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【日本遺産Q&A 第1弾】日本遺産が一番多い都道府県は? 地域型とシリアル型多いのはどっち? 日本遺産に聖地巡礼スポットってあるの?

日本遺産に関する皆さんの疑問を解決すべく、以下、定番のQ&A10問まとめました。第2弾以降については、実際に皆さんからの質問に答えていきたいと思います。お気軽にコメントやDM(公式X)ください。


Q1 日本遺産が一番多い都道府県はどこ?

2024年4月現在、日本遺産は全104のストーリーがありますが、中には複数の所在自治体からなるシリアル型の遺産もあります。これを踏まえ、構成文化財が一つ以上存在する際に、日本遺産1件とカウントした場合、日本遺産が最も多い都道府県は和歌山県・兵庫県・岡山県・島根県となり、いずれも県内に7件の日本遺産があります。

例えば、和歌山県には『鯨とともに生きる』、『絶景の宝庫 和歌の浦』、『「最初の一滴」醬油醸造の発祥の地 紀州湯浅』、『「百世の安堵」~津波と復興の記憶が生きる広川の防災遺産~』、『1300年つづく日本の終活の旅~西国三十三所観音巡礼~』、『女性とともに今に息づく女人高野~時を超え、時に合わせて見守り続ける癒しの聖地~』、『「葛城修験」-里人とともに守り伝える修験道はじまりの地』の7件の日本遺産の構成文化財が存在します。

次いで、京都府・奈良県・大阪府が6件、北海道・福井県・滋賀県・広島県が5件とランクインします。全体的に、西日本とりわけ近畿地方に多い傾向があるといえます。

ただし、日本遺産には都道府県を跨ぐものもあります。あくまでストーリーとして楽しめるのが日本遺産の魅力であることを念頭に置く必要があります。

写真1 和歌山城(和歌山県和歌山市)

Q2 地域型とシリアル型多いのはどっち?

日本遺産は、単一の市町村内でストーリーが完結する「地域型」と、複数の自治体に跨るストーリー展開の「シリアル型」の2種類に分類されますが、2024年4月現在、地域型が34件、シリアル型が70件と、シリアル型の方が地域型の倍程度存在します。

日本遺産最大のシリアル型ストーリーである『荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間~北前船寄港地・船主集落~』は、構成文化財が追加認定された結果、北海道から香川にいたるまで全国49の市町が所在自治体となりました。スケールが大きく、他の日本遺産ストーリーと直接的ないし間接的に関係・影響しているケースも少なくありません。

写真2 日和山公園(山形県酒田市)

Q3 日本遺産第1号は?

日本遺産の登録条件や登録の流れは前回の記事に掲載した通りとなっており、毎年条件を満たしたものが、総数100件程度という制約の中、日本遺産に認定されます。日本遺産第1号を日本遺産設立初年度(平成27年度=2015年度)に認定されたストーリーと定義した場合、以下の18件(うち地域型6件)が該当します。

図1 日本遺産1号
出典:日本遺産パンフレット
写真3 足利学校(栃木県足利市)

Q4 これから日本遺産になりそうな地域ってあるの?

2024年4月現在の日本遺産候補地域(=令和3年度認定地域)として、『北海道の「心臓」と呼ばれたまち・小樽 ~「民の力」で創られ蘇った北の商都~』(北海道小樽市)、『天空の岩山が生んだ信仰と産業 ~房州石の山・名勝地鋸山は自然と歴史のミュージアム~』(千葉県富津市・鋸南町)、『おもてなし文化 ~受け継がれゆく京の花街~』(京都府京都市)の3件がリストアップされています。

これらの地域は、今年度中に、平成27年度条件付き認定地域である『「信長公のおもてなし」が息づく戦国城下町・岐阜』(岐阜県岐阜市)、『六根清浄と六感治癒の地 ~日本一危ない国宝鑑賞と世界屈指のラドン泉~』(鳥取県三朝町)、『津和野今昔 ~百景図を歩く~』(島根県津和野町)、『古代日本の「西の都」 ~東アジアとの交流拠点~』(福岡県太宰府市など)と合わせた計7件の中から、新規認定および認定取消の有無が発表される予定です(目安は日本遺産総数100件)。

写真4 小樽運河(北海道小樽市)

Q5 面白いタイトルの日本遺産ストーリーがあるって本当?

全部で104ある日本遺産のなかには、創意工夫を感じられるタイトルのストーリーもあります。例えば、仙台藩を築いた伊達政宗による文化の再興・再生をテーマにした日本遺産『政宗が育んだ”伊達”な文化』は、伊達氏の”伊達”と形容動詞の”伊達”を掛けています。

この他にも、『知ってる!?悠久の時が流れる石の島~海を越え、日本の礎を築いた せとうち備讃諸島~』(これも”石”と”礎”を掛けているのかもしれません)や、『もう、すべらせない!!~龍田古道の心臓部「亀の瀬」を越えてゆけ~』などポップ?なタイトルのものがあります。

写真5 仙台城跡の伊達政宗像(宮城県仙台市)

Q6 世界遺産との違いは? 世界遺産と被る日本遺産はあるの?

世界遺産含め文化財の多くは、これまで、「甲冑→国宝、重要文化財」、「寺社・仏閣、城郭、遺跡→史跡、名勝、天然記念物」、「伝統芸能→無形文化財、民族文化財」という形で、個々の遺産を「」として指定・保存してきました。しかし、保存に重点を置いた従来の文化財行政では、地域の魅力が充分に伝わらないという課題もありました。

そこで、寺社・仏閣、城郭、遺跡、伝統芸能、食文化など、有形無形問わず幅広い分野を対象に、「」でストーリーを構成し、これを地域のブランド化・アイデンティティ再確認促進のために「活用」を重視する方針をとったのが日本遺産です。

そもそも、日本遺産自体が東京オリンピック開催によるインバウンド(外国人観光客)の増加を見据え、新たな日本の魅力を国内外に発信していくために誕生したものです。

ちなみに、世界遺産条約は、1960年代にエジプト・アスワンハイダム建設に伴うヌビア遺跡の水没危機から救うために、ユネスコが救済キャンペーンを行ったのがきっかけで採決されており、日本遺産と世界遺産では誕生した背景や目的が大きく異なります。

ただ、日本国内においては、日本遺産『みちのくGOLD浪漫-黄金の国ジパング、産金のはじまりの地をたどる-』の中尊寺金色堂(岩手県平泉町)や、『琵琶湖とその水辺景観 -祈りと暮らしの水遺産』の比叡山延暦寺(滋賀県大津市)、『石見の火山が伝える悠久の歴史~”縄文の森””銀の山”と出逢える旅へ~』の石見銀山遺跡(島根県大田市)など、世界遺産と構成文化財が重複するケースもあります。

写真6 比叡山延暦寺(滋賀県大津市)

Q7 「日本遺産の日」があるって本当?

2019年、日本遺産の認定開始から5年目を迎え、合計で83のストーリー(当時)が認定されたタイミングで、文化庁および日本遺産連盟によって、国民の日本遺産に対する理解と関心を高めるとともに、各地域における取り組みのより一層の充実を図るべく、「日本遺産の日」が制定されました。

これによって、「にほん(2)いさん(13)」の語呂に合わせた、毎年2月13日が「日本遺産の日」となりました。

毎年、この日の前後に合わせて、東京都内では記念イベントが実施されます。今年(2024年2月10日~12日)は、日本遺産認定地域おすすめの商品やオリジナルグッズの販売、体験ワークショップをはじめとする「日本遺産マルシェ」と、因幡・但馬の麒麟獅子舞披露や、日本遺産大使によるトーク&セッションといった「日本遺産の日記念シンポジウム」が実施されました。

実際に参加することで、より日本遺産について詳しく知ることができるはずです(パンフレットやグッズなどたくさん貰えます)。

写真7 日本遺産マルシェの様子(有楽町駅前)

Q8 日本遺産検定を受けるとどんなメリットがあるの?

日本遺産検定とは、2023年7月に始まったばかりの新しい民間試験で、合格すると「日本遺産ソムリエ」の称号を得ることができるのが大きな特徴です。

日本遺産検定は合格がゴールではなく、その後、日本遺産ソムリエのコミュニティや、定期的に開催される日本遺産勉強会への参加資格が得られるため、「日本遺産事業に関わりたい!」という方にはメリットづくしです。

写真8 日本遺産検定3級・認定証

直近では、2024年5月17日(金)、18日(土)、19日(日)に3級試験がオンライン開催される予定です(2級は2024年夏、1級は2024年冬頃)。4月24日(水)には、60分で学べる無料対策講座も実施されます。また、全ての日本遺産が見開き1ページでコンパクトにまとめられている以下の検定公式テキストがおすすめです。


Q9 日本遺産を軸に旅行計画を立てたいけど、どうすれば良い?

日本遺産ポータルサイト(リンクはこちら)には、ストーリーの解説のみならず、実際に訪れる際に便利な宿泊先やお土産・グルメ、みどころなどの情報が詳しく掲載されています。旅行計画を立てる際のヒントになることでしょう。

写真9 日本遺産ポータルサイト

また、今年1月に発売された「るるぶ日本遺産(るるぶ情報版)」(JTBパブリッシング)もおススメです。思わず行きたくなるような、情緒あふれる美しい画像がたくさん掲載されています。


Q10 映画やドラマ、アニメの聖地巡礼ができる日本遺産ってあるの?

例えば、米澤穂信氏の原作「古典部シリーズ」をアニメ化し、2012年から放送された人気ミステリーアニメ「氷菓」において、荒楠神社のモデルとして岐阜県高山市の日枝神社が使用されました(アニメ第20話)。この場所で毎年春に行われる高山祭では、日本遺産構成文化財の一つである、飛騨匠の技によって作られた絢爛豪華な祭屋台が登場するなど、日本遺産とのかかわりが深い神社です。

写真10 紅葉シーズンの日枝神社(岐阜県高山市)

このような日本遺産と関係のある聖地巡礼スポットをまとめた公式サイト(リンクはこちら)が、文化庁によって先日公開されました。旅の参考にしてみると良いかもしれません。

写真11 日本遺産の聖地巡礼特集
出典:文化庁・公式X「ぶんかる」のツイート

記事本文は以上です。拙文最後までお読みいただき、ありがとうございました。少しでも日本遺産に関心をお持ちいただけたなら幸いです。


【執筆者プロフィール】
TerraTrek(テラ・トレック)管理人
所属:
★大学4年生(執筆時/専攻は地理学)
経歴・資格:
★日本遺産普及協会(インターン)で活動中
・NEALリーダー(自然体験活動指導者)
興味・関心:
★文化財活用(日本遺産、食文化)
・観光(インバウンド、聖地巡礼)
・地方創生(人材育成、地域産業)
連絡先:
→terratrek2024■gmail.com
※■を@に変えてください。
※返信できない場合もございます。ご了承ください。

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