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The 3rd Placeが『サープレ!』コラムを公開したい件

さて先週のこのnoteブログで、『サードプレイス』に関する実用書『サープレ!』の製本版(ペーパーバック)発売のご紹介をさせていただきました。

Amazon.comにて絶賛販売中!(kindleは会員無料)

ただ困ったことに、自身で The 3rd Place を名乗っていて誰よりもサードプレイスの重要性や有用性を知っているくせに、この4月以降、自分のサードプレイスを失って心身の調子を崩しておりました。
今まで所属していたサードプレイスから追い出されたわけではなく、異動・出向・新しい職場環境に赴く中であらゆるサードプレイスに参加する時間を失くしてしまったのです。
瞬間風速でしたが、4月の過勤が95時間(うち休日勤務が5回)となりました(役職勇退者には超勤手当はなくサービス残業です…)。

お陰様で5月には過勤時間数は半減し、心身疲労は徐々に回復してきています。
やはり、サードプレイスの充実には適切な就業時間管理は不可欠だと身に沁みましたし、キャリア形成に於ける『働き方改革』の重要性を再確認した次第です。

(参考)過労死認定の目安(いわゆる過労死ライン)
発症日の直近1ヵ月で、残業時間が月100時間を超えていること
発症日前2ヵ月〜6ヵ月間の残業時間が月平均80時間を超えていること

厚生労働省『脳・心臓疾患の認定基準』

ま、6月も中旬を過ぎ、ようやく心身の疲労も回復してきましたので、改めていろんな勉強会にweb参加したり、リアルの懇親会に出席したり、或いは趣味でやってたライブ活動にも久々に挑戦したりし始めています。

2023/6/11 BAU-CLUB LIVEの幕間(アリスきっちんレストランにて)

さて、『サープレ!』の書籍の話に戻りますが、それだけ宣伝しておいてオマエはこの本で何をしたのか?という話ですが…
巻末の関係者一覧のところで、<コラム執筆>・<企画支援>・<校正校閲>のところに名前を掲載いただきました。
モノ書きの真似事を楽しんでいる素人のオジサンとしては、感無量です。
自慢げに、東京に住む娘に送りつけました(笑)
また、いつでも話のネタに使えるように、毎日の通勤バッグに1冊忍ばせています(苦笑)

長女に強制的に送り付ける…

そんなご縁で、『サープレ!』製本版の発売を受けて、私が寄稿したコラムをここに転載させていただきたいと思います。
私自身はこの書籍の執筆陣ではなく、本来ならたとえ本編でなくともその一部をここで公開することは何らかの権利侵害に触れる可能性があります。
ただ、私自身が寄稿した部分について私の個人ブログで引用紹介する事については著者代表の坂本智子さんに承諾をいただきましたので、是非お読みいただいてご意見・ご感想などお寄せいただければと思います。

なお、このコラムは『サードプレイス』に関する私の個人的なイメージを描いたものであって、この『サープレ!』書籍本編とは内容的になんら連携しておりません。
サードプレイスに興味を持たれた方は、是非ともAmazonで『サープレ!』をポチってお読みいただければと願っております。

(以下、転載。約1,800文字)

自分と向き合う時間と場所が、仲間との心地良い時間と場所に変わるとき…
(My 3rd PlaceがOur 3rd Placeに変わるとき…)


『こんばんは…。1人ですけどいいですか?』
『いらっしゃい、久し振りだね。』

星場さんは40代半ばの紳士で、システムエンジニアとしてこの近くの大手企業に駐在しているらしいが、それ以上のことはよく知らない。

うちの店の名前は Music & Wine Salon『The 3rd Place』。
仕事に疲れたミドルシニアのサラリーマンが、自宅に帰る途中に立ち寄って音楽やワインで癒されてくれたらと、定年退職を機に開店した。
定年前から準備してきて、ずっとやりたかった店。
3年目を迎えて、ようやく少しは常連もついてきた頃である。

星場さんは他の常連客の弾き語りに耳を傾けながら、1人でハイボールを飲んでいる。
『ホシバさん、次、歌う?』
と声を掛けると、彼は壁に掛かっているマーチンD35を手に取ってステージの椅子に座り、チューニングをしながら曲のタイトルを呟くと、いつもの優しい声で自作の曲を弾き語りし始めた。

うちの店では常連同士が仲良くなって、それぞれが好きな楽曲を順番に弾き語りしたり、互いの楽器自慢だとか、或いは誰々はあの頃が良かっただのと音楽談義に花を咲かせる場でもある。
しかし星場さんはそうした常連客とは関わりを持たず、いつも自作のオリジナル曲を3曲唄っては静かに勘定を済ませて帰っていくのだ。

そういう客は、ともすれば常連グループから疎まれたりカラまれたりするものだが、星場さんの唄い声と演奏と作品があまりに素敵なものだから、みんな黙って聞き惚れていた。

ある時、他に客が居らず星場さん1人だったので思い切って話し掛けてみると、意外な過去を語ってくれた。
いわく、彼は若い頃に一度プロデビューして東京に移り住んだものの、鳴かず飛ばずの末に引退して地元に戻り技術系のサラリーマンに。生来の人見知りな性格で、会社でも心許せる仲間は居らず、駐在先で黙々と仕事をしているという。
『それにしても、来る度に違う曲を唄えるんだね』と訊くと、
『レコード会社から、デビューするまでに200曲は作っておけと言われたもので…』と作り笑いしながら答えた。

そんな星場さんが、いつもは金曜日に来るのに珍しく木曜日に来た。
木曜日はマイクやアンプ等の音響設備が片付けられていて、テーブルにも白いクロスが掛かっていたりと、店の雰囲気がいつもと違うことに星場さんは気付いた。
『あれ? マスター、今日はギター弾いて唄えないんですか…?』
『あ、ホシバさんいつも金曜日だから知らないよね。うち、木曜日はワインサロンをやっててね、会員さんが珍しいワインを持ち寄って飲む会とかもしてるんだよ』

残念そうな顔の星場さんを、思い切って誘ってみる。
『今日はラグランジュの2005年が手に入ったんで、みんなで試飲するんだよ。それが1人、ドタキャンになっちゃってさ、よかったら参加してみない?』

『え、ラグラン・ジュ…?』
『あれ? ワイン好き? シャトー・ラグランジュとか、知ってるんだ?』
『いや、妻がラグランなんとかって言ってたのを思い出して…』

彼の奥さんはホテルのレストランで働いているのだが、彼が連日の泊まり勤務で帰ってこないすれ違いの日々を埋めるように、ワインの勉強にのめり込むようになっていた。音楽の道を断念し仕事一辺倒の星場さんとは、既に家庭内別居だという。

星場さんは、2005年がメドックの当たり年だとかそういう事は知る由もなかったが、それが妻と結婚した年であることに何かしらの縁を感じた。
私は星場さんを今夜のワイン会に強引に参加させ、5人の会員さんに引き会わせた。

妻がのめり込んだ赤ワインを一口含んだ星場さんの舌と右脳に、衝撃が走る。
今まで、少なからず付き合いで飲まされてきた名も知れぬ赤ワインとは、根本的に違うもの。
思わず、今日初めて会ったばかりの5人の会員さんに、その感動を破顔で饒舌に語りまくっている星場さん…
1時間後には6人はすっかり意気投合し、星場さんは初めて他人とLINE を交換して、すっかり上機嫌で家路についた。

翌月、金曜日のミュージックサロンの日に星場さんはやってきた。
いつものようにハイボールを飲みながら、マスターである私から歌う順番の呼び出しが掛かるのを待っている。
『ホシバさん、次いってみよか!』
珍しく微笑みながら頷いた星場さんは、いつものマーチンを手に取ってステージに向かい、慣れた手つきでチューニングをしながらマイクを口元に向けると、少しはにかみながら口を開いた。

『皆さん、こんばんは! ホシバと言います。
昔、ちょっとだけ音楽やってました。よかったら、お仲間に入れてくれませんか!』

※上記は書籍『サープレ!』のコラム⑤最終稿に近いものではありますが、完成版に対して1箇所だけ表現が異なる部分がありますことをお断りしておきます。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。
次回のこのnoteブログでは、『3時間で一気に書き下ろした』というその背景、物語の舞台に込めた想い、登場人物についての深掘り等、ちょっとした解説をお届けしたいと思います。

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