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あなたはどっち? 傾聴が得意な「レシーブタイプ」と再構成が得意な「リターンタイプ」 【対話力 #10】

今回からは、対話力における「5つのスキル」(傾聴、質問、理解、再構成、フィードバック)の4つ目、「再構成力」について語っていこうと思う。

と言ってみたところで、「再構成力ってナニ?」と感じる人も多いだろう。5つのスキルの中でもっともイメージしにくいのが、この「再構成力」だと思う。

しかし、言いたいことはそんなにむずかしいことではなくて、たとえば


「○○さんと話すと、とても頭が整理される」

「○○さんに聞いてもらうと、自分でも気づいていなかった部分に気づけるからスゴイ!」


なんて言われる人がいるだろう。
もちろん、この「○○さん」は「引き出す力」が優れているのだが、ただ傾聴したり、質問したり、理解しているだけではない。

相手が話した事柄を適切に整理したり、ときに言葉を置き換えてみたり、場合によっては「○○さん自身の解釈」を交えたりしながら、相手の話を巧みに組み立て直す。そんな作業をしているはずだ。


端的に言えば、それが「再構成力」である。


再構成力に優れた対話者と話をすると、自分の話は「自分が話した以上」に整理されるし、自分では言語化できなかった部分が「言葉になって返ってきたりする」ので、話し手としては「そうそう、そういうこと!」という満足感を得やすくなるのだ。


世間ではざっくりと「聞き上手」なんて言葉で片づけられているが、

心地よく傾聴をしてくれる「レシーブタイプ」と、
心地よい再構成をしてくれる「リターンタイプ」

というのは、そもそも対話者としての質が異なる。

もちろん、どちらが上で、どちらが下なんてことはないが、対話力を向上させる上で「再構成力」というスキルが重要な要素であることは間違いないだろう。


さて、そんな前振りを踏まえた上で、そもそも「再構成力」とは何なのか。そんなところを具体的に紐解いてみたい。

非常にざっくり言ってしまうと、再構成力には次の三つの要素がある。


① 整理

② 解釈

③ 付加


①の整理とは、文字通り相手から引き出した情報、思考、感情などの “要素” を整理することだ。(以前のnoteで述べた「理解力」と重なってくる部分も多い)


たとえば、あなたの職場に、たくさんの仕事を抱えてパニックになっている人はいないだろうか。ただでさえ時間が足りないのに、頭の中が混乱しているので、ひたすらジタバタするばかりで、さらに効率を落としているような人だ。

そんな人に対して「今抱えている仕事を、とりあえず全部書き出してみてよ」なんてことをさせた上で


「この中で『今日中に終わらせなければならない仕事』と『今週中』『それ以降』という3つに分けてみようよ」


なんてことを言う人がいるだろう。

これこそ、非常にわかりやすい「整理」である。
相手から引き出した情報を「緊急度の違い」というグループに分け、再構成しようというわけだ。


あるいは別のケースで、「職場の人間関係で悩んでいる」という人がいるとしよう。

この場合、

●その人がどんな状況に置かれていて、
●具体的にどんなことが起こっているのか、
●相手はどんな人で、
●どんな思いでいるのか、

なんてことをいろいろと聞くだろう。

まあ、これは「質問力」の領域なのだが、そうやって「いろいろな要素」がテーブルの上に散らばった状態で、たとえば、こんな質問を投げかけたとしよう。


「人間関係の問題がいろいろあるなかで、実際にあなたが『仕事をする上で、直接的な不便を感じている』のは、どういうところなんだろう?」



じつは、この質問の背景には


人間関係の問題で苦しんでいるだろうけど・・・
とりあえず『仕事で直接的に不便を感じている要素』と『そうでない要素』を切り分けて考えてみようよ・・・


という、さりげない「整理」が存在している。

あるいは、「職場の人間関係なんだから、そうやって2種類に分けることができるよね」という対話者の解釈が乗っかっているとも言えるし、「そこを切り分けて考えてみることで、少しは楽になるんじゃないかな・・・」という提案、すなわち『付加的な要素』が込められているとも言える。

こんなふうに「整理」「解釈」「付加的な要素」を巧みに使いながら、相手の話を組み立て直そうとする力。それが再構成力である。


もちろん、対話者が強くリードするわけではないが、そうした対話をするなかで、少しずつ「話し手」の気持ちが整理されたり、取るべき行動が見えてきたりすることはよくある。

相手の気持ちに寄り添うだけでなく、何かしらのアウトプット、問題解決に繋がるような対話を目指すなら、「必須の能力」と言っても過言ではないだろう。


ただし・・・・だ。


この「再構成力」というものは「5つのスキル」の中でもっともデリケートであることも、同時に、強く、肝に銘じておかなければならない。

ここで言うデリケートとは、


「そのスキルを発揮すべきかどうか」について、

 とにかく慎重にならなければいけない!


という意味だ。

すでに述べた通り、再構成力というのは「アウトプット」や「問題解決」に向けて対話をする場面で、より発揮されやすい能力である。

しかし、みなさんご存じの通り、世の中の対話のすべてが「解決」を求めているわけではない。


女性は話を聞いて欲しいだけなのに、男性はすぐにアドバイスをしてくる。


という話はよく聞くだろう。
男女の関係に限らず、さまざまな場面で(アドバイスをしないまでも)相手の話に対して


「ちょっと、状況を整理してみようよ」  とか

「事実関係と、感情的な話を分けてみると・・・」  とか

「自分自身で、コントロールできる範囲に集中して考えてみようよ」


なんてことを言う人がいるだろう。
アウトプットや問題解決を目指しているなら、どれをとっても悪くないアプローチだ。

だが、残念ながら、相手はそれを求めていない・・・


私もしょっちゅうやってしまう失敗だが、これは対話者として十分に注意しなければならない点だ。アドバイスはおろか「話を整理すること」すら相手は求めていない、なんてことも本当によくある。

「再構成なんてまったく必要ない」、必要ないどころか「むしろ邪魔で、不快である」ということさえあるので、要注意なのだ。


そんなことを十分に踏まえた上で、いつか必要となる日のために、せっせとせっせと磨いておく。

「再構成力」とは、そういうものだと私は思っている。



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