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質問070:ひたすらボールに集中すれば大丈夫?

1ヶ月後に大事な大会があるのですが、どうしてもミスを気にしてしまいます。あと1ヶ月でミスを気にしないようになれるか不安です。
ひたすらボールに集中していれば大丈夫でしょうか?

回答
おっしゃるとおり、ひたすらボールに集中すればよいのですけれども、慣れないうちは、これが簡単なようでいて、なかなか難しいのです。
 
なにしろ「ボールに集中しよう」と考えた時点で、それは「集中ではなくなる」からです。
 
ですから、集中についての理解を深めつつ、集中力の鍛え方、集中状態に入るためのコツをつかんでおくと、便利です。
 
「集中力の鍛え方なんてあるの?」「頑張って集中するしかないのではないか?」などと、いぶかる向きも、あるかもしれません。
 
だけど、頑張るのは逆効果。
 
こちらでご説明した「努力逆転の法則」が働いてしまいます。

本稿では、学校でも教えてもらえなかった「集中」について、エビデンス・ベイスト(効果実証済み)の知見を踏まえつつ、テニスにも応用できるようアレンジして、詳しくお伝えしていきます
 
集中のトレーニングとして、地味だけど「効く」のが、坐禅です。
 
「テニスの上達と何の関係があるの?」と思われるかもしれませんけれども、取りあえずこのまま読み進めてみてください。
 
近年、欧米では「マインドフルネス」として注目を集め、グーグル社など大手企業の研修でも取り入れられました(※注1)。
 
こちらでもご紹介したアップル創業者のスティーブ・ジョブズも、禅に傾倒し、実践していたことはよく知られています。

坐禅というと、仰々しく構えがちかもしれませんけれども、今すぐ、無料で、だれでもできる手軽さです。
 
そのスタートでありゴールは、「今・ここ・この瞬間に集中する」、ただそれだけ
 
初歩的な手順をご案内すると、「今・ここ・この瞬間」に五感を総動員して、まさにリアルタイムで体の中を吹き抜ける「呼吸」を感じます。
 
リアルタイムの呼吸は、「今・ここ・この瞬間」だけ、感じられます
 
「さっきの呼吸は浅かったなぁ。次の呼吸は深くしよう」などとは、「考える」ことはできても、実際に「感じる」ことができるのは、今だけなのです。
 
換言すると、感じているとき、考えられません
 
考えないから、不安もないし、貪らないし、怒らないし、迷いもない。
 
ですから呼吸を感じているその瞬間、そこは「悟りの入り口」なのです。
 
さらに言うと私たちが「感じる」ことができるのは、「今」だけです。
 
昨日の匂いを今、嗅げないし、2秒後の景色を今、見ることも、できません。
 
かけがえのない「今」は、「感じる」しかできないのですね。
 
一方、「考える」ことができるのは、必ず過去か未来について
 
そして過去や未来を、私たちは生きられません。
 
そうである以上、考えている最中は事実上、「生きていない(死んでいる)」のも同然なのです。
 
ですから、リアルな味覚、色覚、聴覚がみなぎらず、味わえないし、見えないし、聞こえないから、日常生活がすっかりバーチャルな思考に乗っ取られて、抜け落ちる。
 
「生きている充実感」が感じられないのは、そのせいなのです。
 
五感で感じるから、生きている実感が湧き、充実する
 
ところが坐禅中も、「そういえば、メールの返信しなきゃ!」とか、「あのトラブルはどうなったっけ?」とか、さまざまな自動思考(雑念)が、絶えず湧いてきます。
 
あるいは「こんなことして、テニスが上達するのか?」「何の得があるのだろうか?」などという損得勘定も、始まるかもしれません。
 
煩悩だらけの自分に、嫌気が差します(笑)。
 
雑念がよぎり、意識は思考へ逸れます。
 
だけどここからが、坐禅あるいはマインドフルネスの真骨頂
 
逸れたら「ダメ」なのではなくて、「チャンス」なのです
 
なぜなら思考へ逸れた意識から、グイッと五感で感じる感覚へと引き戻す単純作業の繰り返しにより、集中力というのは、確実に鍛えられるからです。
 

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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero