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福岡伸一、西田哲学を読む――生命をめぐる思索の旅 動的平衡と絶対矛盾的自己同一 Tankobon Hardcover by 池田善昭 (著), 福岡伸一 (著)

福岡伸一、西田哲学を読む――生命をめぐる思索の旅 動的平衡と絶対矛盾的自己同一
Tankobon Hardcover  by 池田善昭 (著), 福岡伸一 (著)

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$解説
西田哲学と福岡生命科学は驚くほど似ている!
生命の定義と知の統合に向かう京都学派の記念碑的成果!
「動的平衡」概念の提唱者・福岡伸一氏(分子生物学者)が、西田哲学の継承者・池田善昭氏(哲学者)を指南役に、専門家でも難解とされる西田哲学を鮮やかに読み解く。その過程で2人の碩学は生命の真実をがっちり掴む1つの到達点=生命の定義=にたどり着く……。
西田哲学を共通項に、生命を「内からみること」を通して、時間論、西洋近代科学・西洋哲学の限界の超克、「知の統合」問題にも挑んだスリリングな異分野間の真剣“白熱"対話。

●ピュシスの側からみた動的平衡(『生物と無生物のあいだ』理論編=福岡氏書き下ろし=)
●福岡伸一抄訳西田幾多郎「生命」、池田―福岡往復メール、書き下ろし(プロローグ、エピローグ)も収録!

★動的平衡の数理的概念モデル、「ベルグソンの弧」を掲載!

「本書のテーマは、ロゴス(logos、「言葉」「論理」の意)対ピュシス(physis、「自然」の意)である」 福岡伸一


【推薦のことば】
「あの難解な西田哲学が生命の本質に迫っていた。気鋭の生物学者と西田の弟子が解き明かす、現代の科学と哲学が見逃した世界の謎。」――山極壽一氏(京都大学総長/霊長類学者)

「本来の哲学、科学が始まる場所としてのピュシス。そこに還ってこそ掴める生命のダイナミズムが、重ねられる対話を通して体感できる、驚異の書。」――佐藤美奈子氏(編集者/批評家)


【メディア掲載情報】
●2019年2月1日 『婦人画報』2019年3月号「坂本図書」コーナーで紹介されました(評者・坂本龍一氏)。
●2018年8月18日 日本経済新聞夕刊「遠みち近みち」コーナーで紹介されました(編集委員・毛糠秀樹氏)。
●2017年12月26日 ★紀伊國屋じんぶん大賞ベスト8選出!
●2017年12月12日 WEBRONZA 特集「2017年 わがベスト3」の中で紹介されました(佐藤美奈子氏選)。
●2017年11月6日 『週刊東洋経済』に書評が掲載されました(「日本的な思想の現代的な意味を問う」、評者・柴田昌治氏、2017年11月11日号)。
●2017年10月31日 福島民報「やっぱこの本だね」コーナーで紹介されました(「県内在住作家が薦める"今"読みたい本」、評者・玄侑宗久氏)。
●2017年10月29日 東京新聞書評欄「3冊の本棚」コーナーで紹介されました(「学びの扉を開く」、評者・中江有里氏)。
●2017年10月4日 『週刊新潮』に書評が掲載されました(「読む喜びを味わえる生物学者の哲学への挑戦」、評者・渡邉十絲子氏、2017年10月12日号)。
●2017年9月10日 『中央公論』2017年10月号「この科学本が面白い! 」コーナーに書評が掲載されました(評者・山極壽一氏)。
●2017年9月7日 新文化「注目! この本」コーナーで紹介されました(「重なり合う二つの知の面白さ」)。
●2017年9月3日 読売新聞書評欄「記者が選ぶ」コーナーで紹介されました。
●2017年8月26日 図書新聞に書評が掲載されました(「ご褒美のような一冊、贅沢なひと時」、評者・allblue300氏、2017年9月2日号)。
●2017年8月21日 『週刊朝日』「ベストセラー解読」コーナーに書評が掲載されました(「生命科学と哲学」、評者・永江朗氏、2017年9月1日号)。
●2017年8月7日 WEBRONZA「文化・エンタメ」コーナーに書評が掲載されました(「西田哲学を現代にひらく」、評者・佐藤美奈子氏)。
●2017年7月18日 『週刊エコノミスト』「話題の本」コーナーで紹介されました(2017年7月25日号)。
●2017年7月15日 『週刊ダイヤモンド』「知を磨く読書」コーナーで紹介されました(「日本人の思考の鋳型」、評者・佐藤優氏、2017年7月22日号)。

【もくじ】
プロローグ――西田幾多郎の生命論を解像度の高い言葉で語りなおす 福岡伸一

ダイアローグ
第1章 西田哲学の森に足を踏み入れる

第2章 西田哲学の森に深く分け入る

第3章 西田の「逆限定」と格闘する

第4章 福岡伸一、西田哲学を読む

第5章 動的平衡と絶対矛盾的自己同一の時間論

第6章 西田哲学をいまに活かす

理論編
ピュシスの側からみた動的平衡 福岡伸一

エピローグ――生命を「内から見ること」において統合される科学と哲学 池田善昭
旅の終わりに 池田善昭

$読者レビューから引用・編集
ピュシス(自然=本来の実在)は常に隠されており、矛盾や相反するものが往々にしてひとつになっている。
一方ロゴスの立場は、自然は人間の理性によって理解し尽くせると考え、論理矛盾がない方向を求める。
昔の哲学はピュシスを相手にしていたが、ソクラテス・プラトンの時代に、理性に合致するもののみを探求するロゴスの立場へと転換。
 ピュシスをロゴスの力で合理主義の支配下においてしまったために、自然(ピュシス)を全体としてとらえる目が失われてしまった。
 西田幾多郎の哲学は、ピュシスの世界に立ち戻ろうとしたものだという。
 西田の本は、「絶対矛盾の自己同一」とか「逆限定」とか、「時間即空間」「空間即時間」とか、術語が難しくて理解できなかった。
 この本は、哲学者の池田が、福岡伸一の「動的平衡」という生命論のなかに西田哲学を見出したことで実現した対談で、福岡がその生物学の知識をもとに、池田から西田の思想の教えを乞う形。
 たとえば「逆限定」について、池田は木の年輪を例に挙げる。環境や時間の作用によって年輪は形成されており、年輪は環境に「包まれている」が、逆に、年輪によって「時間や環境」も包まれている、という。
 福岡は「環境が年輪に影響を与えるのはわかるけど、年輪が環境に影響を与えているわけではないから、逆限定とはいえないのではないか」と疑問をぶつける。
 それに対する池田の説明は…いまひとつ理解できない。
 湖の底にできる年縞は、風や雨によって崩れてしまう。生物ではないから、エントロピー増大の法則に抗えない。しかし木の年輪は、エントロピーに抗って、年輪をつくりあげていく。時間(環境)をも包み込んでいく、という。難しい。
 福岡は自らがロゴスにとらわれすぎていたと反省し、池田の教えによって西田哲学を理解し、そこからは議論がスムースに流れはじめた。私にとっては難しさが増してしまった。
福岡は、生命とは何か、という難解な疑問に対して、動的平衡という概念によって回答を与えた。すべてのモノは無秩序に向かって壊れていく、というエントロピーの増大の法則には例外はない。
 だが生物は、エントロピー増大によって壊れるよりも早く、先回りして自らを壊す(分解)ことで時間を稼ぎ、それによって合成を促し、生物としての形を維持する。生命を再構成する合成と分解という矛盾するものを同時に展開するのが生命の本質だという。
 西田の「絶対矛盾の自己同一」「逆限定」はまさにそのことであり、矛盾するものが同時にあるという状態こそが、生物の世界(ピュシス)の本質である、という。
 そこから「時間」をめぐる議論に突入する。生命がエントロピー増大を先回りすることで「時間」が生みだされる。時間というのは、過去から未来へ流れるだけでなくて、未来からまわってくる時間もある。
 「物理的な時間」というものは本当は存在せず、生命がその営みを通して、ある種の脈動として時間を生みだしている……
 頭がこんがらがってくるが、その時間感覚は、仏教とか、南方熊楠の南方マンダラに近いような気がする。
観察しているもの自体になってそのものを見る立場を西田は「直観」と呼び、直観の先にある、ありのままの世界(ピュシス)を感じることが「純粋経験」であり、その実在を知ることが「自覚」と言う。
 自然農法家の福岡正信さんは「科学という分別知では生命や自然のことはわかるわけがない」と言っていたが、ロゴスの限界とピュシスを直観する大切さを説いていた。


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Media Publication Reviews and More

生命科学と哲学

意味不明の図形に1本の線を引くことで、隠れていたものが浮かび上がってくる。福岡伸一と池田善昭の共著『福岡伸一、西田哲学を読む』は、そんな知的興奮を味わえる本だ。『生物と無生物のあいだ』で知られる生物学者と哲学者の対談である。

西田幾多郎といえば、西洋の翻案ではないオリジナルな哲学をつくり出したことで知られる。とくに「絶対矛盾的自己同一」は、ヘーゲル流の弁証法とは違う概念として評価されてきた。

だが、これが難解だ。なんだかよくわからない。宗教の呪文のような意味不明のもの、と批判する人もいる。ところが、福岡が唱える生命観「動的平衡」と照らし合わせると、両者は驚くほど似ていることがわかる。

生物は変わらないように見えて、細胞レベル、分子レベルでは常に入れ替わっている、というのが動的平衡。絶えず変化しているが、平衡を保っているので止まって見える。鴨長明が観察した川の流れのように。

生物の内部では、分解と合成を同時に進行している。外部から食べ物を取り込んで分解し、タンパク質を合成する。肝心なのは「作る」ことよりもむしろ「壊す」こと。壊すことによって作っている。この生命のメカニズムが、「絶対矛盾的自己同一」とそっくりだというのである。なるほど、そういうことだったんだ。

福岡の生命科学をとおして西田哲学を見ることで「絶対矛盾的自己同一」が理解でき、西田哲学によって福岡生命科学を読むことで「動的平衡」がより深くわかる。一挙両得というか、なんだかすごくトクした気分だ。暑さも吹き飛ぶ面白さである。

評者:永江朗

(週刊朝日 掲載)

From the Publisher

西田哲学と福岡生命科学――一見すると両者は遠い存在のように思われるかもしれませんが、実は直接の接点があります。2013年1月放送のNHK・Eテレ「日本人は何を考えてきたのか:近代を超えて~西田幾多郎と京都学派~」で、福岡先生はナビゲーターとして西田幾多郎の足跡を辿り、その哲学にも触れています。番組の中で先生が「動的平衡と西田哲学には響き合うものがある」とコメントされていたことがこの本の出発点です(先生は広い意味での「京都学派」の生物学者です)。一方、上記番組の放送より前に、西田哲学の正統的継承者である池田善昭先生は、福岡先生の生命観と西田哲学のそれとに通底するものを感じておられました。「統合学」の研究仲間でもあった2人が西田哲学と福岡生命科学を題材に、約1年半にわたって、生命とは何かという問題をめぐって真摯に、かつ真剣に対話した、その記録が本書です。

福岡先生によれば、対談の前までは「西田をまともに読んだことはなかった」とのことで、難解で知られる西田哲学ですから、対話は必ずしもスラスラとは進みません。先生は所々で足を止め、汗をかき、躓いてもいます(読者のためにあえて躓いてみせてくださったのかもしれません)。読者の方は、福岡先生と一緒に考えながら読み進める気分が味わえると思います。福岡先生が一歩一歩着実に歩みを進めるように西田哲学に向かうその姿勢はとても感動的で、一方、池田先生が言葉を探して、言葉を尽くして懸命に説明される姿にも強く胸を打たれます。

対談では、まず、西田哲学が全体として何を目指した学問だったのかという見取り図を描きます(第1章)。次に、それに沿って西田の難解な術語群を丁寧に解きほぐします(第2~3章)。そして準備が整ったところで、福岡先生が実際に西田の論文を読み解いていきます(第4章)。そこでは、西田哲学と福岡生命科学が見事なまでに響き合っていることが次々に明らかになるのですが(福岡先生の訳文も収録)、対談はただ両者を重ね合わせただけでは終わらず、第5章ではそこから「時間とは何か」という大命題に挑み、西田哲学を経由することで生命の定義に関して「1つの到達点」に行き着く過程が描かれます(この考察は理論編に引き継がれます)。西田哲学はそれ自体が統合学と呼べる学問でもありました。第6章ではその現代的意義について議論が展開されます。知が分断されているように見える今、西洋科学・哲学の限界を超克する可能性をもつ学としての側面に光を当てて対談の幕は閉じられます。

書き下ろしや往復メールの一部も加わった実に贅沢な内容で、西田哲学、池田哲学、福岡動的平衡論の格好の入門書となっているだけでなく、生命や自然について思考を深められる一冊です。生命のすばらしさ、尊さ、かけがえなさとともに学問の楽しさ(や厳しさ)をきっと感じていただけるものと思います。

本書が伝えたいメッセージの一つ、「大切なことは隠されている」――その大切なことを探しに、ぜひ本書を開いてみてください。

Content (from BOOK Database)

「動的平衡」概念の提唱者・福岡伸一氏(分子生物学者)が、西田哲学の継承者・池田善昭氏(哲学者)を指南役に、専門家でも難解とされる西田哲学を鮮やかに読み解く。その過程で2人の碩学は生命の真実をがっちり掴む1つの到達点=生命の定義=にたどり着く…。西田哲学を共通項に、生命を「内からみること」を通して、時間論、西洋近代科学・西洋哲学の限界の超克、「知の統合」問題にも挑んだスリリングな異分野間の真剣“白熱”対話。

About the Author

池田善昭(いけだ・よしあき)
哲学者。1936年山形県生まれ。1968年京都大学大学院文学研究科博士課程修了(文学博士)。ライプニッツ・アルフィーフ客員教授、神戸学院大学教授、静岡大学教授、立命館大学教授、統合学術国際研究所所長を経て、現在、現代文明研究所所長および静岡哲学会会長。著書に『「モナドロジー」を読む――ライプニッツの個と宇宙 (Sekaishiso seminar)』(世界思想社)、『我心深き底あり――西田幾多郎のライフヒストリー (ライフヒストリー研究叢書) 』(共編著)、『「哲学」のゆくえ――近代認識論から現代存在論へ』、『ライプニッツ「モナドロジー」』、『近代主観主義の超克――文明の新しいかたち (シリーズ文明のゆくえ―近代文明を問う)』(いずれも晃洋書房)など。


福岡伸一(ふくおか・しんいち)
生物学者。1959年東京生まれ。京都大学卒。米国ハーバード大学医学部博士研究員、京都大学助教授などを経て青山学院大学教授・米国ロックフェラー大学客員教授。サントリー学芸賞を受賞し、80万部を超えるベストセラーとなった『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)をはじめ、“生命とは何か"を動的平衡論から問い直した著書多数。近刊に『新版 動的平衡』(小学館新書)、対談に『センス・オブ・ワンダーを探して』(だいわ文庫)、翻訳に『生命に部分はない』(講談社現代新書)など。フェルメール好きとしても知られ、全作品を巡った旅の紀行『フェルメール光の王国』(木楽舎)を上梓。最新デジタル印刷技術によってリ・クリエイト(再創造)したフェルメールの全作品を展示する「フェルメール・センター銀座」の監修および、館長もつとめた。2015年から、読書のあり方を問い直す「福岡伸一の知恵の学校」をスタートさせた。

Author Biographies (from BOOK Author Referral Information)

池田/善昭
哲学者。1936年山形県生まれ。1968年京都大学大学院文学研究科博士課程修了(文学博士)。ライプニッツ・アルフィーフ客員教授、神戸学院大学教授、静岡大学教授、立命館大学教授、統合学術国際研究所所長を経て、現代文明研究所所長および静岡哲学会会長

福岡/伸一
生物学者。1959年東京生まれ。京都大学卒。米国ハーバード大学医学部博士研究員、京都大学助教授などを経て青山学院大学教授・米国ロックフェラー大学客員教授。サントリー学芸賞を受賞し、80万部を超えるベストセラーとなった『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)をはじめ、“生命とは何か”を動的平衡論から問い直した著書多数。2015年から、読書のあり方を問い直す「福岡伸一の知恵の学校」をスタートさせた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)



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