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【連載】「灰かぶりの猫の大あくび」2(旅館編)

登場人物

灰かぶりの猫
久しぶりに小説を書き始めた、岩手県出身の30代。現在、新作を執筆中。
(詳しくはプロフィールの通り)

黄昏たそがれ新聞の夏目 
新米記者。アニメ好き。最近の推しは『呪術廻戦』の五条悟。先月、五条悟の死を知り、3日間寝込む。一方、その時に夢に見た、乙骨おっこつ憂太が気になり始める。

(以下、灰かぶりの猫=猫、夏目=夏目と表記)

※各固有名詞にリンクを追加。


猫の日の取材から、約1カ月。

相変わらず、無名の日々を過ごす灰かぶりの猫。

4月1日。場所は、岩手県某所の喫茶店。

猫は突然、夏目に呼び出され、テーブルを挟んで向かい合っていた。

夏目 「猫さん、缶詰めになる気ありませんか」

猫  「猫の缶詰めか。そういえば、『Team.ねこかん』というグループがあったような。エアーマンが、」 

夏目 「(猫の言葉をさえぎり)やだなぁ。鯖とかマグロの缶詰めのことじゃなくて、ほら、旅館とか、ホテルとか、小説家はよく、缶詰めになるって言うじゃないですか」

猫  「ということは、君は僕に執筆依頼をしたいということ?」

夏目 「(食い気味に)あ、違います。缶詰めになった猫さんを見たいだけです」

猫  「悪趣味だな」

夏目 「よく言われます。で、どうします?」

猫  「まあ、ちょうど書き進めたい作品があったから、ちょうどいいかもな」

夏目 「例の新作ですか」

猫  「まあ、ね」

夏目 「やったぁ!(子どものような満面の笑みを浮かべる) じゃ、早速出かけましょう」

猫  「しかし、どこへ?」

夏目 「決まってるじゃないですか。修善寺しゅぜんじですよ」

猫  「漱石が吐血したとこじゃないか」

夏目 「あ、そうなんですか」

猫  「君は物りなのか無知なのか分からないな」

夏目 「初めて言われました」

――ビューン(新幹線)

――ガタンゴトン(電車)

――ギイ、バタンバタン(タクシー降りる)

夏目 「へえ、ここが修善寺ですか」

猫  「いやいや、僕の近所の温泉施設だよ。行き先間違えたな」

夏目 「すみません、方向音痴なので」

猫  「まあ、いいさ。チェックインしよう」

――パタパタパタパタ(スリッパで旅館の廊下を歩く)

夏目 「あ、四足歩行ですね」

猫  「人前だから、一応、猫のふりをしないとね」

――すー、ぱたん(引き戸を引き、部屋の中へ)

猫  「夏目くん」

夏目 「はい」

猫  「二人部屋だけど、問題ないのかな」

夏目 「と、言いますと?」

猫  「いやほら、一応、僕と君は、無名の書き手と、新聞記者じゃないか。おまけに性は異なる。そんな二人が、一つ屋根の下ならぬ、部屋の中というのは、昨今さっこんのコンプライアンス的にどうなのかなと」

夏目 「ほんの~、小さな~、出来事に~。愛は~、傷ついて♪(突然、歌い出す)」

猫  「夏目くん?」

夏目 「大丈夫ですよ。だって、種が違いますもの。異なる種が交わってもあかくはなりませんよ」

猫  「ああ、そうか。そうだね」

夏目 「ずいぶんと心配性ですね」

猫  「スキャンダルは、人間を地獄に落とすからね」

夏目 「やだなぁ。無名な人のスキャンダルなんて、誰も見向きはしませんよ。あ、すみません(平謝りする)。(気まずくなり、逃げるように)じゃあ、わたし、先にお風呂行ってきますね。どうぞ、わたしのことは気にせず、新作に取り組んで下さい」

――すー、ぱたん(引き戸を開け閉めし、夏目が部屋を出ていく)

――パタパタパタパタ(廊下に夏目の足音が響く)

猫 「ふー、やれやれ。夏目くんは、なかなかに食えない記者だな。おっと、ここで食えないだなんて言ったら、スキャンダルに。どこの壁に耳が張り付いているか分からないからな。――さて、新作に手を付けるか」

                              つづく  

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