テニス上達メモ016.テニスは左右より深さ。「距離の感覚」習得法!
▶ジャストオーバーがなくなるインスタントな方法
「スピン系ショットは『まったく逆のイメージ』だと上手くいく」を実践した方から、次のようなご質問をいただきました。
スイングが力強く改まったそのぶん、従来の感覚のまま打つとオーバーしてしまうというわけですね。
こういう場合はシンプルですが、明日の試合に間に合わせたいなど即効性を求めるならば、次の方法お試しください。
▶オーバーする気がしない
「ポジションを50センチ下げる」。
ベースラインから50センチ離れるだけでも、感覚的には「相手コートが随分遠いな」と感じると思います。
この実感があったらしめたもの。
力いっぱい打ってもオーバーする気がしないから、思い切って跳ねさせるイメージの、力強いスイングのまま修正できます。
サーブの練習というと、多くの場合は規定のベースラインから打つケースがほとんどでしょう。
だけどたとえば、もっと後方のバックフェンス際から打つなどするのも、威力や確率を高めるには有効です。
「オーバーする気がしない」という新たな体験が、イメージの書き換えに役立つのです。
▶深さをコントロールするための「段階的練習法」
あるいは練習としては、サーブをベースライン内から打つ。
さらにベースラインとサービスラインの中間辺りから打つ。
もっとポジションを上げてサービスライン付近から打つのも、深さをコントロールできるようになる段階的練習法と言えます。
一般的なテニス指導でも初心者にサーブを教える場合は、狙う場所に近づいてサービスライン付近から打ち始める段階的な取り組みが行われます。
いきなり規定のベースラインから相手のサービスボックスを狙うと、遠くて難しいからです。
そして徐々にポジションを下げていく練習をしますが、この逆をあえて、「距離の感覚」をコントロールするために取り入れるのです。
▶「グラブトス」も「遠投」もするから距離感が磨かれる
そんな規定外のでたらめを試すと「距離感が狂う」と思われるかもしれませんが、さにあらず。
野球であれば、近い距離だとグラブトスもするし、遠い距離だと遠投もするから、塁間での正確なコントロール力も身につきます。
イチローの「レーザービーム」が、力強く正確なゆえん。
塁間でしか正確にボールコントロールできないわけではありません。
つけ加えて言うと、そのイチローがよく披露する遊びのような「背面キャッチ」なども、試合本番ではやらないから無駄なのではなくて、後述する「間隔の感覚」を磨いたりするのに打ってつけです。
▶「新たな発見」「違う感覚」の引き出し方
またこれは、サーブに限った話でもないのです。
一事が万事に流用可能。
たとえばストロークを、それが適切かどうかは別にして、いつもベースライン上から打っている一般プレーヤーは少なくありません。
もっと下がって打ってみる、あるいはもっとポジションを上げて打ってみるなどすると、新たな発見や今までとは違った感覚が出てきます。
▶「デッドゾーン」が「ライフゾーン」になる
ボレーも、たとえば通称「デッドゾーン」と呼ばれるベースラインとサービスラインの間の「中途半端」なポジションから打ってみる。
一般的には、ストロークを打つにしてもボレーを打つにしてもどっちつかずで、そこにいると注意されるゾーンです。
しかしそこは「デッドゾーン」どころか、実際にプレーしてみると快適極まりない「ライフゾーン」だと言ったのは、全日本室内複優勝などの実績がある田村伸也プロでした。
ストロークで対応しようとすると後方へ追いやられそうな相手の深いボールには、ノーバウンドカットのロングボレーでらくらくインターセプト。
サービスライン付近に入ってきた相手の浅いボールには、攻撃を仕掛けたりネットアプローチに出たりするチャンス。
あるいはドロップ系の短いボールにも追いつけるから、取りこぼしもなくなります。
確かにシングルスでは、相手から左右に角度をつけて打たれるとカバーし切れないきらいがあるから、「デッドゾーン」かもしれません。
だからといって経験しないでいると、いつまで経っても「ライフゾーン」の存在に気づけないのです。
▶「一筋」は、効率的なようで効率的ではない
規定のポジションにとらわれず、さまざまな距離を打ち分ける練習をすると、結果的に規定の距離をより正確にコントロールできる高度なスキルが備わります。
広義ではこちらの話に通じるでしょう。
テニスが上手くなりたいからといって、「テニス一筋」は効率的なようでいて、能率的ではないのでした。
ほかのスポーツのいろんな経験がプレーヤーの器を大きくし、テニスに役立てられるという内容。
それと同じように、サーブは一定の距離でしか打たないからといって定位置から打つ練習ばかりを繰り返していると、確かに現状維持で「安定はする」ものの、伸びしろが限られます。
バックフェンス際からもサービスライン付近からも、いろんなポジションからサーブを打つ経験を重ねると、威力を高めたり、より細かくコースを狙えたりする感覚を培えます。
▶「好転反応」はこれから飛躍する兆候
距離を打ち分ける練習過程では確かに、ご相談いただいたように、サービスボックスに入りにくくなるため悪くなったような気もします。
しかしそれは「好転反応」。
さらに向上していくために、いったんバネが沈み込んでから飛躍する準備のステップとなっています。
逆に言えば、新たな経験が加わらない限り、好転反応も起こりません。
かの「20世紀最高の物理学者」とも評されるアルベルト・アインシュタインは、「同じことを繰り返しながら違う結果を期待する人」のことを、奇人だと定義したそうです。
この定義になぞらえると、いつもと同じ練習を繰り返しながら違う結果(上達)を期待するテニスプレーヤーは、アインシュタインから奇人と認定されてしまいます。
▶ネズミも「間隔の感覚」を身につける
なぜいろんな距離を打ち分ける練習をすると、ピンポイントのコントロール精度を追求できると言えるのでしょうか?
音程を身につける音感と同じです。
ドの音を知るには、それよりも高いレの音や、それよりも低いシの音を聞く。
さらに細かく刻んで、フラットやシャープの音を聞き分けたりすると、より「間隔(距離)の感覚」が研ぎ澄まされます。
ドだけを聞いていると、その音が高いのか低いのか分かりません。
というよりも、レやシが出てくるから初めて、音程として位置づけられます。
それはネズミでも起こる反応です。
ネズミはもともと、音程を区別できません。
しかしドとソといったように「間隔(音程)の感覚」を与えて訓練(経験)すると、やがてドとド♯のような隣り合う近い音も聞き分けられるようになるそうです。
▶「感覚の感覚」で背面キャッチも簡単に
距離の本質というのは、つまるところ「間隔」です。
地球と太陽の「距離」というのは、地球と太陽との「間隔」にほかなりません。
ですから距離感を上手く測るには、「間隔の感覚」を身につければよいのです。
背面キャッチを上手く行うには、落ちてくるボールと自分の背中との「間隔の感覚」がつかめれば、案外簡単です。
それはテニスでインパクトを直接見なくても打球できるのと同じで、背中側のボールは捕球する瞬間まで見えなくても、落ちてくる先の弾道予測が働くから、「間隔の感覚」さえ合っていれば捕れるのです。
また捕る練習をしていると、「間隔の感覚」が磨かれます。
▶これで「ほとんど入る」計算になる
今回ご相談いただいたケースでは、スピンサーブがフォールトするといっても、ボール1~2個分のジャストオーバー。
50センチ後方から打てば、ほとんどのボールがサービスボックスに入る計算になります。
しかもイメージが書き換わって、打ち上げるエネルギーは高まっているはずですから、ネットフォールトもほとんどないでしょう。
とはいえ50センチ下がればそのぶん、相手レシーバーに余裕を与えてしまいます。
将来的な課題としては、上記の練習を通じて距離のコントロール感覚を豊富に経験し、規定のポジションからでもスピンサーブを入れられるよう、「間隔の感覚」を一層研ぎ澄ませていってもらえればと思います。
即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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