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お引越し

付き合って何となく二年たって

なんとなく同棲して、今私は出ていく準備をしている。

私たちはもう大人になって好きなだけでは一緒にいられなくなった。

昔はなかった喧嘩も、最近は日常茶飯事でいつも私が泣いていた。

見かねた彼はいつも軽く抱き寄せて喧嘩はそこで終わり。

定番の夜ドラ夫婦みたいな始末。

ふと段ボールの上に張られたシールでハッとする。

ああ、取扱注意のコワレモノは私なんだろうな。

きっかけは何かが壊れるのが怖くて言い出せなかったあの一言。

「もう出ていく」

本心じゃなかった、ただ日常と化した愛を確かめたかった。

彼はうんともすんとも言わない。

「今までありがとう」

二年はたった15秒で崩れ落ちた。

分かっていたんだろうけど、

引っ越し先もすぐに決まり、ついに今日、引っ越し当日。

できる主婦みたいに頑張って貯めたポイントカードも紙切れになって、

虫歯治療の次回予約はもう意味のないものになっちゃった。

せっせと荷造りを始めたはいいもののどれが自分のかもわからない。

もう彼がいなくなったこれからの生活の意味も何も分からなくなった。

「少しは手伝ってよ」

無言で手伝い始めた彼の指にはもう私があげた指輪はなかった。

彼は二人の記念写真、思い出の品も箱に入れる。

一通り引っ越し準備も終わって、同時に私たちの生活も終わった。

「どうか幸せでね」

持ち上げた段ボールは二年の重みがあって、

なんだかわからないけど涙が出た。

「重くて持てないからもう置いてくね」

彼の顔も見ずに飛び出した。

重い思い、想い段ボール。

この曲が好きすぎて文章に書き留めました。









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