#376 作業療法が表現しているもの
さて、今日のテーマは「作業療法が表現しているもの」です。
久しぶりに僕の専門の話。現在地を書き残しておきます。
作業療法という仕事をしていると、自分たちは何に向かっているかをいつも考えさせられます。
ゴールがあるようでゴールがない。
それは具体的ではない何かを求めているからだと思います。
今僕の中にある、作業療法を少しだけ具体化します。
自己紹介とお知らせ
僕は、某リハビリテーション病院で作業療法士の中堅管理職として働いています。対象者の課題と向き合うことはもちろんですが、スタッフのストレスやチームの運営にも日々向き合っています。
このnoteでは、仕事の考え方や医療者としての働き方、コミュニケーションや人間関係、ストレスマネジメント、作業療法に関するさまざまなテーマを取り上げ、日々の感じたことを自らの解釈として記録しています。
読んだ方の何かお役に立てれば幸いです。
以下お知らせ。
◾️第28回福岡県作業療法学会
来年行われる福岡県作業療法学会の学会長を行うことなりました!これから1年間準備行っていきます。noteでも「学会長の奮闘記」を定期的に書いていこうと思います。マガジンでまとめてますので、よかったらスキを押して応援よろしくお願いします!
◾️湘南OT Interaction
作業療法士向けの研修会を行なっている湘南OT交流会の支援の元、「新しい学び場を作る」ことを目的として立ち上がりました。「学びたいけどどうしたら・・・」と悩むOTの方と一緒にコミュニティ作りを支援します。定期的に勉強会も行なっているのでよかったら。
それでは本題に入っていきましょう。
病院という環境から考える
僕の作業療法は、病院という環境で育ってきたので、その環境から考える作業療法の視点が一番考えやすいんです。
病院という環境では医療者がいて、患者います。
基本的にはこの構図です。
ただ、ここにはずっと違和感があります。
単純な疑問です。
「患者と何か?」です。
僕たちが対象としているのは、
「患者?」
「病気?」
「障害?」
「筋肉?」
「脳?」
「人間?」
「不安?」
「人生?」
「生活?」
患者という「言葉」に対して、さまざまな言い換えができます。
医療者にはいろんな職種がいるので、対象者のためになっているのであれば、さまざまな見方があって良いかと思います。
その中で作業療法が何を扱っているのか?
ここに疑問を持つことが必要です。
僕の中での回答は「作業を行う人間」であります。
これが僕たちの対象者です。
人は作業を行っています。
この作業を成立させるために、作業療法が存在しています。
だから、
作業をすることも、
作業ができるようにしていくことも、
作業について一緒に考えることも、
作業に向かっていくことは「作業を行う人間」に対する関わりになるわけです。
それが万が一、ただ歩くだけでも、ベットで横になって関節を動かすだけでも、
それが「作業をする人間」に対する関わりであれば、それは作業療法として成立すると考えています。
作業療法は存在を見せている
病院という環境において、作業療法士がもう一つ扱う重大な問題があります。
それは、患者さんが「病人」として見られすぎることです。
当たり前と思いますかね?
作業療法士は患者さんを「作業を行う人間」と捉えます。
だから、「病人」として捉えすぎることに違和感を感じます。
「病人」と認識すれば、
その人は、
ベットで休むことを求められます。
栄養を摂るように求められます。
お風呂に入れられること求められます。
運動することを求められます。
懸命に闘病することを求められます。
本来はその人個人の価値観を生き方があるはずですが、
「病人」と認識された時点で、周囲からのコントロールされる立場に置かれてしまう可能性があります。
医療者と患者の関係はこのようなヒエラルキー関係に陥りやすく、これはその人自身の人生を「病人」という存在に作り上げていきます。
僕たちは人生の経験から自分の存在や価値を作り上げます。
自分のことを「病人」だと認識して人は、そういう人生を歩むことになります。
作業療法士が違和感を覚えるはこの部分です。
病院である以上、病人として存在することは避けられません。
ただ、その人がこれから歩む人生には、その「病人」という要素をどれだけ取り除けるかも、リハビリテーションに位置付けられる作業療法士にとっては重大な問題となります。
だから僕たちはその人の価値や存在を大切にした関わりを行います。
覚醒が低ければ、車椅子に乗って目を覚まします
顔を洗ってなければ、洗顔して病前の姿を知りたくなります
寝巻きを着てば、その人の好きな服が知りたくなります
オムツでトイレをしていれば、トイレに連れていきたくなります
ご飯を食べれなければ、協力して食事の仕方を考えます
車椅子では仕事ができなければ、仕事の仕方を考えます
家事をしないといけなければ、一緒に料理を作ります
旅行に行きたければ、旅行の段取りを考えます
これらの関わりは全て、その人の価値や存在を示すためです。
それを示す対象は、医療職であり、家族であり、地域の人であり、周囲の人であり、患者本人です。
その人の存在が守られ、それが表現されるように作業療法士は作業を成立させます。
「その人らしさを守り、育む作業療法」
これが僕の現在地です。
今日は以上になります。
頑張るあなたを応援しています。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
読んでいただいた方のヒントになれば幸いです。
ではまた。
◾️質問箱
質問箱をGoogle formで作りました。仕事や生活などでの悩み(それ以外でも)があれがご記入ください。いただいた質問は、記事にして返信したいと思います。
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