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『天気の子』(アニメ映画 感想2回目)

視聴環境:Amazon prime video

※ネタバレします。


【内容】
雨降りを晴れにする力を身につけた少女の陽菜と、家出少年の帆高が、天気を晴れさせることを商売するようになり世界を救う…


【感想】
『天気の子』、観直していました。(ここでの感想は、2回目になります。)
もう何度か観ていますが、今回はなんとなく感じていた映画の狙いが、自分なりにより具体的に理解出来た気がしました。


映画冒頭から、やりたいことを宣言するような映像になっているなあと…
様々な雨水の表現、それを特異なキャラクターのように表現していると感じました。
主要な男と女それぞれの登場シーンと、これ以上に劇的な場面からのまったりとした展開…
都心にある朽ちたビルの屋上の神社から、海上の船内、新宿歌舞伎町の雑踏…

よくよく観ている、出て来る街の看板がかなり実名だったりしているのも、こうしたアニメにしては異例だなあと…
意図的に、現代日本をアニメーションとして定着させようとしてのだと感じました。

初取材に行く占い師で、晴れ女や雨女といった話が出て来て、ギャグぽく物語の先の展開を提示していたり…

冒頭17分くらいで、冒頭2シーンの見せ場を始め、一気に物語のセットアップを済ませていました。

当時の日本の風俗をこれでもかと描いているのも、新海誠作品が進めていった日本のアニメージュの方向性の1つだなあと、改めて思いました。

その他にも、様々な場面の心情表現を、水を使って印象的に描いているのがよくわかりました。

ヒロイン役の声優の森菜々が、凄く上手くて魅力的で、このアニメの魅力に貢献しているのだと感じました。
その他の俳優の演じている声、小栗旬とか本田翼どれも魅力的だなあと…
脇役で出て来る倍賞千恵子や平泉成も、作品に深みや説得力を出していると感じました。
そもそも、新海誠作品は、声優が魅力的だったりすると思いました。声優さんへの演技の付け方、上手いのだろうなあと…

主人公の帆高が冒頭に乗っていた都バスは、わりとよく知っているバスだったり…
ヒロインの陽菜の住んでいる田端駅は、家族が住んでいたことがあり、何度も行ったことがあり…
冴えない生活圏が、新海誠がアニメにすることで、こんなにも魅力的になるんだなあと思ったりしました。
馴染みの冴えないなんなら小汚い空間が、新海誠作品で描かれることで、なんかちょっと魅力的に見えてくるような気がします。
美しく魅力的な街の描写、魅力的なキャラクターによる魅力的なストーリー…
もしかすると、ここ数年、池袋が若者に人気になって来たっていうのも、池袋を度々魅力的に描いて来た新海誠作品の影響があるのかも知れないなあと…
あと、大して見るものもない池袋のサンシャイン通りなんかに外国人観光客が訪れているのを見たりしていて、首を傾げていたのですが、そっち方面の影響もあるのかも知れないなあと…

回を重ねるごとに、ギャグも面白くなっているし…

ザックリとプロットを書き出してみたのですが…
『雨降りを晴れにする力を身につけた少女と、家出少年が、天気を晴れさせることを商売するようになり世界を救う。』
プロットだけ書き出してみるとわりと子供向けのお話みたいな話になりそうだなあと…
売春をしようとする少女と、拳銃を抱えて街を徘徊する青年、他の作家が映画にするのなら、アート映画みたいな映画になったりするような内容だなあと…
アート映画ぽいような映画にしようとしてもどうしてもある種の健全性や大衆性を持ってしまうという新海誠作品の特徴が、より良い方向に進化させていると感じました。


キャラクター造形に関しても、改めて見直してみると、よく考慮されているなあと感じました。
帆高と社長の圭介のキャラクターの位置付けとしては、帆高の将来が圭介であるという設定になっているとか…物語後半、平泉成演じる刑事が帆高と陽菜との関係性の話をしているのを聞いて涙を流す。これは、2人の関係を圭介と妻との関係性を思って感極まっているということなのだなあと…
圭介の娘が、気候の影響を受けやすい喘息持ちとか…
逃亡劇の最中、小さい弟がいるとことで、プラトニックな展開になっていくとか…
家にいることの出来ない子供が、街に徘徊するとか、今わりと社会問題とし取り上げられているなあとか…『君の名は。』で取りこぼしていたことを、物語に盛り込んでいったんだなあということを改めて感じました。


1時間18分、残り30分くらいでいったん物語が終了していて、『君の名は。』よりも前の新海誠作品なら、陽菜が人柱として消えて終わるという展開で終わったところなのだと感じました。
そこから、更なる展開があったからこそ、日本だけではなく世界的なヒットになったんでしょうが…
自分の作品を批評的に下敷きにして、より楽しめてカタルシスのあるエンタメ映画にしているのだなあと…若者が全力疾走して問題解決するという日本映画的な展開にしていく…後半30分の展開は全然理屈は通っていないし、感情的な流れだけの強引な展開…そこを作り込まれた映像と音楽で、一気に魅せている。
ただ不思議なのは、映画の制作と同時進行で作っているはずなのに、映画のストーリーと音楽の歌詞とのずれが不思議な相乗効果を産んでいるなあと…

ラストは人柱となった陽菜を取り戻したことで、世界は雨降りの世の中に戻ってしまったというのは、もともとの新海誠的な展開や世界観を一旦エンタメ作品的にした上で、再び更に新海誠作品的な世界にしているという不思議な着地にしているのだと感じました。
ラスト、陽菜たちのせいで街が水没して慣れ親しんだ街に住めなくなった人がいる描写とか入ったり…
新海誠的な作品主義とエンタメの融合を目指した作品なのだと思いました。

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