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雑誌『遊』に掲載されている吉本隆明・松岡正剛の対談

 吉本隆明は生涯に渡って多くの人々と対談したことは知られているが、先日古書の即売会で雑誌『遊』1982年9月特大号に吉本とこの雑誌の編集をしていた松岡正剛との対談が掲載されているのを見つけて購入した。

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対談の内容は多岐に渡るが、特に「古代」、「縄文」などと表現されている天皇制が成立する以前の日本列島の文化への関心、柳田国男も関心を持っていた非定住の芸能者やその系譜であると両者が考えているサブカルチャーに対する関心が共有されている。話題は様々なところに及んでいるが、基本的には前の文章で記載した通りの順番で流れていく。興味深いのは、現在と権力者や共同体の外にあった歴史に対する関心が並べられて語られていおり、サブカルチャーと中世の芸能者への関心が、「権力への抵抗」という共通点で結ばれている点である。私は吉本は常に現在の問題、歴史的な問題、両者を貫通する理論を並行して考えていたと理解しているが、この姿勢は80年代になりより深化していったと考えている。この対談が掲載された当時、現在の問題は『マス・イメージ論』で論じられ、歴史的な問題は吉本編集の雑誌『試行』に連載されていた歴史の「アジア的な段階」への関心として展開されていた。80年代の吉本の思想を検討する上で、松岡との対談で語られているような現在の問題への関心と歴史的な問題への関心の連動は考慮に入れすべきであると私は考えている。

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