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田園地帯に浮かび上がる枝豆の正体

 新潟駅から山形県鶴岡駅へ向かう道中、景色を見ると広がる田園地帯。田園地帯の中に、ポツポツと枝豆畑が見えました。なぜ、田園地帯に枝豆畑があるのか?という疑問が湧きましたので、調べてみました。

日本有数の米どころ、新潟山形

 新潟県と山形県は、日本有数の米どころで、どちらの平野も盛んに稲作が行われています。新潟県はコシヒカリ、新之助、山形県は、はえぬき、つや姫、雪若丸が主なブランドです。お米については、新米の美味しい季節に詳しく解説します。今回のテーマは枝豆です。

1970年代の米の生産調整による転作

 かつて、枝豆は田んぼの畦道アゼミチ(土手)に作られていました。か空いている空間を有効活用することによって、米に加えてさらに稼ごうと考えました。終戦から、人口増加による食糧不足を防ぐため、八郎潟や有明海など干拓を奨して水田を拡大させていました。当時、お米は、作った分をすべて国が買っていました。しかし、GHQの影響から、戦後、小麦が入り、パン、麺類の消費が増加して、米の消費量が減少しました。その結果、米が余るようになり、1971年、政府は、減反政策という転作を奨励する方針に切り替えました。転作とは、水田を畑に替えて小麦、大豆、野菜など他の作物を生産することです。食糧自給率を改善させることも目的とされ、当初は、特に自給率の低かった大豆、小麦を優先で栽培されました。
 2018年、減反政策は廃止され、生産者が自由に出荷したい作物を栽培できるようになりました。背景には、農業就業者の高齢化により、米の増産が見込めなくなったことがあります。
 枝豆は、大豆が熟する前の青い状態を指します。転作により、大豆を生産する感覚で水田だった場所に枝豆を作っています。水田は、保水力があるため、枝豆作りの土壌にぴったりです。

だだちゃ豆

 山形県の日本海側にある庄内地方の夏の味覚です。庄内地方では枝豆は平安時代から栽培されていました。江戸時代、枝豆好きの庄内藩の殿様が、「今日はどこのだだちゃ(庄内弁でお父さん)の枝豆か」と聞いたことがだだちゃ豆と名付きっかけだと言われています。
 7月下旬〜9月上旬に収穫されます。元々、水田の畦道でひっそりと作られ、庄内地方でしか食べなかった野菜でした。しかし、2001年、中山美穂さんが出演していたキリン一番搾りのCMがきっかけとなり、全国で知られるようになり、生産量も増加しました。
 だだちゃ豆は、茶色の産毛に覆われたさやから、大粒で鮮やかな緑色の豆が出ていきます。甘みがより強く感じられ、止まらなくなります。
 だだちゃ豆が甘くて美味しい理由は、種子の採取のときからのこだわりもあります。さやの形、実付きの良い株を選び、完熟しないうちに収穫し、乾燥させます。茎が乾いてからさらに、二粒さやで種実と種実の間がくびれ、さやの表面に斜めの溝のあるものを選び、その中の豆を取り出します。取り出した豆のうち、表面にくぼみのあるシワシワの豆を選び出します。シワシワの豆を選ぶ理由は、糖分が丸々とした枝豆より、糖分含有量が多く香り豊かな枝豆になります。
 さらに、鶴岡市内は赤川が流れており、赤川の川沿いでは、朝霧が発生します。朝霧により適度な水分が供給されます。さらに、赤川の扇状地が広がっていて、元々は水はけのよい砂土壌が多いです。枝豆作りは、保水力のある土壌が好まれます。しかし、だだちゃ豆は例外です。水はけのよい土壌が好まれます。水田だった場所は、水を貯めるために、水はけが悪く土壌改良も行われました。
 鶴岡市のパン屋さん、「フレンド」では、だだちゃ豆を使ったパンが販売されていました。堅あげポテトの地域限定の味にも採用されています。このように、庄内地方では、だだちゃ豆が親しまれています。

だだちゃ豆の塩ゆで

黒埼茶豆

 新潟県のブランド。山形県から茶豆が伝わり、転作を機に、ブランド作物として成長させました。豆の薄皮が茶色に見えることから、茶豆と呼ばれています。新潟市西区黒崎地区で生産されています。
 ちなみに、枝豆の作付面積は新潟県が1位、一方、出荷量は千葉県に次いで2位。新潟の枝豆の特徴は、豆が小粒のうちに採ること。鮮度も落ちやすく、収穫した日のうちに食べないと美味しさが落ちます。しかし、風味や香りが一般的な枝豆より強いです。風味豊かで甘く感じます。
 収穫時期は7~8月がピークです。早く実品種は5,6月、遅い時期に旬を迎える品種は9~11月に収穫されます。

 今回は、車窓から見た景色で気になったため、枝豆を掘り下げました。枝豆を見ると、夏がきたと感じます。枝豆の美味しい食べ方について、ゆでる以外にあれば、コメントいただけると嬉しいです。

おまけ 枝豆料理

 枝豆は鮮度が命です。収穫したその日のうちに茹でることがベストです。枝豆は収穫後も呼吸をしており、呼吸によって糖分が消費されます。そのため、収穫してから時間が経つにつれて、甘みが抜けていきます。

枝豆のゆで方

 塩揉みしてこすり合わせることで、さやに生えている産毛を取ります。4%の塩水で4分程度茹でます。ざるにあげ、放置するか、うちわや扇風機を使って冷まします。氷水で急速に冷やすと、塩が抜けて水っぽくなるため、美味しさが落ちます。さやごと炒めてからフライパンで蒸し焼きする方法もあります。

参考文献

https://www.snowseed.co.jp/wp/wp-content/uploads/grass/grass_199612_05.pdf


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