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【サウナレビュー】風俗街の中心で、フォー!と叫ぶ。

サウナにハマってはや半年以上が過ぎた。「テラカドサウナクラブ」なるふざけた趣味サークルも立ち上げ、部員は私含めて4人まで膨れ上がった(体験入部生含む)。少なっ!数ヶ月に1度は集まり、セッションを重ねととのえているし、個人的にも週に2、3度は地元の銭湯に通う。

今では、湯船にはほとんどつからず、カラダを洗ったらすぐにサウナに突入し、10分〜12分はサウナ内で過ごせるようになった。水風呂も余裕だ。またこの間なんかは、本屋で平積みされた銭湯のムック本を手に取り、俳優の田中圭が「武蔵小山温泉によく行くんです」というインタビュー記事を流し読みし、「俺のホームセントーだけど一度もみたことないぞ!どうせ、数回行った程度でライターさんが盛ったんだろう」とマウンティングする始末。

テラカドサウナクラブでは、サウナ原理主義をうたい、【サウナ→水風呂→外気浴】のルーティンを基本としている。たまにサウナと水風呂の往復だけにとどまる人がいるらしいが、外気浴をしなくては、ととのいは得られないと考えている。もちろん水風呂はマスト。今は、先ほど言った自宅近くの武蔵小山温泉(清水湯)ばかりで、あんまり他の銭湯や温泉、スーパー銭湯には行かなくなったのだが、この間、衝撃の経験をした。

私は今、五反田のコワーキングスペースで作業をすることが多いのだけれど、ある時、二日酔いが酷すぎてまったく仕事がはかどらず、これは酒を抜くためにサウナに行こうと思い立つ。五反田周辺の銭湯をネットで探しているとひとつの施設に目が止まる。『℃(ドシー)』というカプセルホテルで、サウナもあるらしい。仕事場のすぐ近く(風俗街のど真ん中)だったので、とりあえず行ってみることに。

店内に入ると、コンクリート打ちっぱなしのおしゃれな内装。受付で待ち受けていたのは、黒のポロシャツにチノパン姿のカタコトの中国の方(多分)。初めてだったので施設の説明を受けていると、なんでも水風呂がないというではないか!「へっ!これだから、中国ベンチャーが、日本の流行に乗っかったビジネスは嫌なんだよ。水風呂がないなんてサウナのことなんもわかってねーじゃねーか、しかも1時間1000円!?高けーな、、、、」という偏見丸出し(中国ベンチーの会社かどうかもわからない)の気持ちを必死におさえ、仕方なしに料金を払い、地下にあるサウナに向かう。

施設に入ると、まさかの貸し切り状態。本当に誰一人いない。そして、受付の内装同様にコンクリート打ちっ放し、ダクトむき出し。ハリウッド映画に出てくる近未来の軍人施設みたいでかっこいいな。しかも貸し切りというだけで、グッと評価が上がってしまうぞ。だってここは五反田のど真ん中ですよ。昨年できたばかりらしいので、潰れるんじゃないかと心配になってしまう。


シャワーでカラダを洗いそそくさとサウナに向かう。水風呂がないくらいだからもちろん湯船もない。サウナの扉を開けると、ほわーんとアロマの香りとヒノキの香りが鼻をつく。んーーー!!素晴らしい香り。おもわず深呼吸してしまい、熱さのあまり鼻が焦げそうになる(サウナあるある)。サウナ内にも人はおらず貸し切り状態。しかも、これが凄かったのだが、サウナ内は無音だったのだ!!!!そう!無音のサウナというのは珍しい。だいたい、銭湯だとテレビが常設されており、見たくもないワイドショーやバラエティ番組を観なくてはいけないし、テレビの無いスカイスパ横浜やアスティル新橋なんかでも、音楽は流れている。しかし、ここドシーはまさかの無音。石がはじける音だけが耳に響き、己と徹底的に向き合える。さらに、サウナは100度の設定。これは高温の類で、入って2、3分で汗が吹き出す。とにかく心地よい。いつもは10分以上入っていられるのだが、6分ほどでギブアップして、シャワーに向かう。

シャワーといってもカラダを洗うシャワーとは別に打たせ湯のような筒状の水が天井から落下してくるスペースがある。しかも20℃、15℃、10℃と水温によってスペースが違うのだ。でっかくて丸いアニメに出てくるミサイル発射のようなボタンを押すと、水が脳天に直撃する。結構な水圧だ。頭と首に10秒ほど水を浴びせ続けると、なんだかはやくもととのい感覚がおそってくる。

急いで外気浴へ。ただ、外気浴スペースは裏口の扉を出て、非常階段をのぼらなくてはいけないようで、裸で雑居ビルの階段を上がっていくというのはなんともいえない背徳感。階段をのぼっていると、清掃のおばちゃんとすれ違い、この道で合っているのだろうかと挙動不審に。だが、一階のバックヤードに出ると、縁側のような長いベンチが設置されており、どうやらここで外気浴をすればいいようだ。座る、まどろむ。右をみると、都会の喧騒が響く。運送会社の人が荷物を積み降ろす。原付のバイクが走る。ピンサロのお兄さんの会話。もう数メートル先では、社会が動いている。そこに裸でただ座っているおっさんがひとり。地震や火災がおきたらどうすればいいのだろうとドキドキしてしまうが、そのドキドキを含めて、特別なことをしているようで嬉しくなってしまう。そして、またまどろんでいると、自然にととのいがやってくる。思わず、フォーッと小さく声をあげる。

私は、受付の中国の方に向けた偏見を心から詫びた。なにがサウナをわかってないだ。サウナがわかっていないのは俺の方ではないか。。。水風呂がなくたってととのうんだ。信じられないが、それは事実だ。しかもサウナ内の完璧さといったら。。。「100度」「無音」「香り」。しかも「人がいない」。これ以上のサウナなんてあるのだろうか。私は、心もカラダも軽くなりながら仕事場に戻った。明らかにこざっぱりとした姿に、コワーキングで仕事をしている他の方々に、60分で風俗に行ってきたなと思われていないか、ちょっと心配になったが、まあいい、また行こう。



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寺門ツネユキ
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