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能動的ニヒリスト野田B:『愛にできることはまだあるかい』から

最近、映画『天気の子』主題歌のRADWIMPS「愛にできることはまだあるかい」を改めてじっくり聞きました。おもしろい歌詞です。 映画館で劇伴として聴いたときには、一人の「僕」によるモノローグだと想ったのですが、歌詞を聴き込んでいくと、そうではありません。 「愛にできることはまだあるかい/僕にできることはまだあるかい」と誰にともなく問いかける4回のリフレインに対して、ラストで「愛にできることはまだあるよ/僕にできることはまだあるよ」と答えが返ってきます。この問いと答え、リフ

    • 警察 - 現実性の最後の砦

      前回の記事の続き。香港人Mがくれた小冊子から、今回は「警察」と題された散文を私訳する。前回と同じく、広東語原文を参考にしながら英訳から重訳したものを、匿名の著者に無許可で掲載する。ではどうぞ。 警察 - 現実性の最後の砦香港の人々は待っている。香港警察隊(HKPF)が独立した調査を受け、処罰され、解散させられ、再組織される日を。 警察は何を待っているのだろう?警察隊のなかに光はあるのだろうか? 警察が法規則というベルトを外し、政治的任務という制帽を被るとき、彼らから光は失

      • 初秋的相遇、最後的平安

        つい最近のこと。 新宿でたまたま出会ったその香港人は、私がまもなく香港を訪れるつもりであることを知ると、嬉しそうな様子で、差し上げたいものがある、と言った。彼は私を近くのセブンイレブンに連れていくと、懐から取り出したUSBメモリをコピー機に挿し入れ、その場で印刷した小冊子を私にくれた。 この手づくりの小冊子には、著者の名前も奥付もなく、ただ、2019年10月から11月までの香港の記録である旨を伝える簡素な表紙がついている。彼は私にとって必要なものをくれたのだと思った。 だから

        • 『天気の子』、セカイ系を終わらせたかもしれない

          以下の作品のネタバレを含みます。 『天気の子』、『新世紀エヴァンゲリオン』、『イリヤの空、UFOの夏』、『雲のむこう、約束の場所』 『天気の子』観た?割とおもしろかったよな! 不覚にも劇伴のRADWINPSに心を揺さぶられちゃって悔しかったりしたよね? まだ観てない人はこの記事は読まずに映画館にGO! 『天気の子』おもしろくて、語りたい!と勢いで書いて図も付けたら縦に長~くなってしまいました。 遅れてきたエヴァ世代だと自分で思っている私は、セカイ系についてずっとモヤモヤを抱

        能動的ニヒリスト野田B:『愛にできることはまだあるかい』から

          シェファード・フェアリー「ぼく自身が、大量印刷時代の一製品といってもよい」

          シェファード・フェアリーが、新作リトグラフ作品の発表に際してInstagramに投稿したコメント。 〜 「Print & Destroy」という標題は、C.R.Stecykのフレーズ「Skate and Destroy」への共振だ。ストリート美術とスケートボードは多くのものを共有していて、その根底にはあの同じ反抗の動力がある。 ぼく自身が、マス(大量)生産の時代の一製品、マス・カルチャー[の一側面である]印刷文化によって生産された一製品であるといってよいだろう。印

          シェファード・フェアリー「ぼく自身が、大量印刷時代の一製品といってもよい」

          bottle collective『投擲』 -抵抗するメタボリズム

          昨日は、最終日だった「東京インディペンデント2019」をのぞきに東京藝大まで出かけたのですが、終了時間が早くて間に合いませんでした。 特に確認したかった作品はbottle collectiveの『投擲』。 川崎の反民族差別運動から生まれたコレクティブが、川崎産業道路沿いに捨てられた(中身入り)ペットボトルを拾って出展していたのです。レイシストに投げつける投擲武器とのこと。 出展についてはコレクティブのTwitterで知っていたのに、ボトルの中身は飲み残されて腐ったお茶やジュー

          bottle collective『投擲』 -抵抗するメタボリズム

          安全保障にデモクラシーを/いびつな「日米同盟」と戦う……基本的な考えかた

          辺野古新基地や日米地位協定、安保法制を考える上で、またそれだけでなく、将来におけるリベラルな政権交代を構想するときに、考えずにすませることはできない「日米関係」について、基本的な考え方を整理しておきます。 (1) 現状の日米関係はとても不正常で不平等なあり方をしています。その「普通でなさ」を、以下の4点に大別してみます。 ①国家主権が損なわれている 日米安保条約に伴う日米地位協定、およびかずかずの密約によって、在日米軍は日本の法律が及ばないという特権を持っています

          安全保障にデモクラシーを/いびつな「日米同盟」と戦う……基本的な考えかた

          辺野古強行(2)

          もし、「本土」リベラルと左派による辺野古反対の共闘が間に合わず、現状のまま「夏の陣」「秋の陣」を迎えてしまったときのことを想像しよう。それは、沖縄の基地反対運動にとってだけでなく、リベラルな国政諸政党の共闘にとっても最悪のシナリオとなりかねない。 まず沖縄では、本土リベラルに見捨てられるかたちで、裁判によって知事の「撤回」処分が無効化される、あるいは自民政権側の新知事が誕生する。辺野古の工事は大きく進展し、沖縄の基地反対の民意は大きなダメージを受ける。 さらに、ダメー

          辺野古強行(2)

          辺野古強行(1)/2018年に本土リベラル政治は何をすべきか

           2014年夏に辺野古新基地工事が着手されてから、四年間が経過しようとしている。これまで明らかになってきた新基地建設の無法性も、米軍による度重なる事件・事故も、沖縄県政や運動の抵抗も、この間けっきょくは「国と県の対立」の構図に矮小化され、日本の国民世論を二分する問題とはなってこなかった。なぜだろうか。  それは、かつて「辺野古是か非か」を国政の争点に押し上げた民主党/民進党系のリベラル勢力が、2010年以降辺野古反対の戦線から完全に脱落してしまい、かつ脱落したままでいるから

          辺野古強行(1)/2018年に本土リベラル政治は何をすべきか