見出し画像

トランジション

ヒトが変わる3つの方法


経営コンサルタントとして有名な大前研一氏の言葉にこんなのがある。

人間が変わる方法は3つしかない。1番目は時間配分を変える。2番目は住む場所を変える。3番目はつきあう人を変える。この3つの要素でしか人間は変わらない。最も無意味なのは、『決意を新たにする』ことだ。

わたしは、これまで、このうちの2番目の「住む場所を変える」ということは、引越しをして大きく環境を変えることだけだと思っていた。

しかし、衣食住を整え、脳をメタモる過程で、わたしはこれは何も地理的な移動に限らないのではないかと思い始めたのである。

というのは、普通に考える「住む場所を変える」ことに起こる変化とは、地理的にA地点からB地点へと移り、ガラッと環境を変えることで、意識の変容が起こるというもの。

それにより、大前氏が言うように、シナジーが起こり、1番目と3番目も変化していき、結果として人生が変わるきっかけとなるということであろう。

しかし、地理的にA地点からB地点へと移らなくても、A地点にポイントをキープしたままで、今現在において住んでいる環境である家の中の〝衣食住〟を整える。

わたしは、これも見方を変えてみれば、〝住む場所を変える〟ということになるのではないかと解釈するのである。

衣食住を整える=住む場所を変える

例として、「衣」であれば、持っている服を絞って、自分がどれくらいの衣服で1週間過ごせるかを把握してみる。

明らかにここ数ヶ月、もしくは数年前から着ていないようなモノを思い切って手放してみる。
スティーブ・ジョブズや元アメリカ大統領のバラク・オバマ、マーク・ザッカーバーグのように私服を制服化してみる。

「食」であれば、どんな食材や店舗を使って1週間過ごしているかを明確にしてみる。

ある一定の期間に狙いを定めて、食べているものを把握してみる。

外食頻度を減らし、自炊比率を増やしてみる。
使う食材の傾向を探り、1ヶ月間、決められた食材だけで、どれくらいやりくりできるかをゲーム化して楽しみながらやってみるとか。

「住」であれば、例えば、誰かにモノの置き場所を聞かれたら、パッとすぐにそのモノの置き場所を答えられるくらいにモノを整理してみる。

そして、モノの置き場所の定位置を決めてみたりする。

寝る前に床にモノが落ちていたら、ゲームの負けに設定してみたりするなど。

引越しを考える前にまずはこうして〝衣食住〟を見直してみる。

そうすると、衣食住をシンプル&スマートにすることで、決断する回数が減り、脳疲労の軽減になり、カラダの疲れが残りづらくなったり、自己コントロールが高まるにつれて、自己肯定感も上がるし、衣食住の効率などを考えてシステム化したりしていく中で、そうしたテクニックや時間管理も仕事につながり、役立ってきたりする。

そして、衣食住を整えてみることで、住む場所が激変し、シンプル&スマートになることで、これまで見えづらかった自分の価値観やアイデンティティが明確していくことで、自分の優先順位が高いことに時間を使う意識が高まる。

それにより、1番目の〝時間配分を変える〟ということも達成可能性が出てくるのである。

ここまでくれば、おのずと3番目の〝つきあう人を変える〟の達成も目前となるのである。

衣食住がシンプル&スマートになることで、これまでの1日のなかで、ぽっかりと余白が生まれる。

この余白を使って、やりたかった趣味や習い事を始めたり、勉強会に参加したり、企画してみたりする。

アウトプットとして、YouTubeやブログを始めたりしてみる。

こうして出来た余白に新しい風が入ってくることで、新たな人間関係も生まれていくのである。

これにより、今までの自分がガラッと変わることがあり得るのである。

したがって、例えば今現在の状況に満足していない場合や彼氏や彼女と別れてガラッと環境を変えたいとか、人生を変えたい、現状にそれほど不満はないけど、より今・ここを感じとりたいなどといったことを希望する時に、引越しをしたりしなくとも、まずは今住んでいる家の環境を見直してみることで、視野が開けてくることが期待できるという訳である。

決意を新たにする〟ということだけで行動に結びつけないのは、もったいないのである。

ダイエットに例えると、テレビや本などで話題のダイエットを見聞きする。

話題であるので、おのずとそのメソッドが知識としては、頭に入ってくるので、自分もそれを実施すれば、痩せられると、すでに知識だけはあるので考えてしまう。

テレビ、雑誌で見れば見るほどにやった気になってしまう。

しかし、一向に行動には結びつかなかったりするので、いつまで経っても何も現状が変わらない。

それでいて、「やればできる」、「やったらすぐに結果を出せる」、「まだタイミングが来ないだけ」と重い腰が上がらないままに月日が流れてしまう。

もう何年も使っていないモノや袖を通していない服がある。
片づけをするものの、いつもそのモノや服だけは、「また次回」、「いつか着るから」、「今回はまだ時機ではない。次こそは」と、何度も決意を新たにして、問題の根本を先起こりにしてしまう。

決意を行動に移さないと、成功も失敗も何も生まれない。

ゼロはゼロのままである。

しかし、行動を起こせば、成功か失敗は生まれる。

その失敗もモノの捉え方で、失敗しても、それは成功への布石、成功への伸び代、成功するためにしてはいけない方法を見つけただけと捉えれば、失敗とはならないのである。

衣食住を整えることは、失敗しても事業のように大きな借金を抱えたり、信頼を失ったり、誰かから蔑まれたりするようなことはない。
何も失うものなんてないのである。

やってみて、何か違ったと思えば、また元の生活に安住すればよし、やってみて効果があれば、ラッキーくらいの軽いノリで始めてみればいいのである。

行動を伴わない〝決意〟と一生こない〝いつか〟は衣食住を整え、脳をメタモる上では禁句にしたいものである。

トランジション

古い自分を捨てて、次なるビジョンを見つけ、新たな自分へと生まれ変わっていく。

この過程を思考フレームに当てはめて、ひとつの理論として提唱しているのが、アメリカの人材系コンサルタントである、ウィリアム・ブリッジスである。

そして、その理論の名は、

トランジション理論

英語には、2種類の「変化」があるという。
ひとつは、外的要因による変化で「change(チェンジ)」。

引越しをする。転勤をする。結婚する。子供ができる。離婚する。仕事を変える。死別する。
こうしたものが「チェンジ」である。

そして、もうひとつは、「transition(トランジション)」。

これは、内的な要因による変化で、心理的に変わること、価値観やアイデンティティの変化のことである。

例えば、これまで山登りなどしたことも興味もなかった人が、突然になって、4日間も山に行くと決意し、行動する。しかも一人で。また、金儲けが優先順位の1番上にきていたが、ある時に利他主義が自分の喜びになった。これまで情熱を注いでいた仕事に急に興味を失った。

こうした変化が「トランジション」である。

わたしは育休中に〝衣食住を整える〟なかで、自分と内省を続けていく過程で、たまたまこのトランジション理論を知る機会があり、衣食住を整えるということは、まさに〝トランジション〟ではないかと思い至るのである。

トランジション理論によると、人生における転機には3つのフェーズがあるという。

第1段階として、「終わらせる時期」。

第2段階は、「ニュートラルな段階(ニュートラルゾーン)」。

第3段階が、「次のステージを始める段階(再生期)」。

この3つのフェーズは、実際には、次のフェーズから次のフェーズへとスムースに進むわけではなく、個人差があり、フェーズ間を行きつ戻りつしながら、進んでいくという。

そして、わたしがいう衣食住を整えるということは、自分の〝WHY〟に沿ったモノを残し、それ以外は手放すということ。

パレートの法則でいうところの、「20%のリソースで全体の80%の成果を上げる」というように、自分の価値観に沿ったモノを20%にまで選び抜く行為に近い。

手放すことで、夜と霧に隠された自分の本質を再発見するということ。

わたしがいう衣食住を整えることは、トランジション理論でいうところの第1段階の「終わらせる時期」に該当する。

ブリッジスは書籍でこう述べている。

私たちは新しいものを手に入れる前に、古いものから離れなければならない

トランジション理論の第1段階にあたる「終わらせる時期」に自分にとって未完了であったものを終わらせる。

これにより、〝余白〟が生まれる。

それにより、新たに別のものを受け入れるスペースができるのである。

この第1段階をしっかりと終わらせることが次のフェーズへと向かう際に大事となってくる。

ヒトは、自分で思っている以上に、惰性で続けていることが多いという。

終わらせるという行為は痛みや葛藤を伴うから、今のまま、そのままでいいやというのは、行動経済学でもいうところの「現状維持バイアス」や「現状志向バイアス」で説明できる。

この「終わらせる時期」において、何を終わらせるかはその人の置かれている状況だとか、心理面、タイミングによって全く違ってくるから、これだとか、これさえやればという断定はできない。

しかし、〝衣食住を整える〟ということは、万人とはいかないまでも、「終わらせる時期」にやる行為としては、最適なのではないだろうか?

物理的にモノを減らすことで余白が生まれる。その余白が生まれたままの状況のもとで生活していく中で、ノイズが少ないことにより感覚が研ぎ澄まされ、価値観やアイデンティティを再発見していくのである。

衣食住を整えるという行動を起こすことで、半ば強制的に内的変化である「トランジション」を引き起こす。

それにより、第2段階、第3段階へと進む切符を得るイメージである。

このトランジション理論のプロセスを昆虫に例える人もいる。

幼虫が蛹になり、羽化して蝶になるプロセスである。

静かに、確実に内面で変化が起きる。

その時期は、人それぞれ個人差があり、どのくらい続くかははっきりとはしないが、いつかはその終わりがあるという。

いつかは幼虫は蝶になるのである。

このプロセスはメタモルフォーゼ、つまりはメタモるということにも通じるのである。

「終わらせる時期」において、じっくりと〝衣食住を整える〟ことを終わらせる。

それにより、脳には可塑性があることから、確実に脳はメタモる。

それにより、人生は変わるのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?