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「合氣道から学ぶ自立心 研鑽と成長」                直井紀和さん

こんにちは! 
今回はプロのトロンボーン奏者として演奏・指導を行っている音楽家、直井紀和さんにお話を伺ってみました。直井さんから合氣道の魅力や想いをお伝えします。

直井紀和(なおい のりかず)
1987年生まれ、栃木県出身。天通合氣道初段。スイス、バーゼル音楽大学にて修士課程を取得。
2010年よりバーゼル交響楽団の研修生として研鑽を積み、2016年より、ブランデンブルク州立歌劇場コトブスの2/3番契約トロンボーン奏者に就任し、満期終了に伴い日本へ活動拠点を移す。帰国後は、オーケストラや室内楽等の活動と共に、後進の指導にも力を入れている。


自分のリズムを作ってくれる場所

― 懐かしさと心地よさ 

本部道場に子供クラスから通ってましたが、音楽の研鑽のために海外で過ごすことになり、稽古から離れていた期間がありました。
子供のときは、みんなでワイワイ一緒に稽古をしながら、季節ごとの行事や、夏には聞こえてくるカエルの鳴き声や花火大会の音、窓から見える景色など、四季折々の自然を感じる道場の趣も、子供心に心地よかったことを思い出します。
帰国後に合氣道を再開し、最初に感じたことは道場の佇まいや稽古風景が変わってない安心感。我が家に帰ってきたかのようにホッとする! そんな感覚でした。
合氣道や道場が当たり前のように存在していたことに、変わらない存在の偉大さを感じますね。
私にとっての道場は、昔から変わらず、自分のリズムを作ってくれる特別な場所
家での日常生活では味わうことのない経験に触れることで、日々自身の成長を感じています。

― 繰り返しの大切さ

袴を履く、帯をピシリとしめるという、道場ではごく当たり前の動作の繰り返しが、実は大切なことだったのだな、と今になって感じています。
私は、人前で演奏することも多いので、身だしなみにはとても気を使います。燕尾服を着ますが、この当たり前の経験のおかげでしょうか、無意識に身だしなみも整っていて、かつ自然と気持ちも引き締まってくるんですよね。
合氣道での経験が、無意識のうちに実践されていて、プラスに働いているんだなと感じます。

海外経験からの再発見

―  アイデンティティとして

海外での経験を通し、自分が日本人であると再認識したこと、海外から日本をみる、ということができたことは、大きな財産となっています。
現地の人は自国のことをよく理解していて、一方で留学したての私は母国のことを聞かれても上手く答えられず……、という苦い経験があります。
自分が持っているものは何か、錯誤する中で見出せたもののひとつが、子供のころに学んでいた合氣道でした。
オーケストラの研修生として活動中、他の国の文化を紹介する機会があり、自身の合氣道の経験を話したり、ステージ裏で受身を体験してもらったりもして、だんだんと現地のかたがたとも打ち解けられるようになりました。
結果として、留学期間に自己を省みる機会にもなり、今では合氣道も自分を形成するアイデンティティのひとつになっていると感じています。

― スイスでの合氣道経験

スイスでは違う流派の先生に習っていました。異文化にはやく馴染まなければならない、という意識に駆られていたのだと思います。
自身の安定のためにも何か求めていて、自分には合氣道かな? と思い現地の道場に通うことにしました。
道場では先生や稽古生と多くの交流を持つことができ、海外での合氣道を学ぶことができたことは貴重な経験です。
異文化での経験を通して私が学んだことは、リスペクト(敬意)とアクセプト(受容)の心です。今では自分が物事をとらえる際のキーワードになっていますが、そのためには自己がしっかりしていなければなりません。
私にとっては合氣道が、その自己理解を助けてくれているように思います。

トロンボーン奏者×合氣道

― 姿勢と呼吸

合氣道で学ぶ姿勢や呼吸法は、自分の演奏にも役立っています。
楽器を持った姿勢のとり方、呼吸(ブレス)の使い方はとても重要なポイントで、いずれもリラックスしているということが大切になってくるんですね。
リラックスできると視野も広くなり集中もできる。
そうすると、ちょっと専門的になりますが、トロンボーンを吹くことにおいてなかなか難しいとされている、今出ている音を聞く、ということができるようになってきて、また演奏中に自分が出している「イマ」の音に集中できるようにもなり、自分の演奏の世界に大きな広がりを持たせてくれています。

― 空間をとらえる

技で相手と対峙する、演奏に入る前の予備動作。これらは似ている部分があって、合氣道であれば相手の動きをとらえるための察知する要素、演奏であればブレス。
対する相手の動きや気配、指揮者や他の奏者の様子を捉えてこちらも準備すること。それらができないと、技も演奏も上手くいかないんですね。
この、ブレスやテンポなどの流れをつかむための要素を、稽古を通して感覚的に捉えられるようになったことは大いに役立っています。

今後の展望

― 今後の抱負

まだまだ動きにぎこちないところがあるので自然な動きを目指して自己研鑽していきたいですね。ゆくゆくは昇段も目指しています!
そして、身の回りにいるかたがたにも、合氣道を学んで良かったなと思えることや魅力を、私なりの方法で伝えていきたいと思っています。



取材日:令和5年5月29日
記事:創立35周年プロジェクト班


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