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捻挫後の動作エラーと機能不全の分析

身近な足関節捻挫

各種スポーツ競技において最も多いケガとしてあげられるのが足関節捻挫とされています。

しかし、この捻挫はスポーツ外傷の中でも比較的軽度なものと捉えられがちで、十分な治療やリハビリテーションを行わず競技復帰したために、可動域制限や荷重時痛の残存、再発の繰り返しに悩むケースが少なくないと思います。

足関節捻挫受傷者の約40%は慢性足関節不安定症(CAI)に移行するとされていて、これが再発の原因と大きく関わっているともされています。

また、可動域の制限など足部・足関節機能の低下は、オスグッドやACL損傷など他関節のスポーツ障害の発症リスクを高めることにもつながります。

これらのことから、受傷後の疼痛軽減を図るアプローチだけではなく、足部・足関節機能が他関節のスポーツ障害のリスクとなっていないか評価し、必要に応じてアプローチしていく必要があります。

このnoteでは、足関節機能不全やそれによる動的アライメントの崩れについて分析を行い、捻挫の再発予防および新たなスポーツ障害の予防につなげる評価と動作分析についてお話しいたします!

足関節捻挫から競技復帰するために必要な条件

足関節捻挫の厄介なところは、痛みは消えたが、足関節本来の機能を取り戻していない状態で競技復帰をしてしまうケースが多いことであるとお伝えしました。

では、競技復帰における理想的な身体機能とはどのような状態であるのか。

私が普段臨床でスポーツ復帰に必要な条件として以下の項目を参考にしながら判断をしています。

スポーツ復帰に必要な身体機能 (3)

 ◼️関節運動の正常化

距腿関節における関節軸は距骨体の中を通ります。

そのため、前距腓靭帯などの損傷を伴う足関節捻挫では、距骨の動きを制動する力が失われる為、関節軸も不安定な移動を呈します。

荷重位における背屈運動では、踵骨(距骨下関節)の外がえしが起こり下腿の内旋が誘発され、距腿関節の関節面が一致することで正常な距腿関節の背屈運動が起こります。

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さらに、距骨下関節の外がえしはショパール関節における外がえしを起こし、舟状骨および内側楔状骨の降下を誘発し、内側縦アーチの降下に繋げます。

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前距腓靭帯損傷により、距骨外旋が過剰に増大することで距腿関節における関節面の不一致が起こり、これらの動きの制限にもなります。

また、靭帯損傷に伴う距骨のアライメント異常は底屈可動性にも影響を与え、足関節底屈時の内がえしを助長し、動作時の不安定性につながる可能性が高くなります。

このような観点からも、関節可動域評価などの量的な評価だけでなく、その関節運動が適切に行えているか質的な評価も分析する必要があると考えられます。

 ◼️足関節の安定化

足関節の安定性障害を改善させるためには、可動性・アライメント・筋機能・姿勢バランスなどの機能改善を行う必要があります。

特に足関節捻挫は、靭帯の過伸張や断裂によって距骨のアライメント不良が引き起こされます。

例えば、前距腓靭帯損傷によって機能不全になると距骨の前方変位や側方傾斜増加による内反不安定性を生じます。

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また、足関節捻挫後に起こるCAIでは、腓骨筋群の求心性出力、後脛骨筋・前脛骨筋などの遠心性出力の低下が認められると報告されています。

このような側面から、足関節捻挫に対する治療は、疼痛の軽減だけでなく距骨のアライメント修正および筋機能改善も必要不可欠であると考えます。

 ◼️動的アライメントの安定化

上記2つの要素以上に復帰後の身体に大きな影響を与えるのが、動的アライメントの安定化であると考えます。

足関節の背屈制限や回内足、足趾伸展制限などの足関節機能の低下は、オスグッドや膝蓋腱炎、ACL損傷、股関節痛など様々なスポーツ疾患につながるような動的アライメントの崩れを誘発します。

実際の臨床においても、膝関節や股関節などのスポーツ疾患で対応するケースの多くは足関節捻挫の既往があり、潜在的な足部・足関節の機能不全を認めることが多いと感じます。

このような局所の機能不全が、動作中の動的アライメントに影響を及ぼすような状態では、競技復帰後に新たなスポーツ障害を発症するリスクが高まってしまいます。

そのためにも、競技復帰直前までに様々な動作における動的アライメントを評価する必要があると考えます。

この後からは、足部・足関節機能が動的アライメントに悪影響を与えていないか分析する方法と足部・足関節機能評価の方法についてご紹介します。

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