど)。

こうして、インプットでは簡単な内容、平易な漢字しか出てこない本を読み続け、アウトプットでは手書きで書くことはほと

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