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平成生まれのワイが、平成の不倫泥沼系ドラマをレビューしたる

私は平成生まれなのだが、小学生から高校生にかけての間、大人の泥沼、つまり不倫系のドラマを実に好んでよく見ていた。高校生になれば物心もついているのでともかく、小学校時代はクラスメイトの間で大流行していた「花より男子」などの若年層向けドラマには目もくれなかった。幼い私に一体何があったのだろうか。

大人になり、もう一度観ることができたものもあったので、面白かったものを私なりの見解も交えて皆さんにご紹介したい。
※以下、一部敬称略


不信のとき 〜ウーマン・ウォーズ〜
(2006年)

〈あらすじ〉
書道家の父のもとに生まれた道子(米倉涼子)は大手広告会社に勤める義雄(石黒賢)を夫に持つ専業主婦。義雄の一度目の浮気をきっかけに、容姿にも気を遣い魅力的な妻でいようと努めるが、子供ができないことに悩んでいた。
一方、夫の義雄はある夜、銀座のクラブで出会ったママ・路子(松下由樹)と肉体関係を持ってしまう。いずれ店を辞めブティックを開くのが夢だと語る路子を義雄は応援し、関係を持ち続ける。
ある時、道子の父の弟子であった近藤(小泉孝太郎)が、道子自身の書道の才能にも注目し、彼女のキャリア生成をサポートするようになる。鬱屈した主婦業から解放され新鮮な気持ちで仕事に取り組む反面、妊娠できなければ夫は再び浮気するのではないかという不安に駆られ、自分に女としての価値を見出せない道子。近藤はそんな道子に寄り添う。
そんな中、路子が自身の妊娠を義雄に告げる。出産に意欲を示す路子に、義雄も妻の道子に隠れて彼女を支えると約束した。
しばらくすると、あれほど不妊に悩まされていた道子の方にも突然の妊娠が判明し、狼狽する義雄。大人達の思惑が交錯する中、二人の子供達が生まれる…。

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米倉さんと松下さんという、演技力オバケの美しい二人が瞳に激しく炎を滾らせる姿は、不倫系ドラマとしては最強の絵面である。
又、上記で紹介した人物以外にも、道子の家に家政婦として出入りする和子(杉田かおる)や、義雄の仕事仲間で自身も十代の少女と不倫をしている小柳(石田純一)など、鍵となる重要人物が多い。

色に狂い、女に安らぎだけを求める男達の浅ましい姿。「男ってみんなこんなアホなのか?」と言いたくなるほどに馬鹿馬鹿しい。しかし、真面目か不真面目かという違いだけで、馬鹿馬鹿しいのは男だけでなく女達もまた同じであった。
先述のあらすじだけを見れば、「愚かな男が愛人と正妻の二人ともに子を産ませ修羅場となる」といったありがちな物語のように思えるが、実際はそうではない。物語の中盤から、何もかも分からなくなるのだ。最後まで真実を裏付ける描写はなく、謎を残したまま幕を閉じてしまう。どのような解釈もでき、それを想像することもまたこのドラマの醍醐味であろう。
女達が本当に手にしたかったものは何だったのか、最後に「誰を」敵とするのか。目が離せなくなる作品である。

蜜の味 〜A Taste Of Honey〜
(2011年)

〈あらすじ〉
岡山の片田舎のオリーブ農家で育った直子(榮倉奈々)は、父の歳の離れた弟・雅人(井浦新)を「雅兄ちゃん」と呼び、叔父と姪という関係であると知りながらも恋心を抱いていた。医師になるべく上京した雅人を追い、猛勉強の末に彼と同じ医大へ入学する。
研修医となった雅人に会えるのを心待ちにしていた直子だったが、彼には既に、同期の研究医である彩(菅野美穂)という秀才の恋人がいた。愛し合う二人の様子を目の当たりにし、強い嫉妬心を抱く直子。それでも彼らの結婚を機に、彼への気持ちは忘れようと一度は決意するが、叔父として何かと気にかけてくれる雅人に気持ちが揺れ動く。
一方の彩も、直子が雅人に姪らしからぬ感情を抱いていることに勘づいており、彼女を危険視する。そんな彩の主張を雅人は理解できない上に、家庭での時間も蔑ろにし仕事に没頭する彼女との間にすれ違いを感じていた。
そんな夫婦生活に疲れた雅人を心配する直子。彩が直子に対し苛立ちを募らせる中、彼の心は次第に直子に傾いていく…。

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放送当時、他人の夫に手を出しておいて「私はただ雅兄ちゃんが好きなだけなの!それの何がいけないの!?」とでも言いたげな直子のすまし顔に苛立った視聴者は私だけではないはずだ。中盤では成長した直子にできた彼氏(溝端淳平)も登場し、雅兄ちゃんとの仲について激怒されるシーンがあるが、その時でさえ当事者のくせに雅兄ちゃんの後ろに隠れて半泣きという始末である。大学のサークルにいれば、間違いなくクラッシャー的ポジションで同性からの顰蹙を爆買いするであろう。

真人間である彩が憤慨する気持ちに心底から共感するものの、周りも引くほど暴走し鬼女と化していく姿には恐怖すら覚える。菅野さんが見せる、あの蛇のような眼光が本当に怖い。プロトンビームでも出そうである。
直子も直子だが、それもこれも全て、思わせぶりな態度を振り撒き、自分の妻と姪に対しきちんと向き合わなかった雅兄ちゃんが悪いのだ。

いつの時代も、叶わぬ恋や禁断の恋というのは、当事者らが最も悩み傷ついているものだ。しかしこのドラマでは違う。まともな人々ばかりが苦悩し傷つけられ、怒りで人格を捻じ曲げられ、人生をも狂わされている。その張本人である当事者らは「誰にも認めてもらえなくていいモン」などと言って開き直っている。なんという面の皮の厚さであろうか。あんた達がよくても周りはよくないのだ。
物語が進むにつれ、男女らの関係はますます複雑に絡み合う。周りの人々を不幸にしてまで、二人が最後に手に入れようとする幸福とは一体どのような形のものなのか。ツッコミどころは大いにあるが、見届ける価値は十分にある作品だと言える。


美しい隣人(2011年)

〈あらすじ〉
絵里子(檀れい)は、大阪へ単身赴任中の夫の帰りを待ちながら、5歳の一人息子を育てる専業主婦。以前、息子が迷子になったのと同時刻に別の男児が池で溺死する事故があり、息子かと思い肝を冷やした経験から、息子の動向には人一倍敏感であった。
そんな絵里子の家の隣に、沙希(仲間由紀恵)という美しい女性が引っ越してくる。欧米人の夫は仕事で海外にいるため別居していて、絵里子と同じく一人だと話す、聡明で快活な沙希。
絵里子はすぐに彼女と打ち解けるが、彼女と関わり始めてから、親しかったママ友に無視されるようになるなど、不可解な出来事が続く。
一方、絵里子の夫・慎二(渡部篤郎)は大阪のバーで、ある女性に出会う。不思議な魅力をまとい慎二を惑わせるその女性は、なんと沙希であった。
様々な手を使い絵里子の周辺の人物に近づく沙希。その目的には、あの男児の溺死事故が大きく関係していた…。

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本作品は先に紹介した二作品と比べると、不倫に重きを置いている内容ではないが、かなりスリリングなサイコパス系サスペンスである。とにかく沙希という女が怖い。人間、本当に望むもののためなら何にでもなれるものだろうか。
部下の女性からのアプローチにも靡かない妻一筋の男性が、バーで出会っただけの女に、彼自身も何故か分からぬままコロリと惚れてしまい、罪悪感を滲ませる様子は非常にリアルで、見ている方も胸が痛む。

不倫が明るみに出た時の夫婦の修羅場も見ものである。恐らくこの絵里子という女性は、常に夫や息子から必要とされることを存在意義としていたのであろう。その為、夫が他の女に靡いた途端「私はもういらないの!?」とヒステリーになる。女として強く生きていくには最も苦しむ性質の一つではないだろうか。
母としても女としても苦労を知らず生きてきた、世間知らずでか弱い女。傷心の末に気の触れた、“ある意味で”母性しかない女。この二人が対峙する時に何が起こるのか、ハラハラさせられるに違いない。

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いかがだったろうか。私のお恥ずかしい拙文で、作品の本当の本当の良さや魅力が全てお伝えできず残念だが、どれも必ず視聴者を夢中にさせる作品であることは断言したい。

幼少期、親や先生から「ひとのもの勝手にとっちゃいけません」と教えられた人も多いのではないだろうか。それは奪ったり盗んだりという物理的なことだけでなく、このような物語の当事者にならないようにという意味も含んでいたのであろう。
「〇〇くんの心はモノじゃない!」的なセリフはどこぞの携帯小説で聞いたことがあるが、そのような綺麗事で他所様の恋人及び配偶者に手をつけることは許されない。モノだろうがヒトだろうが、駄目なものは駄目なのだ。

とは言え、もしたまたま落とし物を届けに入った交番で、青い制服に身を包んだ藤原竜也ないし山田裕貴にうっかり出くわしてしまった場合、私も禁忌を犯してしまう可能性は大いにあるかもしれないと、今から全く要らぬ心配をするのであった。

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