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こいつ、おれのこと好きなんかな

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主人公の大学生は女の子に話し掛けられた全ての言葉を勘違いし、オチは全て「こいつ、おれのこと好きなんかな」で終わります。結末は全部同じなので、話し掛けられる台詞と、過程を楽しんでく…
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#欅坂46

『こいつ、おれのこと好きなんかな⑳』

『こいつ、おれのこと好きなんかな⑳』

「そうだ なつ あそぼ?」


「そうだ、京都行こう」と「くうねるあそぶ」のコピーライターが書いたような、キャッチーなセリフを僕に投げてきた。二つのコピーを同一人物が書いたかどうかは知らない。

3限終わり、彼女の言葉で、夏の始まりを実感する。今年は5月くらいから既に暑く、感覚が麻痺していた。
日差しが差すアスファルトを見ると、夏はもう始まっているんじゃないかとぼんやりと考えることもあった。

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『こいつ、おれのこと好きなんかな⑬』

『こいつ、おれのこと好きなんかな⑬』

「このワンちゃん、なんていう名前なの?」

僕は、LINEのアイコンを誰かの犬の写真にしている。
ネットから拝借した、どこの誰かもわからないチワワの写真。

フォト無精の僕は、アイコンを何にすべきか皆目見当もつかなかった。
自撮り(お前の顔面をおれのタイムラインに乗せてくるなよ)、友達と映る写真(お前の友達と思われるのハズいからやめてくれよ)、デフォルト画像(逆にデフォがかっこいいと思ってんじゃね

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『こいつ、おれのこと好きなんかな⑦』

『こいつ、おれのこと好きなんかな⑦』

「あっ、髪切った?」

アルバイト先の休憩室は、シフトの30分前には出勤をするバイトの人数に見合わず、狭い。
僕の隣に置かれた、ガタガタするパイプ椅子に優しく座った彼女。
僕の存在を見つけた途端、嬉々として話し掛けてきた。

僕は毎月4,800円もかけて美容院に通っている。
「とりあえず、生」のテンションで「とりあえず、ツーブロック」とオーダーするこの髪型に、それほどの価値があるのか、と会計時にい

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『こいつ、おれのこと好きなんかな⑤』

『こいつ、おれのこと好きなんかな⑤』

「ブックカバーはおつけしますか?」

「あ、お願いします」と紳士的に答える。
1つ目。

駅前に80坪程の小さな書店がある。僕のアパートの最寄駅で新刊本を扱うお店はここくらいしかないので、特に用事がなくても毎週通い詰めている。
理由は2つ。書店の独特な匂いが好きということと、アルバイトの女の子がかわいいということ。
後者の理由が98%、残り2%の前者の理由は、こう言えば文学的且つ感受性豊かなイケメ

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