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【短編脚本】#1「秋の匂いと秋の朝」

【短編脚本#1】十月一週目

晴人 28歳
夏希 27歳

埼玉県マンション住まいの 2人
毎朝起きたら散歩に出かける。

寝癖のままコーヒーも飲まず。
スマホ持たない。もちろん歯磨きもせずに。

それが、いいらしい。

ーーーーー

夏希)はーあ、眠い。
晴人)秋だね

夏希)それ昨日も言ってたよね。一昨日もか。
晴人)うん、飽きが来るまで言うよ。

夏希)うん。朝だから、冴えてるね。
晴人)ありがとう。なんか、いい匂いだね。

夏希)あー金木犀?

晴人)うーん、金木犀もいい匂いなんだけど、
  「運動会の匂い」なんだよね。

夏希)はーあ?

晴人)運動会の時の寒いのに行進させられて
   ラジオ体操するときに
   鼻から入ってきた秋の匂い。

夏希)うーん。なんとなく。
   いや、わかんないよ。

晴人)まあ、いいのよ。それはそれで。

夏希)金木犀ってなんでこんな
   秋って感じの匂い出すんだろうね。

ーーーーー

晴人)秋の思い出ってなにかな?

夏希)私ー?うーん、文化祭かなー?

晴人)なんで?なんで?なんで?

夏希)なに急に。別に、青春なだけ。

晴人)なにそれ。青春、、してたんだ。

夏希)一応ね。

晴人)青春ってそもそもなんなの?春は青いの?

夏希)朝から面倒臭いなあ。
   青春っていうのは、
  「言語化できない心の記憶」のことだよ。

晴人)言語化...?
   確かに出来ないか。

夏希)言語できるほど甘くはない!
   それが青春。

晴人)なんだよー、急に。

ーーーーー

晴人)秋の話してるけどさ、
   夏希じゃん?名前。
夏希)うん、夏に希望でなつき。だめ?

晴人)ってことは、秋は若干...
   冷めて...いや、涼しくなってるの?

夏希)そんなことないんじゃないかな。
   夏に希望を持って生きて...
   秋を迎えるから良い感覚を
   味わえてるんじゃないかな。

晴人)ふーん。

夏希)ふーんって何?
   晴人だって雨の日にはどうしてるの?

晴人)え?

夏希)だって晴れの人でしょ?

晴人)晴れの日って。
   天気の話をしてるわけじゃないよ。

夏希)太陽みたいな人にって意味じゃないの?

晴人)心の話だよ。心が晴れてる人。

夏希)ほう。
   かっこいいじゃん良かったね。

晴人)そう?どーも。
   たまに天気も悪い日もあるけどね。

ーーーーー

晴人くん、夏希さんおはよう。
隣のウチのおばさんと鉢合わせした。

晴人・夏希)おはようございますー

おばさん)朝の散歩はいいわよねー

夏希)そうですね!

おばさん)秋が大好きでね。大昔の
    「運動会の匂い」に似ていてね。

夏希)あっ...
   金木犀の匂いもいいですよねー!

おばさん)おばさんね、いつも思うの。
     どんな人間でも朝起きて、
     空を見上げて深呼吸をすれば心が
     晴れてその日に希望が満ち溢れる。

晴人)ほんとですね!
   昔から相変わらず元気ですもんね!

おばさん)あら!ありがとね。
     今日も張り切って行こう!
     晴人くんも、夏希さんも
     今日を素敵な一日にしてね。

夏希)はい。では!気をつけて。

晴人)なんか...ごめんね。
夏希)うん、私も。なんかごめん。

晴人)朝ごはんのいい匂いがするね〜
夏希)ほんとだ。いい匂いだ。
   これも秋の匂い?

晴人)うーん家族の匂いかな
夏希)朝ごはん、
  ベーグルにする?クロワッサンにする?

晴人)どっちでもいいよ。


ーーー完ーーー



10月1日土曜日

毎週脚本#1「秋の匂いと秋の朝」
長谷 鉄


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