本雑綱目 65 陳舜臣 巷談 中国近代英傑列伝
今回は陳舜臣著『巷談 中国近代英傑列伝』です。
集英社新書、ISBN-13 : 978-4087203684。
NDC分類では282、歴史>アジア(伝記)に分類しています。
これは乱数メーカーを用いて手元にある約5000冊の本から1冊を選んで読んでみる、ついでに小説に使えるかとか考えてみようという雑な企画です。
★図書分類順索引
1.読前印象
陳舜臣は中国の歴史の本をたくさん書いている大家だけど、巷談、つまり世間話とか噂話というとライトな感じの話だろうと思う。中国史全体で巷で人気で有名といえばやはり劉邦や関羽あたりなんだろうけど、近代っていうと誰だ。林則徐とか王国維とかかな。近代はあんまり詳しくないや。
とりあえず開いてみよう~。
2.目次と前書きチェック
まえがきを読む。中国の歴史の関心は古代、特に三国志に偏っているが、本当に興味深い時代はアヘン戦争以降の近代で、三国志以上のスケールの文明の衝突があったからだという。考えればその通りで、でも世界史としては中国は敗北しているので、中華系の人がこの時代のことを日本で述べることはあまりないなと思った。アヘン戦争の辺りは興味があるんだけど、あんまり資料持っていないんだよね。一番気になっているのは大航海時代辺りの東南アジア情勢なんだけど、その本もまた教会関係の書簡集くらいしか基礎資料は持ってないんだよな。
目次は『1 近代の幕開け』で林則徐、佐宗棠、李鴻章、容閎、黄遵憲、『2 洋務運動からの戊戌変法へ』で康有為、劉鉄雲、梁啓超、『3 革命と反革命』で孫文、魯迅、黄興、王国維、袁世凱、『4 二人の画人』李白石、張大千、『終章に変えて』で台湾二・二八事件。うーん1/3くらいは知らなくて、残りのうち1/3も名前くらいしか知らない。確かにあんまり近代って知らないな。
『1 近代の幕開け』と『終章に変えて』を読んでみます。
3.中身
『1 近代の幕開け』について。
この一群の中でおぼろげながらも知っているのは林則徐くらいなので、本当に近代あんまり知らない。
林則徐はロシアとの長い国境線を見て対露を認識すると書いてあるけど、よくわからない。長い国境線は匈奴のころから変わらないと思うのだが、いつかのタイミングでその認識が失われたか、ロシアを改めて匈奴より格段に強い敵であると認識したんだろうか? そういえばロシアの近代史も知らない。イーゴリ公、ナポレオンあたりから知識が飛んでいる。
佐宗棠は科挙ルートではなく地元登用で活躍した人物で、中国は広いなと感じたのと、これほど各国が食い物にしようという中で切った張ったできる人間というのは凄いなと思う。
李鴻章は自ら淮軍を立て、それを運営するために様々な事業を始める。李鴻章は後ろ盾があるにしても個人だし、どうやって軍を立ててていんだ。王朝から何らかの認定があるのだろうけれど、それがでる基準や権限とか(つまり野党の類との違い)。西洋の私掠許可船の強いものだろうか(詳しくなくて放言してるやつ)。
容閎は儒教系学校ではなくキリスト教系学校に学んでアメリカに留学して学んだが、中国に戻ってしばらくは様々に警戒されてうまくいかず、その後李鴻章に見出されて躍進する。精神的基盤が結構面白そうな気がする。派手ではないかもしれないが、今のところ一番気になった人物かも。
黄遵憲は外交官詩人。やっぱ名剣の一番って太阿なのかな。当時の日本がうまく西欧勢力の訪れを乗り越えようとしていたのを紹介しようとする中、様々な勢力に翻弄された感じの人。
『終章に変えて』について。
台湾の事件は全く知らなかったけれど、暴徒とみなされると鎮圧という名の虐殺に躊躇しないというのは昔からだよな、とは思いつつ、これ日本に接収されてなかったら発生しなかった事件なんだろうかという自分の歴史の知識の欠乏さ加減に残念。
全体的に、読みやすくはある。そして国際・社会情勢が混迷を極めた時期に突出した人物が彗星のように登場して色々な物事が動いた、のだろうなとは思うのだが、残念ながら近世中国の僕の知識が少なすぎて結構目が滑る。巷談(噂話)ということで気軽に手にとってはみたものの、噂話とはやはりその場の空気を知っている(あるいは理解できる)ことを前提とするものだから、ちょっと難易度高かった。1人にあてられる紙幅が短いので、気になる人物についてはこれをスタートに時間がある時に調べようとは思うのだけど、僕は春秋戦国以前優先なのでなかなか時間を取りそうにない。
小説に使えるかというと、これらの人々を書くと卑近な時期だし色々問題が起きそうな気はしなくはないが、やっぱり背景事情がわからないとなんとも言えない!
4.結び
近代中国、というか近代史はあえて避けてはいる時代。日本だと昭和にかかるものはあんまり書きたくないのは、まだ生きてる人間やその近しい子孫がいる時代だから下手に放言したくないというのはある。外構情報等だと文書公開とかで後からわかることも多そうだなと思うところだし。やっぱ唐以前が気楽でいい。夏殷あたりはわからなさすぎてちょっと困ってるけど。
次回はサンディリャーナ著『ガリレオ裁判』、です。
と思うのだけど、読書ストックが減ってきたので別のエッセイを投げ込むかもしれませんが、あしからず。
ではまた明日! 多分!
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