Collective Power (団結力)の重要性 ー 労働状況の改善・社会正義/平等
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Collective Power (団結力)の重要性 ー 労働状況の改善・社会正義/平等

marta

GIWL (The Global Institute for women's Leadership) の開催した、「ジェンダー、エッセンシャルワーカーズ、危機」のウェビナーに昨日参加しました。

ヨーロッパ(通称イギリス(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)とオーストリア)、アメリカからパネリストが参加し、パンデミック中に特に大きく影響を受けたエッセンシャルワーカーについてのディスカッションが行われました。

エッセンシャルワーカーの定義は、完全に固定しているわけではありませんが、病院で働く人々、ケアホーム・或いは老人や身体の不自由な人々のケアラーとして住み込みで働く人々、学校の先生たち、スーパーマーケット等で働く人々、デリバリー等の運転手の人々、レストランやファストフード等で働く人々を対象として話していました。
どの国も、エッセンシャルワーカーは、圧倒的に女性が多く、移民で有色人種の人々が大多数を占めています。

西ヨーロッパの中でもイギリスは一番労働者の権利が弱い国ですが、それでも、ウーバーのドライバーたちは、イギリスの最高裁で自営業扱いではなく、ウーバーのワーカーとして働いていると認められ、ドライバーたちは多くの権利を勝ち取りました。この権利の中には、有給、年金への自動加入、国の定めた最低賃金の遵守等が含まれます。BBC(国営放送)の記事はここより。
アメリカでは、同じウーバーのドライバーたちは、自営業扱いで、健康保険等を含むプロテクションはありません。また、アメリカでは全般的に労働者の権利やプロテクションは、ヨーロッパに比べると信じられないほどの低いレベルです。これは、労働組合を作るのも難しく、労働組合が少ないことにも起因しているそうです。

ヨーロッパでも、アメリカでも共通しているのは、いかにCollective Power (団結力、団体の力)が大切かということです。
イギリスのウーバーのドライバーたちも、集団で一丸となってこの権利を勝ち取りました。
また、私がロンドンで働いていて、同じ職場で実際にみた、北アメリカ・ヨーロピアン同僚たちの団結が職場の状況をよくした例については、ここより。

オーストリアのリサーチャーからあがっていたのは、家に住み込みのケアラーの賃金や労働者の権利等についてのオーストリアとスイスの大きな違いです。
日本では多くないかもしれませんが、ヨーロッパ大陸では、西ヨーロッパより貧しい東欧や中央ヨーロッパからの移民が、西ヨーロッパで住み込みのケアラーとして働いているのはよく見ます。私のイタリア人の親戚や近所の人々も、住み込みのケアラーは、ポーランドや他の東欧の国々やウクライナ等からきた人々ばかりです。とても大変な仕事なので、現地の人々はその職につかないか、すぐに辞めてしまうか、現地の人だと給料が高くて支払えない、という事情もあるようです。
オーストリアでは、現状では、他国からのケアラーは自営業扱いで、団結して給料交渉や働く条件の向上等もしにくいし、突然仕事を失った場合の保障もなく、とても社会的に弱い立場に追いやられているそうです。また、「労働力」として捉えられ、同じ国に住む居住者として認識されず、ケアをされる自国民を優先する傾向も強いそうです。一方、隣国のスイスでは、多くが正式な雇用の元で働いており、ケアラーの労働組合も現在2つあり、給料だけでなく、働く環境も向上しているそうです。ここでも、団結して交渉することがいかに大切かを物語っています。

イギリスでは、イギリスで最大規模の労働組合のTUC (Trade Union Congress)から、Nikki Pound(ニッキ・パウンド)さんが登壇していました。
ニッキは、以下の点をとても気にかかる点だとして挙げていました。
● ゼロ時間ワーカー(ウーバーのドライバーのように、決まった就業時間がない人々)の数が、100万人近くに大幅に増加
● 同じエッセンシャルワーカーでも、傾向として、男性の賃金>女性の賃金、公共事業での賃金>民営企業での賃金
● 多くのエッセンシャルワーカーは、現職を離れたいとしている。理由は以下が大きい
 ー プロフェッションへの尊敬が少ない
 ー 顧客・患者からの暴言や暴力の件数が上がってきている
 ー パンデミックで、職場での働く量が大幅に増え、かつ家庭では、子供た ちがオンライン授業になった時期が長く子供の面倒を家で日中見る必要もあり、パンク状態
 ー インフレーションを考慮に入れると、先生の給料はむしろ下がっている。もともと低い。
 ー ウィルスに大きくさらされる仕事で、コヴィッド19に罹患した後も長期的に身体不調に悩まされている人も多い。
● イギリスのチャイルドケアはとても高額。しばしば、月に数千ポンド(約20万円以上)となり、家のローン額より高い。それでも、多くの人々は、キャリアを続ける為に子供を預けて働くことを選択するが、最低賃金で働いている場合は、それも難しい。それにも関わらず、チャイルドケアに従事する人々の賃金は最低賃金。

ニッキは、改善案として以下を挙げ、他のパネリストも賛成していました。

● ゼロ時間契約も、就業時間を前もって定めることを企業に義務付けするべき。ゼロ時間ワーカーの多くは、子供や老人、身体の不自由な親戚や家族をケアするためにフルタイムで働けず、ゼロ時間契約で働いている。彼らには、前もってケアの都合をつける必要があり、いつ仕事があるのかを前もって知る必要がある。まゼロ時間契約では、収入の見込みがたたず、一時的に借金をする必要が生じたり、貧困に陥る可能性が非常に高くなる。これは、社会として正しくない。
● リモートワークは働く初日から可能であるべき。
● チャイルドケアの充実と政府からのサポートでチャイルドケアの個人の負担金額をさげる。(チャイルドケアで働いている人々の賃金も働く環境も同時に向上させる)
● 病気時の手当てをもっと充実させる。
● 現在の子供手当の一家族2人まで(3人目以降は子供手当なし)の制限を改訂し、すべての子供に子供手当が出るようにする。
● 現在のUniversal Credit(ユニバーサル・クレジット 生活保護)の金額をあげて、人々が困窮に陥らないようにする 。

なお、イギリスでは労働組合に入っているかどうかを就職面談で聞くことは違法です。また、労働組合に入っていることを理由に解雇を行うことも違法です。
日本とヨーロッパ(ヨーロッパの中でも、イギリスと大陸側で違う)では、労働組合の在り方はとても異なっています。
イギリスでは、大企業が企業内に労働組合をもっている場合もありますが、通常は、プロフェッション(職業)により、個別の労働組合に入ります。
イギリス政府が認可している労働組合のリストは、イギリス政府のウェブサイトのここより。

ヨーロッパ大陸では、インダストリー毎に労働組合をもっているケースが多く、ドイツでは会社のマネジメントにも大きな影響を与えます。
西ヨーロッパ内では、労働者の権利も強く、働く条件も良く、給料も高い傾向にありますが、これは、労働組合が大きな力をもっているからだと分析されています。
イギリスでは、労働組合が強いと生産性が落ちるという議論も聞きますが、ドイツ・フランス等の西ヨーロッパの国々は、イギリスよりもずっと生産性の高い国々です。

個人的な話では、私の北アメリカ出身の友人が会社で不当な目にあったときに、加入していた労働組合(勤務していた会社には属さない)から無料で弁護士をつけてもらえ、会社との話し合いにも法律に詳しい人が労働組合から同伴してくれ、良い結果を得ることができました。心理的にも、とても心強かったそうです。彼女は、組合に入ることを周りにもすすめていました。月々のサブスクリプションは、組合によっても違いますが、20ポンド程度から始まるようです。

私自身、前述したように、普通の職場でも、団結して会社と交渉することがいかに効果的なのかを実際に目にしました。
ただ、これには、それぞれが内に持っている、モラルやEthics(倫理観) が非常に重要となります。
同僚の一人が会社や上司から不当な処遇を受けているとき、北アメリカやヨーロピアンの同僚たちは自分たちに被害がなくても、一緒に不正に対して闘います。
なぜなら、それが自分の内側にあるモラルや倫理観に沿っている正しい行動であり、目の前で起こっている不正に対して黙って何もしないことは不正に加担していることであり、自分自身に対して自分の行動を恥じることとなります。
他人がどう思うか、どういった見返りがあるのかは、全く関係ありません。
彼らは、一人で闘っても効果がないことをよく知っていて、戦略的にお互いを助け合い、正義を勝ち取ろうとします。

もし、あなたの身近で不当な目にあっている人がいれば、自分の生きる安全は確保した上で、戦略的に周りの人々と団結して正義を勝ち取る方向に歩みましょう。
もしかしたら、あなたと数人の人々の一言のカウンタースピーチで、状況は大きく改善するかもしれません。

不当な目にあうのは、往々にして、社会的・政治的・経済的に弱い立場に追い込まれている人々(女性、移民、若い人々、子供たち ー 彼ら自身が弱いわけではなく、社会・政治・経済の仕組により、弱い立場に追いやられている)であり、団結して声をあげないと、あっという間に声はかき消されます。
私たち一人一人の力は小さくても、良い方向への流れを助けることを選択して、行動することは可能です。

Do the right thing (正しいことを選んで行動しよう)

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marta
日本でITエンジニアとして働いた後、ロンドンで労働許可を取り21年。世界中の国の友人との対話から、日本での不思議な働き方や不平等な社会に気づく。変化は「気づき」と「現状をありのまま認めること※降伏・受身とは違う」から始まるもの。誰もの尊厳が尊重され希望に満ちた社会への変化を応援。