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郷土玩具蒐集家・梅林新市の経歴

 以前から福岡県の梅林新市という郷土玩具蒐集家、民俗学研究者のことが気になっている。以下の記事で紹介した民俗学の研究雑誌『郷土風景』にも梅林が投稿しているのが確認できるが、ウェブ上で調べてみても梅林の経歴はよく分からなかった。Web NDL Autoritiesにも生没年が載っていない。そのため、経歴の詳細が分からない人物であると思っていた。

 しかしながら、先日以下の記事で紹介した加賀紫水が編集していた雑誌『土の香』の翻刻版を読んでいて、梅林が『土の香』に投稿しており彼の経歴が「寄稿者の経歴について」で紹介されているのを見つけた。

この本の経歴の引用元になっている『人物レファレンス事典  郷土人物編』(日外アソシエーツ, 2008年)によると、『福岡県百科事典』(西日本新聞社, 1982年)に梅林の経歴が載っているようだ。孫引きになってしまうが、『土の香』翻刻版から梅林の経歴を引用してみたい。

梅林新市(新市生) 1902年福岡県筑上郡東吉富村生まれ。民俗研究家。中津中学校から小倉師範学校第二部へ進学。小倉市で教職につき、後に福岡市内の小学校に勤めた。終戦を機に辞職し民俗研究に入った。特に一万数千点におよぶ郷土玩具蒐集と研究で知られている。青年期、童話を学んで交流を得た童画家武井武雄のために、童画の題材用の玩具を探し求めたのが玩具蒐集のきっかけであった。著書に『不知火随想』、『福岡県年中行事』、『ふるさとの味』、『福岡県郷土民謡集第一巻』、『豊前茶ばなし』など。1968年没。

また、『日本人形玩具大辞典』(東京堂出版, 2019年)にも梅林が立項されているので、以下に引用したい。

梅林新市 1902~1968年。郷土玩具研究家。郷土玩具、特に雀を収集。号・雀囀窟(じゃくてんくつ)。1924年、玩具に出会い、28年雑誌『アルス』の武井武雄の玩具記事を見て文通を開始、九州各地の玩具調査と収集をした。その情報は武井の『日本郷土玩具  西の部』にも反映された。九州の土鈴の発掘復元、創作に加わり、土鈴ブームにも貢献した。孔版雑誌『雀の本』、『九州土鈴大観』等を土俗玩具研究会より出版、また小数部の肉筆玩具絵集を刊行し、全国の玩具収集家と交信して、九州の郷土玩具界を牽引した。

こちらでは玩具の蒐集・研究家であった点が強調されている。「全国の玩具収集家と交信」の詳細が気になるところである。

 梅林の経歴を少し補足したい。梅林は終戦時に教員を辞職したようだが、この辞職をめぐっては礫川全次さんのブログの以下の記事で紹介されている。この記事によると、梅林は戦争への責任を取って辞職したという。その後、梅林は民俗学や郷土玩具の研究に専念することになったようだが、研究に集中するために辞職したわけではないようである。


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