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鶴見俊輔『日本の地下水―小さなメディアから』についてのメモ①―日常と創造性

 以下の読書会のために鶴見俊輔『日本の地下水―小さなメディアから』(編集グループSURE、2022年)を読み進めている。この本は雑誌『思想の科学』に連載されていた全国のサークル雑誌(同人誌、ミニコミ誌)を紹介する「日本の地下水」の鶴見のすべての文章を収録したものである。

この本の最初に収録されている「主婦と創造力―「函館文化」」には、鶴見が日常と創造性の関係性を述べている部分があるので、以下に引用してみたい。

これらのグループ(筆者注:市立函館図書館分館で行われていたサークル活動)はあいよって機関誌『函館文化』(市立函館図書館分館発行、責任者飯田元吉、月刊、二十円)を出しているが、なかでも生活綴方グループの仕事をあつめた第九号はとくにおもしろい。この文集の主婦たちがのびのびした文体をとりもどしたのは、長く日本を支配していた家庭一心の神話から解放されたことによるのではないか。違った成長段階にある家庭のメンバーが当然持つだろう心と心のスキマを、たくみに生かして家庭をつくってゆく。ここに、主婦としての創造の喜びがあるにちがいない。

ここでは主婦を例に挙げて、家庭をつくっていくことに創造性があることを指摘してサークル誌で共有することを鶴見は紹介している。この日常を創造の場として考えるのは、以下の記事で紹介した鶴見の『限界芸術論』に近い。鶴見は日常の中に安定性と不安定性の二重性のあるものと捉えていたと思われるが、創造性は後者の要素となるだろう。日常の中に創造性を発揮する機会をつくることで、日常が陳腐化することを避けようとしたと思われる。

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