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【連載小説】夏の恋☀️1991 シークレット・オブ・マイ・ライフ㉒

 七月。夜。

 桃子と那覇にでた。

 現在、過去、未来というものは、無い。あるけど。

 タイム・マシーンというのは、理論上つくれないらしい。記憶をつかえば、いつだって過去にいける。現時点・現在というは厳密にいうと、ない。

 歴史をマナベバ、未来にいける。文字に乘れば、どこにだっていける。

 言葉とか、文字が無いほうが、時間というものを、時間として生きていけるらしい。わんわん、にゃーにゃー的な。なんかの本に、そう書いてあった。文字で書いているくせに、どういうこと。

 どういうこと?

 ダナウ(マクドナルド)に行った。ビッグマックを食べた。桃子は水をのんでいた。あまいものがきらいなんだって。頭がいたくなるらしい。

 アルバイトのおんなが、誰かに似ている。

 濡口紅子じゃね? きっとそうだ。

 つうか、濡口紅子と貝口桃子って似てない? なまえがね。親子みたい。

 名からすると、紅子が母で、桃子が子。

 じっさいは桃子のほうが大人びている。紅子はちっとも成長していない。かわらずクラゲみたいに白く、ふにふにしている。かわいらしいかおをしているのだが、あいかわらず覚えられない。いまみているのに、すぐわすれる。なんだあの顔。

 へのへのもへじの、女の子ヴァージョンみたい。

 桃子の顔はぜったいに忘れない。むかしから知ってるし、いまも覚えてるし、未来永劫絶対にわすれない。

 ぜったい、ぜったいに、

 「に」が付いている方が、強い意味な感じがする。

「ぜったいに、好き。すき。すきスキ。桃子」とおれ。

「うん」

 うれしそう。ニヤニヤしている。目は笑っていない。

 おれとそっくり。

 なにから何まで似ている。桃子は洗濯板。胸がまったくない。背の高い少年みたい。チン子ついてるのとちがうか。

「ももこ、ももこもこもこもこもこもこちゃん」

「うん」

「もぐもぐももちゃん。ももももも、ももも、もーっ。ももちゃんももちゃんももちゃん。まままま。まうまうまうまう。ももちゃんもももこもこもこ。だいすき。もももも。すきすきすき。ももももここももこもも」

「うるさいもう。はやくたべて。カラオケいきたい」

 うれしそう。全然目がわらっていない。

本稿つづく


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