安全保障にデモクラシーを/いびつな「日米同盟」と戦う……基本的な考えかた

辺野古新基地や日米地位協定、安保法制を考える上で、またそれだけでなく、将来におけるリベラルな政権交代を構想するときに、考えずにすませることはできない「日米関係」について、基本的な考え方を整理しておきます。

(1)
現状の日米関係はとても不正常で不平等なあり方をしています。その「普通でなさ」を、以下の4点に大別してみます。

①国家主権が損なわれている
日米安保条約に伴う日米地位協定、およびかずかずの密約によって、在日米軍は日本の法律が及ばないという特権を持っています。これは、(1)米軍が事故を起こしても日本が捜査できない、(2)米軍人が事件を起こしても日本が捜査できない、(3)米軍の新装備の導入(核兵器の持ち込みを含む)や基地の外での訓練を日本が制御できない、ということです。そのために、政府が国民の安全を守ることができなくなっています。

②一方的にばく大な費用を支払っている
日本は米軍の駐留経費の大部分を負担しています。駐留経費の負担と、再編交付金などの関連費用を合わせると、その額は年間7000億円を超えます。日本の経費負担率は70%台から80%台と見積もられています。
日本は敗戦国だから、とか、米国に守ってもらっているから仕方ないコストだ、という意見もありますが、同じ敗戦国であるドイツやイタリアの負担率ははるかに低く、30%台から40%台です。
また、在日米軍がほんとうに日本を守っているかどうかは実証できないのに対して、日本の基地を自由に使用することで米国は確実に利益を得ています。
米軍の経費負担の他に、F35やオスプレイ、イージス・アショアなどの高額な米国製兵器を自衛隊が購入しつづけているという点も指摘できます。これらの兵器の中には、専守防衛のために必要なものもあるとしても、自衛隊による調達費用が米軍や他国軍と比較して割高であることは事実です。

③主体的な外交力が低下している
さいきんの北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)をめぐる外交劇を見ても明らかなように、主体性のない外交方針によって、日本の国益が損なわれています。
従来、日本の外交はひたすらの米国追従と言われてきましたが、最近ではむしろ、米国の軍事的圧力の側面だけを率先して代弁しようとする奇妙なタカ派外交に変容しているようです。
ソフトパワー(対話外交)よりハードパワー(軍事力行使)に傾斜するのは、いびつな形で他国に軍事的に従属しつづけていることの自然な帰結です。

④立憲主義を無視した軍拡につながっている
集団的自衛権の容認と安保法制の強行は、たんに安倍政権の大国主義的な欲望のせいだけではなく、冷戦終結後の「日米安保再定義」と「新日米ガイドライン」という新たな従属化路線の結果といえます。
法制面だけでなく実力面でも、空母や先制攻撃ミサイルの保有検討、米海兵隊のコピーである「水陸機動団」の新設など、ほんとうに必要なのかという議論が置き去りにされたまま、自衛隊は危険な軍拡に晒されています。

(2)
以上の4点に大別される日米関係の不正常さは、たんに米国が日本政府を搾取するだけの関係ではありません。日本政府もこの関係から(非民主的な)利益を得ているからです。大まかにいうと次の3点です。

①「ワシントン拡声器」
外交・軍事・経済の広い分野にわたって、日本の政治家が自分の思惑を米国の著名な「知日派」に代弁させることで、日本国内での合意形成をすっとばして政策を実現させる構造があります。
インターネットでは俗に「ジャパン・ハンドラー」と呼ばれてきた知日派米国人の影響ですが、猿田佐世によってより正確に定義されました。

②米軍駐留から発生する利権
米軍基地工事を受注するスーパーゼネコンや警備企業がわかりやすい例です。辺野古工事を受注している大成建設は、スーパーゼネコンの中でも自民党政治との結びつきがもっとも強い企業であり、1950年代から沖縄の米軍基地工事によって大きな利益を上げてきたことが分かっています。

③保守政権の延命
自民党は今日にいたるまで、おおくの密約や司法介入によって不平等な日米関係を受け入れるかわりに、米国によって一党優位支配を認められ、政権を維持しています。民主党鳩山政権の例から分かるように、日米関係の不正常さが改善されないかぎり、リベラルな政権交代はおおきな困難を伴います。

(3)
1951年以来、こうした日米関係の不正常さのコストがおおくの日本国民に気づかれないようにするため、ある特定の一地域に実質的なコストがしわ寄せされ続けてきました。沖縄県です。面積比で全国の1%にすぎない沖縄県に、75%の米軍基地が集中し、基地被害も深刻になっています。

(4)
こうした不正常で不平等な日米関係を改善し、安全保障におけるデモクラシーを実現するために、野党には次の4点を期待します。

①日米地位協定と密約の改定、米軍駐留経費負担の見直し、主体的な外交の構想、立憲主義破壊と自衛隊軍拡の歯止めに共同で取り組むこと

②現在の保守政権が、日米関係の不正常さから引き出している非民主的な利益の実態を、国民に明らかにすること

③こうした不正常なコストのしわ寄せを沖縄県が受け続けることのないように、公正な代替政治を主張すること

④以上すべての論点を包含する政策として、米海兵隊普天間基地の即時閉鎖と辺野古移設計画の中止に共同して全力を挙げること

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