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電子書籍の謎

i-padが発売となり、「電子書籍元年」と呼ばれた2010年から早くも5年が経とうとしている。i-padに大量の本を入れておくことができ、旅行中も本の「おかわり」を気にせずにすむ。そして何より、かさばって重い本を購入せずにすむことで書架にはゆとりができ、引っ越しも楽々できるようになる。本の虫にとっては夢のような世界が到来したかに思えた。

当時、出版社は電子書籍の導入に躍起になった。新しい物に魅かれてビジネスチャンスにしようというよりも、また、大手版元に後れを取らないようにしようというよりも、「紙媒体の書籍が消える」ことの危機感から電子書籍化を急いでいたように思う。しかし、紙媒体の本が消えるほど、電子書籍はその利便性から普及するだろうか?

なぜこう思ったかと言うと、本の虫である自分にとっては「夢の世界の到来」であったはずの電子書籍が、「目が疲れて読めない」ことに気付いたからである。保守的に紙媒体にこだわり、固執するつもりは毛頭ないのだが、とにかく「疲れて読めない」のである。感覚的なもので、自分でも原因は不明だが、とにかく紙媒体よりも断然に目が疲れてしまう。目が疲れるから読書ペースも上がらない。おまけに後からちょっと前に遡って登場人物の行動を確認しようにも、「だいたい真ん中あたりの右ページだった」といったような感覚が残らないため見つけられない、というおまけまでついた。小説でこんな感じでは、ちょっと難しい内容の本や、調べ物をするのは難しいのではないか…と思った。逆に百科事典のようなものは、こういう形式が向いていると思うし、特殊な写真や図版が大量に掲載されて高価な医学書などは、電子書籍があったら便利だろうとも思った(ここには書かないが、著者の印税などの観点から考えると、電子書籍は今後、良い意味で出版業界を大きく変えていくだろうと思う)。

これは自分にだけ起こる現象なのか…と思っていたが、面白い出来事があった。電子書籍導入を目指してi-padを購入してきた上司は、何と、関連のマニュアルをダウンロードして読む代わりに、まず、i-padを使ってネット書店で「電子書籍」に関する紙媒体のマニュアル本を大量注文したのである! 

その理由は、曰く、「紙の本の方が読みやすいから…」。これから電子書籍を導入しようとしている人の理由がこれって…(笑)。

因みに、現在の電子書籍の売り上げはどのくらいなのだろうか。インプレス総合研究所の2014年度の調査結果によれば、下記の通りである(参照サイト:http://www7b.biglobe.ne.jp/~yama88/info.html)。

電子書籍:1,266億円/電子雑誌:145億円 = Total:1,411億円    

紙の出版販売金額は1兆6000億円なので、上記の電子出版物の売上は、出版物の売上全体の9%弱に当たる。これを多いとみるか、少ないとみるか…。いかがだろうか。



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