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「ぜんざい」と「おしるこ」のちがい

結論:「ぜんざい」と「おしるこ」の定義は、東日本と西日本で異なる。沖縄のぜんざいは、本土のぜんざいとは、別物。


お正月に食べるものといえば、お雑煮

2022年12月、全国各地で食べられるお雑煮の違いについて書きました。詳しくは、こちらをお読みください。

島根県出雲市、鳥取県で食べられる小豆雑煮は、ぜんざいに、そっくりです。小豆の粒がしっかり残されており、味は、ぜんざいです。なぜ、ぜんざいみたいなお雑煮が誕生したかというと、小豆の赤色には邪気を払う力があり、縁起がいいとされていたためです。

ぜんざいも、出雲周辺で誕生しました。一方、沖縄にも、ぜんざいがあります。また、ぜんざいに非常によく似ているスイーツとして、おしるこというスイーツが日本にはあります。一体、何がちがうのか?今回は、地域によるぜんざいのちがい、「ぜんざい」と「おしるこ」の違いについて考察します。

なぜ、ぜんざいが誕生したか?

結論:神様が会議で出雲に集まったときに振る舞われる神在餅(ジンサイモチ)が発祥。

旧暦10月に全国の神様が出雲に集まり、神在祭カミアリサイが行われます。神在祭とは、旧暦10月11日〜17日の7日間、出雲大社の西にある摂社上宮で全国の神様が集まり、神議りカミハカリという会議をすることです。一方、出雲以外の地域では、神様がお出かけしているため、神様がいなくなります。そのため、出雲以外の地域では、10月を「神無月カンナヅキ」と言います。このときに出雲で振る舞われた神在餅ジンザイモチがなまって、「ぜんざい」と呼ばれるようになりました。

10月10日に、出雲大社の西1kmにある稲佐の浜イナサノハマで神々を迎える神迎の神事が行われます。19時に火が焚かれ、しめ縄が張られた斎場で神事が始まります。神々は稲佐の浜から出雲大社の神楽殿へ移り、全神職によって神迎祭が行われます。その後、出雲大社の本殿の東西にある十九社へ分かれていきます。神在祭のときは、神々の会議の邪魔にならないように、歌や舞を控え、静かに暮らします。

1週間後の10月17日に、神々を全国の神社に送るため、神等去出祭カラサデサイが行われます。十九社にいた神々を迎え、本殿楼門の扉を3度叩き、「お発ち、お発ちオタチ、オタチ」と声を上げます。すると、神々は全国の神社へ帰ります。10月26日にもう一度、神等去出祭を行います。出雲大社だけではなく、出雲市内にある熊野大社、日御碕神社、佐太神社、万九千神社でも行われます。

「ぜんざい」と「おしるこ」のちがい

非常によく似ていて、違いが分かりにくい「ぜんざい」と「おしるこ」。実は、西日本と東日本でも、「ぜんざい」と「おしるこ」の定義が異なります。東日本では、「ぜんざい」は汁気のない甘味のことに対し、「おしるこ」は、汁気のある甘味全般を指します。一方、西日本では、「ぜんざい」は、粒あんを使った汁物に対し、「おしるこ」は、こしあんを使用した汁物とされています。

出雲大社の参道には、ぜんざいが売られており、特に冬の参拝帰りは、温かく優しさも感じられます。

沖縄県のぜんざい

沖縄県で食べられるぜんざいは、本土で食べられるぜんざいとは異なります。本土のぜんざいは、温かい汁物に対し、沖縄県で食べられるぜんざいは、かき氷で身体を冷やす食べ物です。砂糖で煮詰めた金時豆を器に入れて、かき氷で埋めて山を作ります。鹿児島県のかき氷「しろくま」のように、フルーツ、シロップ、練乳などを盛り付け、豪華にしたり、氷の上に砂糖をまぶすだけのシンプルなものもあります。食堂、パーラーで食べることが、沖縄県民の定番です。 

東南アジアに通ずる沖縄県のぜんざい

東南アジアでも、沖縄県のぜんざいに似たかき氷が食べられているため、暑い地方で広がるかき氷文化の一つと考えられます。訪れたマレーシアでは、「チェンドル」というかき氷があります。チェンドルとは、かき氷の上に乗っている緑色のゼリーのこと。見た目は緑鮮やかなモンブランです。緑色の正体は、パンダンリーフという甘い香りのする葉っぱ。葉っぱから抽出した緑色の液体を米粉や澱粉で練ってところてんのように、押し出して麺状のゼリーにします。見た目は、緑色のしらたき、じゅんさいにも見えます。小豆がのり、ココナッツミルクをかけます。ゼリー自体には味は感じられず、甘い香りが広がります。暑いときは、氷を食べて冷やす文化は熱帯地方を中心に広がったように感じました。日本に近づくにつれて、甘さを抑えたかき氷に変化しているようにも感じました。

今回は、山陰地方で食べられているお正月のお雑煮から、ぜんざい、おしるこへ話が広がりました。冬は出雲発祥のぜんざい、夏は沖縄発祥のぜんざいが食べたくなります。

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