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小説

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町について、物語をつくりました。キャラの落書きもあります。
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#津久井湖記念館

津久井湖に沈んだ集落 ~タイムトリップの旅③~完結編

津久井湖に沈んだ集落 ~タイムトリップの旅③~完結編

※6300字程度の小説です。

 はあ、はあ。
息が切れる。足がもつれる。今日どれくらい歩いたっていうんだ。足がただでさえ辛くなっているのに、なぜ僕はこんなところでダッシュをしているのだろう。

という余計なことが頭でよぎるが、早くわが子を助けなければならない。
わが子、健(たける)は連れ去られた。三井の小学校の校庭で、珍しく彼は興味津々に昔の学校の様子に見入っていた。
もっと傍に居てやればよかっ

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津久井湖に沈んだ集落 ~タイムトリップの旅②

津久井湖に沈んだ集落 ~タイムトリップの旅②

この物語はフィクションで、実際の町の様子をできり限りの資料から妄想で作りました。5000字くらいですが写真多め。
津久井湖編の第二話です。第一話は下のリンクにて。

無口な子に育ちました祖父はよく「俺の村はな、ダムに沈んだんだ」と言っていた。
子供を連れ実家に帰っても、僕の子供のころのように祖父はアルバムを見せようとする。最初は白黒の写真を怖がっていたが、さすがに小学生ぐらいになると怖がらないとい

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津久井湖に沈んだ集落 ~タイムトリップの旅①(※史実をもとにした妄想です)

津久井湖に沈んだ集落 ~タイムトリップの旅①(※史実をもとにした妄想です)

小分けにして書きます。2500字くらい?

津久井湖に沈んだ沼本集落を、タイムトリップしたつもりで歩いていきませんか?
道志川と相模川が合流するこの土地を沼本というらしい。

水田が広がる集落。川端を歩きながら目の前に見える丘。緑のむせ返るようなにおいに、自然豊かな田舎に戻ってきたように思える。

「喉かわいたなぁ。」汗まみれの手を引いて、さっきから口数が減った幼子に声をかけても、声無く頷くだけだ

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