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田中緑紅が発行した『人魚の家』創刊号

 先日、田中緑紅が発行していた雑誌『人魚の家』創刊号を購入することができた。この雑誌は以前から知っていたが、なかなか入手する機会がなかったので結構うれしい買い物であった。以下に、この雑誌の写真と書誌情報を掲載しておきたい。

大きさ 約25.2cm×約13.1cm、和綴
印刷:大正15年(1926年)8月25日
発行:大正15年(1926年)9月1日
編集兼発行人:田中俊次(田中緑紅)
印刷者:藤井敏治
印刷所:鮮明社
発行所:ちどりや
取次所:山本錦文堂(京都)、改進堂(京都)、喜雀苑(東京)、柳屋書廊(大阪)、だるまや書店(大阪)、つつい玩具店(大阪)
項数:24項

お祝に贈る玩具 田中緑紅
堤町へ行って 有坂與太郎
名所箸の蒐集 田中緑紅
古看板集(一) 杉浦丘園
見せ物見物 ろくろ首 水島兎人
玩具の楽み(一)
古銅印譜(一) 沖野安良
巨泉随筆(一) 川崎巨泉
有楽会の記 田中緑紅
趣味界 村松さんの玩具陳列 ぬらくら生
編集を了へて
表紙の絵は川崎巨泉
奥付

「玩具の楽み(一)」は玩具蒐集家の蒐集分野が紹介されており、名簿としても活用できそうである。「編集を了へて」によると、『人魚の家』は6号発行する予定であったようだ。私が調べた限りでは、『人魚の家』は国会図書館に3号まで所蔵されているが、3号以降は発行されなかったのであろうか。

 ところで、掲載した写真のように、私の購入した『人魚の家』の表紙の右下には蔵書印が押されている。蔵書印の拡大写真を以下に載せておく。国文学研究資料館の「蔵書印データベース」で確認すると、この蔵書印の主は大坂美術倶楽部書記長をつとめた黒崎貞枝のものであるようだ。蔵書印データベースには、黒崎は「慶応 3(1867) 7月和歌山に生まれる」とある。この『人魚の家』は黒崎旧蔵であった。

黒崎貞枝の蔵書印

 最後に余談になってしまうが、『人魚の家』の裏表紙には田中緑紅の発行していた『鳩笛』の広告が載っている。『鳩笛』は架蔵のものがあるので、機会があればこちらも紹介していきたい。

『鳩笛』広告

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