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ちょっとさびれた観光地に必ずありそうな、西日暮里駅前の寿司屋

11月3日金曜日、文化の日。
一日の終わりにオンライン英会話でレッスンを受けた。
アメリカ人の先生へ、「今日は日本の祝日、文化の日(Culture day)だよ」と伝えたところ、日本人皆文化的なことをする日なの?あなたは何をしたの?と質問された。
恥ずかしながら、文化の日が一体どういう日なのか、そして文化的なことは特に何もしていなかったため、いずれの質問にもうまく回答することができなかった。買い物をするため新宿に立ち寄ったことを思い出し、「祝日だし三連休初日だしで人がとっても多かったよ」と伝えると、新宿で何か文化的なイベントがあって人が集まっていたの?と追加質問を受けた。
はたまた回答に困ってしまった。催しがあったかもしれないが、把握していないし、おそらくなかったのではないか。ハロウィンやクリスマスのようなイベントを楽しむ日ではないし、私にとっては、土日休みの国民が休日を得られる最高の休日、という位置付けでしかない。

うまく説明できなかったので後で調べたところ、文化の日とは「文化的な活動をしてみることが推奨されている日」、「自由と平和を愛し、文化をすすめる日」、そして「日本国憲法の公布と明治天皇の誕生日を記念して制定された祝日」ということが分かった。
日本国憲法の公布日ということは学校教育で学んでいたはずだが、すっかり頭から抜けていた。そして何よりも着目すべきなのは、明治天皇の誕生日ということである。キリストの誕生日の盛り上がりとは打って変わって、誰も明治天皇の誕生日を祝っていないではないか。これはもっと大々的なイベントを開いても良いのでは、と思わざるを得ない。
美術館や博物館へ足を運ぶのも文化的な活動の一つだが、混雑するのも今ひとつだ。明治維新の香りがする服装をして街を練り歩く、なんていうのはどうだろうか。ハロウィンを模したイベントも一興ではないだろうか。

文化の日についてあれこれ調べ終わった後で、私は今日という日、本当に文化的な活動をしていなかったのか、改めて一日を振り返ることにした。
上述の通り、夕方以降は新宿で買い物を楽しんでいたのだが、夕方までは所用があり、私は日暮里に居た。よし、日暮里での出来事を振り返ることにしよう。

所用は昼過ぎからで、場所は西日暮里だったので、ひとまず西日暮里より栄えていそうな日暮里駅で降りてランチをすることにした。目星をつけていた和食屋はお休みだったので、代替案として目をつけていた住宅街にある中華屋に向かった。その途中、久しぶりに谷中銀座を通り抜けた。

谷中銀座にはこれまで二度来たことがある。
一回目は大学生の時。異常なかき氷ラバーであった私は、「ひみつ堂」というかき氷屋を訪問した。
そういえば、かき氷に情熱があるわけでは全くないのに、一緒に待ちの行列に並んでくれた優しい心の持ち主である友人。突然感はあるが、この場を借りて改めて感謝の意を表したい。
二回目は社会人の時。「かやば珈琲」という古民家喫茶に訪問するために訪れた。ここのたまごサンドの写真を見て一目惚れし、ずっと恋を焦がしていた私に、たまごサンドへの情熱が私ほどではないが興味を示してくれ、一緒に並んでくれた友人。この友人へも改めて感謝の意を表したい。

考えてみると、これまでは行きたいお店ありきで日暮里エリアに足を踏み入れていたのだが、今回は所用ありきだったので、初めて食目的でなくこのエリアに足を踏み入れることになった。

生憎住宅街の中華屋も閉まっていた。食べログを見るに、良さげな雰囲気だったので少し悔やまれた。今思うと、きっとこのお店の人たちは文化的な活動に勤しむためにお休みにしたのだろう。無理くり理由付けすることにする。

気がつくと西日暮里に着いていた。ランチ場所を探してかれこれ30分程経ってしまい、お腹の空き状況に限界が近づいてきた私の目の前に、お寿司屋が現れた。名前は「限界寿司」ならぬ「玄海寿司」。
迷いなくドアを開けた。

ちょうどお昼時間ということもあり、ぱらぱらとお客さんが入っている。手前には外国人のファミリーが座っていた。文化的な過ごし方していますね、なんて、文化の祝日を知らないだろうこのファミリーに伝えれば良かった、と今更ながら後悔している。と同時に、今日という日の中に、少しでも文化的な要素を見つけようと必死な自分がいることに気づく。

店内は、入り口からは想像できないほどに奥行きがあり、座敷もあるので宴会も開けそうな感じだった。

テーブル席に着席し、1,000円いかないくらいの握り寿しを注文。ランチセットはもちろん、アラカルトのメニューもわんさかある。リーズナブルに済ませたい人にも、お酒とあてを楽しみたい人にも対応できる、包容力のあるイカした店である。
さらに驚くのは注文してから提供されるまでに5分もかからなかったことだ。板前さんが握ってくれる寿司屋でこの速さはすごい。そんじょそこらのファーストフード店よりも提供が早いのではないかと思う。これが下町の寿司屋か。

お寿司と一緒についてきた蟹味噌汁が、歩き疲れた身体に沁みた。大きなお椀いっぱいにお汁が入っていて、お得感がある。
お寿司はシャリが多めのタイプで、お腹を空かせた人にはうってつけだ。シャリにはしっかりワサビを塗ってくれている、ととるか塗りすぎととるかは人それぞれだが、コスパ重視×わさび好きには最高のお寿司屋だと感じた。

ランチを終え、所用を終えた後はまた谷中銀座に帰ってきた。暑かったのでひみつ堂に行こうとするも、行列ができていたので断念。代わりに商店街の「ぐるぐるジェラート」というお店で、かぼちゃと胡桃のジェラートを頂いた。大変美味であった。

こうして日暮里での出来事を振り返ってみると、普段足を運ぶことのないエリアに赴くという行為が、もはや文化的な活動と言えるのでは、と思え始めてきた。
図らずも文化の日らしい過ごし方ができたように思う。と無理くりこの祝日と自分を関連づけることにして、文章を締めくくることにする。



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