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『想い出づくり。』(ドラマシリーズ 〜7話)


視聴環境:U-NEXT

【内容】
1980年代初頭の東京を舞台に、詐欺師に騙されることで知り合った3人の23歳の未婚女性達を描いたドラマ。

脚本:山田太一

出演者:森昌子・田中裕子・古手川祐子・柴田恭兵

※ネタバレします。


【感想】
ラジオの山田太一特集で、このドラマを紹介しているのを聴いて、観てみることにしました。
不勉強で、この顔ぶれでドラマ撮っていたのを知らなかったですが、ものすごくいい役者を組み合わせているなあと感じました。

同じく山田太一の脚本の『ふぞろいの林檎たち』の1年前に放映されたドラマとのことでしたが、そう思って観てみると『ふぞろいの林檎たち』の前哨戦的な作品という感じがしました。

山田太一の脚本は、当時の社会とか時代を描いていて、ドキュメンタリーを観ているような気分になりますね。
人間を描くというものの模範解答、というかその真摯な姿勢を感じます。
子供の頃、こうしたリアリティのある現代日本を描いた作品は、重苦しい気分、なにか大人になるというのはこんなに困難で厄介ごとばかりがあるのかと思って、あまり積極的に観ていなかったような気がします。

観ていて、このドラマの現実的なこと、いたたまれない感じは、なかなかでした。
気に食わない上司のお茶に唾を入れるOLとか…
アンケートを装った詐欺師とか…
上司に罵倒されて女子トイレで泣くとか…
テレビのトーク番組で、女性は25才超えるとクリスマスケーキと同じで嫁の行けなくなるとかといったことを平然と言ってるとか…
ちょっと部屋に入るだけと言って、主人公女性の部屋に入った柴田恭兵が、ガッツリレイプし始めるとか…
(『あぶない刑事』以後の柴田恭兵ならあり得ない展開だなあと思ったりしました。まあ、コンプライアンス的に今こんなカジュアルな感じでレイプを描くこと自体NGでしょうが)

正直、1話目を観続けるのが結構しんどかったですが、2話目の途中から面白くなって来ました。

しかし、今は老婆役をやるようにもなった田中裕子の若い頃は、すらっとした知的な美人だったのだと、改めて思い出したりしました。

この作品みたいに80年代初期のドラマは、その後のトレンディードラマみたいに、どんだけ給料貰えば住めるんだみたいなマンションや生活とかとは違い、木造アパートで畳敷の一室に一人暮らしする女性たち。

柴田恭兵のちょっと胡散臭い感じ(失礼(^^))が、詐欺師役にとても良くハマっていました。

とは言え、日本経済が昇り調子の感じが出ていました。あと、日本全体の平均年齢が若い感じもあるなあと…
出てくる東京の街がザッ80年代って感じで、懐かしいと感じました。

あと、出て来る男がどいつもこいつもろくでもない奴らばかり、男の身として観ていると、なんだかいたたまれないなあと思いました。

面白いのですが、内容というかドラマが詰まっていて、どうも一気見する気にはならない感じでした。多分、放映していた当時の週1くらい観るのが、一番最適なペースなのだろうなあと思いました。

本当にリアリティを感じますね。80年代初期の東京の片隅で同じような光景が繰り広げられていたんだろうなあと…
脚本の山田太一は、かなりしっかりと取材してから脚本に取り掛かると聞いたことを思い出しながら観ていました。
もしかしたら、田中裕子演じるOLが、上司の既婚男性に一芝居というか物凄い数の芝居を打たれて、不倫関係に持ち込まれるエピソードがあるのですが…
実際の取材でそうした話を聞いたことが元になっているのではないかなんてことも考えたりしました。

キャラクターやエピソードなど、ちょっとしたこと一つとっても、かなり語り続けられるドラマだと感じました。
単純に悪い役回りの人間を、悪い奴とか酷い奴として描くのではなく、ちゃんとした人格のある人間として描いていて、その人がいる社会的なポジションなども反映しているなあと感じました。

メインキャストである森昌子演じる工員に付きまとい、ストーカー行為を繰り返す社長の男性は、今女性に言ったら完全にアウトなセクハラ発言を連発しつつ、一代でそれなりの会社を作り上げた人であるという説得力のある人物造形になっていたり…

というか、メインの3人組の女性が、不倫やストーキング行為、レイプと、みんな酷い男に付き纏われていて、なになかな状況だったりするなあと…

内容が濃く、一気見が出来ない話で、週1話観るくらいでちょうどいいかなあと思いながら観ています。
ちょうど今、ドラマの半分にあたる7話目を観終わった感じです。
登場人物と共に人生を歩いているような感じでしょうか…
山田太一脚本のドラマは、『ふぞろいの林檎たち』を始め、人生のままならなさを描いていて、観ているものを自分なりに消化するのに時間の掛かることを語っているのだと思いました。
この作品を観終わったら、また別の山田太一脚本の作品を、じっくりと観ていきたいと思います。

https://www.tbs.co.jp/tbs-ch/item/d0021/

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