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謎の男・平澤哲雄の追悼会の発起人たちの共通項―帆足秀三郎、小島茂雄、萩野定一郎

 本記事は以前投稿した以下の記事の続きになるので、未読の方はこの文章を読む前に可能であれば読んでいただけると幸いである。

上の記事の最後で述べたように、平澤哲雄の追悼会の発起人の中に立教学院の関係者と推測される人物が何名かいる。あらためて平澤の追悼会の発起人を引用しておきたい。

西田幾太郎、帆足秀三郎、床次竹次郎、大山郁夫、荻野定一郎、金子堅太郎、金子馬次、吉江喬松、団伊能、南方熊楠、マダムメタクサ、小島茂雄、越英之助、遠藤隆吉、坂井徳太郎、北沢楽天、紀平正美、北昤吉、三土忠造、塩沢昌貞、エンチレール (いろは順)(以下のブログを参照した。元の資料は南方熊楠顕彰館に所蔵されている。なお、筆者が今回取り上げたい人物を太字にしている。)

上記の引用箇所で太字にした人物が立教学院の関係者である。一人ずつ取り上げていきたい。

 帆足秀三郎は立教中学の教員であり、1936年から校長も務めた人物である。『日本キリスト教歴史大事典』(教文館, 1988年)で調べてみると、以下のように立項されていた。少し長くなってしまうが、帆足の経歴の詳細が分かるので、その部分を以下に引用してみたい。

ほあしひでさぶろう 帆足秀三郎 1893.6.13 - 1965.2.7  教育者。東京市深川区に生れる。旧姓千葉。幼時、父親の仕事の関係で朝鮮の仁川に渡る。1909(明治42)年単身上京、立教中学校に入学。同年10月受洗。13(大正2)年立教大学文科入学。17年卒業して聖公会神学院入学。19年中退して立教中学校教諭、宗教主事および寮の舎監となる。36年小島茂雄の辞任に伴い立教中学校校長に就任、40年財団法人立教学院理事、44年立教大学学監を兼任。45年10月公職追放によって教壇を去ったが、53年追放解除になって立教中学校講師として復職。学院史の編纂委員となり『立教学院設沿革誌』(54)、『立教学院八十五年史』(60)を刊行。立教学院評議員会議長および学院理事を歴任。63年3月退任。(後略)

帆足は教員としてだけでなく、立教学院の経営、歴史の編纂なども行うなど多くの面で立教学院の発展に大きく貢献した人物であったことが分かる。平澤とはどのような関係であったのだろうか。

 小島茂雄も帆足と同じく立教中学校の校長を務めた人物である。『立教学院八五年史』(立教学院事務局, 1960年)には、小島に関して以下のように述べられている。

小島茂雄師(第十二回卒業生)もと高橋姓、茨城県下の一教育者の息、県立師範学校に学び、所謂水戸学による素養を積んだが、哲学的思索の問題から中退、立教中学校三年に入学せしも程なく四学年に編入され、卒業と共に恰も立教大学再興に際し最初の大学生となり、従て其第一回の卒業生でもある。又立教大学文学士の第一号でもある。(中略)当時欧米に持囃されたサンタヤナの哲学を我が学界に紹介するに務めた。大正八年立教大学チャプレンに就任。哲学科教授を兼ねた。同九年立教中学校長となり、大学教授兼任故の如く、其間の事績功績はこの史記のそれぞれの項中に明細である。(中略)師は郷党の国家主義者の活躍の一端に加わり、又自ら古事記評釈の個人雑誌を以て所謂神国思想を鼓吹し、最後には大勢翼賛会の参与として、東西に汎ねき其学殖と殊に稀に見る其雄弁と又其堂々たる姿勢とを以て縦横に活躍した。終戦に際し郷里に蟄居して遂に出慮せず、独を慎み晴耕雨読の生活にある。(後略)

上記の引用文から分かるように、小島は立教大学の卒業生で自身の母校でも教鞭を取っていた。『日本キリスト教歴史大事典』にも、小島は立項されてるが、上記に引用した部分とほぼ同じようなことが述べられていた。個人的には、思想家・鶴見俊輔も評価していたサンタヤナを日本に紹介したことや1930年代以降国家主義に傾いたことも気になるが、ここでは立教学院の関係者と分かっただけで十分であるのでひとまず置いておこう。

 最後に、荻野定一郎だが、残念ながらこの人物の情報はウェブには出てこない。『立教学院八五年史』によると、1926年に立教中学校同窓会が創設されたが、当時の評議員の一人が荻野であったという。荻野が立教中学校の卒業生であったことは間違いないであろう。帆足、小島とは異なり、『日本キリスト教歴史大事典』には、荻野は立項されていなかった。

 以上のように、平澤の追悼会の発起人の中に立教学院の関係者が目立つのは偶然なのだろうか。冒頭の記事で紹介したように、彼の父である平澤三郎は立教大学の卒業生であり、校友会の重役でもあった。平澤哲雄は立教中学校の出身ではないかという可能性が私の中でますます強くなった。

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