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モンゴルレザーのD2Cブランド「HushTug(ハッシュタグ)」は、なぜ顧客を虜にしてしまうのか?

当ブログでリーズナブルでオシャレな本皮トートバッグをご紹介しました。


購入して数ヶ月、モンゴルレザーブランド「HushTug(ハッシュタグ)」のカスタマーサポートが素晴らしすぎたので、ご紹介します。

モンゴルレザーブランド「HushTug(ハッシュタグ)」とのやり取りは”メール”のみです。店舗に訪れたこともなく、実際に誰かと会って接客を受けたわけでもありません。それなのにも関わらず、頭から離れない。ふとバッグを手にした時、あの心地よいサポートを思い出してしまう・・・。

ビジネス的観点でも学びが深く、様々なD2Cブランドや、小売業者は見習う点がとても多いと思います。

今回は、「HushTug(ハッシュタグ)」が顧客を虜にしてしまう「顧客満足度デザイン」を「学びの整理」として記事にしました。

HushTug(ハッシュタグ)の顧客満足デザインとは?

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こちらの図については後半に解説します。
まずは、なぜ「HushTug(ハッシュタグ)」が高い顧客満足度をコンスタントに提供できているのか、私の体験をベースに確認してみましょう。

顧客との関係は”メール”のみだけど”丁寧さ”が真摯に伝わる

※メール内容を一部抜粋しております。

1通目のメール:2020年2月9日 購入

メールの無料アイコンその19

HushTugはお客様の声をもっと聞き、品質やサービスの改善、商品企画のアイディアの参考にしたいと考えています。
モンゴルの職人たちへのメッセージもモンゴル語に翻訳し必ずお届けますので、お気軽にメッセージをお送りください。

初期購入から、ご不明な点についてすぐに問い合わせできるフォームが揃っている。(電話、ショップURL、メールアドレス)
何か気になっても「どこに連絡すれば良いのか?」という点が明確で安心感があります。

2通目のメール:2月20日 モンゴルから発送のお知らせ

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ご注文頂いた商品がモンゴルから発送されました。
発送された商品は成田空港に到着したのち、以下の工程を終えた後に○○さまのご自宅にお届けさせて頂きます。

[商品到着までの流れ]
1. 通関後、日本の物流業者の倉庫に配送
2. 各商品の仕分け
3. 商品の梱包
4. ○○さまのご自宅へ発送

予定よりも4日ほど早くモンゴルから商品が発送されておりますので、現状の進行具合ですと03/06頃にお届け予定でございます。
次回は日本の物流業者の倉庫に商品が到着したタイミングで再度ご連絡させていただきます。
商品到着まで今しばらくお待ちください。以上、宜しくお願いいたします。

商品の購入ページにはお届け予定日は書いてあります。ですが、最新の発送状況をお知らせしてくれるので嬉しいですね。

3通目のメール:2月24日 日本の物流業者到着のお知らせ

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本日、ご注文頂いた商品が日本の物流業者の倉庫に到着しました。
到着した商品は、以下の工程を3営業日以内に終えた後に○○さまのご自宅にお届けさせて頂きます。

[商品到着までの流れ]
1. 商品の仕分け
2. 各商品のバーコード登録
3. 商品の梱包
4. ○○さまのご自宅へ発送次回は商品を発送したタイミングで再度ご連絡させて頂きます。

サプライチェーンのポイントごと丁寧にお知らせ。ワクワク感が醸成されていきます。期待値が上がってしまいますね。

4通目のメール:2月27日 配送中の自動お知らせメール

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あなたのご注文は配送中ですあなたのご注文は配送中です。追跡番号を使用し、配達状況をご確認いただけます。

自動化できるところは仕組みとしてメール送信。これはどのネット販売業者もやっていることですが、「HushTug(ハッシュタグ)」のように「人の手による丁寧なメール」が前後に挟まれていることで、この自動メールの価値も高まっている印象です。(自動メールなのに、担当者が手動で出しているような感覚)

余談ですが、このメールを頂いてから、あまりに丁寧な対応に感動して直接社長の「戸田さん」宛にお礼のメールをしました。すると即座に本人から「数あるブランドの中からHushTugを選んで頂き、嬉しく思います」と、なんとも丁寧なメールレスポンスがあり驚きました。経営者のフットワークの軽さ、丁寧な返信は企業文化として根付いているんだと身にしみましたね。

5通目のメール:2月28日 自宅への発送メール

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・到着予定表の提示
・30日間は返品可能なので届いたダンボールは保存しておくようにというお願い
・メール内に追跡番号が記載してありますので、配達状況を確認する際はその追跡番号と利用方法

ここで他のネット通販と違うのは、配達状況確認用の「URL」提示のみではないという点です。
配送業者は「クロネコヤマト」と「佐川急便」なのですが、URLクリック後にどのような手順で問い合わせをしたら良いのか丁寧にテキストで解説してくれています。
さらにメール本文では、「どの営業所に到着しているのか?」という点も明記されており、自宅からどれくらいの距離の営業所へ保存されているのか容易に想像がつきました。

確かにURLをクリックして、追跡番号を入れれば上記情報は簡単に見ることができます。しかし、メールを見ている側からすればアクセスすることでさえ面倒くさいことがあります。そんな時、「顧客は何を一番知りたがっているのか?」をしっかりと考え、それをテキストとしてメール本文に先に提示してくれている丁寧さに感動しました。

配達状況についてご不明点等ございましたら、お手数ですが現在商品が保管されている配達業者の営業所に直接お問い合わせ頂けますと幸いです。
その際に追跡番号を事前に確認しておくとスムーズに問い合わせを行うことができるかと存じます。

今回お送りする商品は、モンゴルの職人が心を込めて製作しました。
是非、長きに渡ってご愛用頂けますと幸いです。
その他ご不明点等ございましたらお気軽にお申し付けください。以上、宜しくお願いいたします。

上記メール文も、営業所をしっかりと提示しているからこそ、スムーズに問い合わせができるという印象を共有できている気がします。本文の最後には「モンゴルの職人が心を込めて」という一言が添えられており、「本当に大切に作られた商品が届くんだなぁ」と浸ってしまいました。この時点でかなり「HushTug(ハッシュタグ)」が作り出す物語りの一員になっている気持ちです。

6通目のメール:2月29日 到着予定日にお手入れの連絡メール

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届いた革製品をどのようにお手入れすれば良いのか?到着直後は多くの人が感じる悩み。それを察したかのようにタイミングの良いメールに以下のお手入れ情報リンクが掲載されていました。

お手入れ方法などを確認する

7通目のメール:3月1日 レビューのお願いメール

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先日はレザートート ブラックをご購入頂きありがとうございました。その後の使い勝手はいかがでしょうか?

本日は商品のレビューについてお願いがありご連絡致しました。

レザートート ブラック 商品ページ ⇒ https://shop.hushtug.net/

お手数ですがもし可能であれば上記のURLをクリックしてオンラインストアに飛んで頂き、レビューの箇所から「製品について感じた率直な意見・感想」を記載して頂けないでしょうか?

ユーザー至上主義のブランドにするため、実際に購入された○○さまのリアルなご意見を他のお客様に読んで頂き、安心してお買い物をして頂きたく思っております。突然のご連絡で大変恐縮ですが、宜しくお願いいたします。

レビュー先や、どこに入力すれば良いのか、そして入力することで今後購入するお客のためになるという真摯な訴えに納得しました。実際「HushTug(ハッシュタグ)」のページにはたくさんのレビューが寄せられています。

8通目のメール:4月7日 『HushTug Outlet』の案内

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HushTug Outletとは?

HushTugではご購入頂いた方々に『30日間の返品交換サービス』を付けています。

そこでイメージの違いなどにより返品となった商品がオフィスで保管されています。中には新品とほとんど変わらないにも関わらず、一度お客様の手に渡ったことにより新品として販売できない商品もあります。

また、私たちの商品はすべてモンゴルの職人による手作りです。

そのため革の加工時にシワができたり製造時に縫製ミスが起きることがあり、それらもB級品としてオフィスにて保管しております。

『HushTug Outlet』ではそうした商品を割引価格でご購入頂けます。

アウトレット品といっても、もちろん革・部品・製法などは、定価で販売されている商品と一切変わりません。
なのに、ちょっとした理由で誰にも使われずに捨てられていく商品がたくさんある。それが「アパレル業界の現状」です。

HushTugの製品を使い始めて1ヶ月、ちょうど革が馴染んできて自分好みに変化してきたところです。
革の良さがわかってくると「ちょっと小物もほしいかな」と思いはじめるころ、タイミングよくメールが飛んできました。今回は”購入者限定”の『HushTug Outlet』です。返品された商品でも「使える」のは確か。
廃棄するのではなく、理解してもらえる買い手へ提供する。無駄なく、職人をリスペクトして最後までお客様の手に届けようとする姿勢はとても学び深いです。ついつい見てしまいますね。自分がほしいアイテムが掲載されたら思いきって購入してみようと思います。

9通目のメール:5月7日 購入から約2ヶ月後のフォローメール

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商品のお届けから約2ヶ月が経過しましたが、使い心地はいかがでしょうか?

本日は商品を長くご使用頂くために、

・定期的なケア
・革のトラブル解決法

についてご説明致します。

フォローメールタイミングが適切にオペレーションとして組み込まれてますね。このメールが来た時点で確信しました。「HushTug(ハッシュタグ)」は確実にCS(顧客満足)についてのノウハウがあり、着実にそれを実践しています。

メールは以上です。ここまでで十分「HushTug(ハッシュタグ)」の真摯な取り組みが伝わってきました。

ここからは今までのやり取りを『CS(顧客満足)ノウハウ』の観点で一連の流れを整理します。

CS(顧客満足)とは?

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オリバーの「期待不確認モデル」を参考に考えると、顧客の期待を上回ることが非常に重要です。「HushTug(ハッシュタグ)」の場合、宣伝や口コミの情報をサイトで公開していますので最初からかなり私の期待値が上がっていました。「HushTug(ハッシュタグ)」側からすれば期待値が上がりすぎるのは良くないことかもしれません。
(※ただし、顧客満足などは「知覚矯正の仕組み」から考えると、実際の評価は、事前期待に引っ張られる(知覚矯正)ので、今回のように実際よりも少し高めの購入前期待を持ってもらうほうが望ましいです。)

しかし、丁寧なメールサポートのように「購入前は知らなかった丁寧な顧客サポート」は十分に私の期待値をさらに上回ってくれました。

宣伝、口コミなどは「想定できる期待値」です。しかし、購入から商品が届くまでの体験は「想定できない期待値

これを分けて考え、デザインすることで顧客にサプライズを届けることができますので、しっかりこのフレームワークが組織に根付いていると思い勉強になりました。

顧客の事前期待と利用結果の関係


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5段階評価で顧客満足度を分類した時、「5」は感動、「1」は激怒となります。

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注目したいのは「顧客満足度」評価の1と5です。

ここで重要なのは「テロリスト」を生み出さず、「伝道師」をいかに作るかという点です。

「テロリスト」とは事前期待より利用結果が著しく低い体験をしてしまった場合です。
テレビを買ったけどまったく映らなかったなどは「激怒」になりかねません。その場合「マイナスの満足」になってしまっているので、ネガティブな口コミなどが生まれ、企業は鎮火対応に時間と労力(コスト)がかかります。そういった案件が増えれば顧客も離れ、ブランドも毀損してしまうので、回復させるために多大なコストがかかってしまいます。そのため絶対に「テロリスト」を生まない取り組みが必要です。

「伝道師」は企業にとって最高の存在です。マーケティングコストをかけることなく、その人が「最高の体験」を無償で、精力的に、何度も色々な人に伝えてくれるからです。売り手から「この商品最高です!」と言われても胡散臭いと感じる人も多いでしょう。しかし信頼している友人から「この商品いいよ!」と言われたら・・・?

私ならすぐ調べて購入を検討します。

つまり「伝道師」は無コストで最高の営業マンを量産する方法になります。
そして「伝道師」を作るには「期待値」を上げることが最重要になってきますので、そこに頭を使って丁寧にデザインすることで、後からテコのように効いてきます。「HushTug(ハッシュタグ)」は顧客を「満足」させるだけではなく、「感動」「感激」のレベルまで近づけようとしている意思を感じました。

顧客満足、顧客ロイヤリティと利益の関係

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満足して、伝道師(ロイヤリティが高い顧客)は以下の行動をとる傾向が強いので企業のイメージ向上や収益性に大きく貢献します。

・同一製品リピート購入しやすい(プレゼント用、プライベートやビジネス用等)
・企業の別商品・サービスを購入しやすい(『HushTug Outlet』などの取り組み
・知人に紹介する(口コミ、私のように記事にする等)
・高い値付けを受け入れやすい(HushTugはHPで原価も公開し、誰にどれだけ利益が還元されるか明確なので素晴らしい)
・企業にとって有益なアドバイスをもらえる

HushTug(ハッシュタグ)の顧客満足デザイン

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まとめると上記のようになります。

注目したいのは「低い顧客満足」の時のリスクです。多大なコストがかかってしまいますね。

とくにHushTug(ハッシュタグ)のようなD2Cブランドの場合、Amazonや楽天のようなプラットフォームを利用していません。そのため、このデザインをいかに丁寧に構築し、最少人数の組織体制でも規模を拡大していくためには顧客満足度(CS)が本当に重要になってくるのです。

なぜ多くの企業がここまで本気に取り組まないのか?

HushTug(ハッシュタグ)の取り組みは顧客満足事例として非常に学びが深い案件です。これだけ見ると、「どの会社も取り組めばいいじゃん!」と思うかもしれません。

しかし、みなさんが所属している会社や、世の中の企業を見ても、ここまでデザインしている企業はそう多くありません。

それはなぜか?

・企業業績(売上・利益)に与える影響が実感できない
・何をどこまでやったらいいのかわからない

つまり「顧客満足」を向上させたことによるリターンが数値化できないという点が不明確なので取り組みにくいのです。

では、それが数値化できたらどうなるのか?HushTug(ハッシュタグ)の事例で仮説を立てて考えてみましょう。

顧客満足度向上のインパクト①:基本モデル

■前提条件
・年間の顧客数は10,000人と想定
・10,000円の商品を新たなリピート客は3回購入すると設定

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顧客満足度向上の財務的インパクトを検証する

■条件
①顧客満足度が10%UPすると収益向上のインパクトはどうなるのか
②顧客満足度が10%UPし、リピート回数も3.5回になるとどうなるのか

顧客満足度向上のインパクト②:顧客満足度10%UP

80%→90%へ向上

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顧客満足度向上のインパクト②:顧客満足度10%UP 財務検証

■顧客満足度が10%増加したとき顧客一人あたりの収入増
8,100-7,200=900円

■年間の収益増加分
6,000人×900円=5,400,000円

■貢献利益の増分
5,400,000円×60%(貢献利益%)3,240,000円 (A)
※貢献利益率は仮設定です。

■顧客満足度が90%に向上したことで、以下の向上を仮定して考える
①リピート回数 3回→3.5回
②リピート率 30%→35%

顧客満足度向上のインパクト③:リピート回数が3回から3.5回へ

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■リピート回数増加によるリピーター一人あたりの貢献利益増分
10,000円×(3.5-3)×60%=3,000円

■貢献利益増分の合計
3,000円×1,620人=4,860,000円 (B)

顧客満足度向上のインパクト④:リピート率が30%→35%へ

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■リピート率増加によるリピータ数の増加分
1,890-1,620=270人

■リピーター数増加による貢献利益の増分
270人×10,000×3.5×60%=5,670,000円 (C)

顧客満足度向上のインパクト⑤:合計

■顧客満足度が90%に向上したことで、以下の向上を仮定すると
①リピート回数 3回→3.5回
②リピート率 30%→35%

■顧客満足度10%向上による貢献利益増分
3,240,000円 (A)

■リピート率及びリピート回数増加による貢献利益増分
4,860,000円 (B)+5,670,000円 (C)10,530,000円 (D)

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顧客満足度向上向上による貢献利益へのインパクト

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更に既存リピーター及び口コミ効果を考慮すると、顧客満足度向上のビジネスへのインパクトが更に大きくなります。

これらのシミュレーションを参考に、どのような打ち手を考えれば顧客満足度が向上するのか考察します。

顧客満足度を向上させるための打ち手:HushTug(ハッシュタグ)

こちらはあくまで(例)です。通常は自社を分析し、どのような部分に課題があるのかなど洗い出しをしてから打ち手を考えます。

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実際に最近工場を新設されたみたいですね。

打ち手を考えたら、実行して定点観測し顧客満足度向上の変化をモニタリングしていきます。

以上

さいごに

かなりの妄想的な仮説を元に割り出しているので、数値の信憑性はありません。

しかし、顧客満足度を数値化し、経営として財務インパクトを見える化させることは非常に重要になります。

「お客様の声」を見て、聞いて「一喜一憂」してやる気を出す糧にするだけではなく、どのレベルの満足度が取得できているのか?狙っている満足度を顧客に提供できているのか?を考え、その結果「どれくらい経営的数値に影響を及ぼすのか」まで従業員レベルでも理解できていれば、かなり「使える」KPI設定にもなりうると思います。

頑張ることて従業員も満足、そして気持ちが充実した社員が顧客へ最高のサービスを提供する。このサイクルがHushTug(ハッシュタグ)は回せていると感じました。

これからも、世の中のために素晴らしい商品を提供していってください。


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