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【2022年土用の丑の日前編】 なぜ浜名湖は、うなぎが名物なのか?

土用の丑とは?

 2022年7月23日(土)、8月4日(木)は、土用丑の日。土用の丑の日といえば、うなぎを食べる日として有名ですが、実際は頭文字に「う」のつく食べ物であればよいという風習があります。「土用の丑の日とは何か?」という疑問から掘り下げます。

土用

 季節の変わり目の約18日間のこと。本来は立春、立夏、立秋、立冬の年4回、土用があります。中国の陰陽五行思想とは、「この世の全ては火水木金土の5種類の元素で構成されている。」という思想。木は植物のようにスクスクと早い成長していく傾向、火は勢いが頂点に達し燃えさかる性質、金は勢いが衰え、冷めつつある状態、水は冷めきって止まった状態、土は放置しても種の発芽を示しています。四季が色と方角、動物で決まっており、春は東木青龍、夏は南火朱雀、秋は西金白虎、冬は北水玄武。土はどの季節にも属さず、季節の変わり目を示します。

丑の日

 丑の日は干支からきています。12日で1サイクル回ります。日本では丑の日を特別な日としており、土用丑の日は、季節の変わり目の特別な日と定められ、季節の変化による体の負担を減らすために精がつくものを食べる習慣ができました。

土用丑の日

 2022年は7月23日(土)、8月4日(木)の2日あります。土用の丑の日は、立秋の前日から12日間なる可能性があります。立秋は8月7~8日のため、夏の土用になる可能性があるのは7月19日~8月7日。12日周期で丑の日があるため、7月25、26日までに1回目の土用の丑の日がくると、2回目も土用の丑の日がきます。2回目の土用の丑の日のこと二の丑と言います。
 夏の土用の丑の日では、暑さで食欲の落ちる夏に「う」のつくもの(梅干し、瓜、うどん、牛、馬など)を食べると、夏負けしないという風習があります。
 2022年は丑の日が2回あるため、前編では、うなぎ、後編では松阪牛について語ります。後編は8月4日㈭更新予定。鰻、牛など2日に分けて贅沢に食べるのもおすすめです。ちなみに、2024年も土用丑の日が2日間あります。

土用の丑の日にウナギを食べることが定番になった理由

 土用丑の日にウナギを食べる風習が広がったのは、江戸時代のクリエイター、平賀源内が夏に売上の落ちるうなぎ屋さんに客を増やすために、「本日は土用の丑の日なり。」と看板を外に貼ることを提案したから。その結果、大繁盛したため、他の鰻屋さんもマネして、土用の丑の日=鰻が定着。平賀源内は200年経った現在も影響を及ぼす江戸時代の大物インフルエンサーです。
 他の説として、18世紀後半、東京神田にあった春木屋というウナギ屋さんがたれが、土用の丑の日から3日置いたものがおいしかったからという説があります。

浜松市のウナギ養殖の歴史

 静岡県西部、浜名湖の大部分を占めており、面積、人口ともに静岡県最大の都市、浜松市。日本のうなぎの養殖の発祥の地であり、1980年代までは静岡県が日本一現代も養殖業が盛んです。歴史は1900年、東京でウナギ、すっぽんの要職を研究していた服部倉治郎さんが浜名湖南岸の舞阪で人工池を造り、ウナギの養殖が始まりました。当時はウナギの成魚のみ商品として扱われており、体長15cmほどの「クロコウナギ」は商品価値がなかったため、捨てられたり川に放流されていました。クロコウナギに餌を与えて育てれば商品になると、目をつけ、浜名湖のウナギ養殖の歴史が始まりました。1971年、孵化してまもない稚魚「シロコウナギ(シラスウナギ)」から育てる方法を確立。その結果、生産量が増大し、全国にも広まり、現代のうなぎ養殖は進化を遂げました。しかし、1962年から静岡県付近でウナギの稚魚が不良になり、徐々に浜松での養殖ウナギの生産量が減少。1980年代には、静岡県から鹿児島県、愛知県に養殖ウナギ生産量1位の座を譲りました。安い海外産のウナギの流入も浜松の養殖ウナギの生産量の減少の一因になっています。 
 2021年現在、愛知県の三河地方にある西尾市一色町が養殖ウナギの生産量日本一の座を譲っています。

浜名湖南岸の弁天島から見た浜名湖

なぜ、浜松でウナギ養殖が始まったか?

→養殖に必要な環境が整っていたから

1.温暖な気候

 鰻は水温が10℃未満になると動かなくなり、えさを食べなくなります。年中活発に動き、成長を促すためには、年中温暖であることが必須条件。浜松市は年間平均気温が17.4℃(2021年)、浜名湖の水温は10℃を下回ることが少なく、鰻の成長に最適な環境です。

2.シラスウナギの生息域から近い

 シラスウナギの生息域は小笠原諸島よりさらに南にあるグアム付近。12〜4月、黒潮に乗って浜名湖付近へ長旅します。浜名湖周辺に現れたシラスウナギを取り、養殖池で育てることによって安定した生産量を確保しています。

3.地下水に恵まれている 

 天竜川の扇状地が隆起してできた三方ヶ原台地の地下400m付近には、ミネラル豊富な地下水が得られます。

4.餌が豊富

 明治、大正時代の日本の主産業は生糸。天竜川沿いは養蚕業が発展してました。蛹をうなぎの餌にして養殖を発展させました。

浜名湖うなぎ

 ウナギのかば焼きの消費額1位は浜松市で全国平均の約2倍の消費額。浜松市は現在も盛んに食べているウナギの街です。浜松のうなぎ屋さんは、関東と関西の中間付近にあるため、関東風、関西風が店によって異なります。そのため、店によって個性が強く出て、食べ比べもオススメです。旬は実は秋。冬眠に向けて栄養を蓄え、脂ののったうなぎが特に絶品です。夏は精がつき、活力のもとになります。

鰻料理あつみ

 JR浜松駅から徒歩5分の名店。ぐるなびの百名店に2018、2019、2022年に選ばれるなどの名店。開店の1時間半前に整理券が配られるため、ずっと待つ必要はありません。昼は12時には席が埋まります。浜名湖うなぎを使用。
 メインメニューはうな重、うな丼、白焼があり、並、上、特上の3種類あり、それぞれウナギの量が異なります。並は1匹、上は1匹半、特上は2匹使用。今回は、人気の鰻上重をいただきました。
 あつみのかば焼きは、蒸してから炭火で焼くという関東風の焼き方。蒸すことによって余分な脂が落ちてフワフワの身質になります。その結果、脂のしつこさがなく、口の中で身がなくなる感覚を体感できます。蒸した後に焼くことによって炭火で燻されます。ウナギの脂と蒲焼のタレの中に含まれる醤油、糖分が加熱されることによって、メイラード反応による香ばしさ、パリッとした焼き目。ウナギ特有の泥臭さがなくなります。鰻の脂と混ざりあって旨味が向上している甘辛いタレとご飯の相性もバツグン。
 サイドメニューも充実。かぶと焼きという珍しいメニューもあります。ウナギのカマを炭火で焼いた一品。蒸さずに焼くため、焦げ目が香ばしく、嚙むごとに旨味を感じます。他にも、肝焼きもあります。
 並んででも食べる価値がある鰻料理あつみです。

鰻重(上) 5750円
かぶと焼 650円

うなぎパイ(浜松市)

 浜松土産の定番のお菓子。浜松=うなぎのイメージから、浜松市の名物になるようにという願いを込めて、1961年に誕生。誕生までに10年かかりました。見た目はまるでタレをつけたうなぎの蒲焼。熟練した職人が何度も手作業で折り重なってできた数千層にも及ぶ繊細なパイ生地がサクッと軽い食感に導きます。生地に練り込まれるうなぎエキス、ガーリックパウダーが味に深みを与えているとのこと。最近ではうなぎサブレも登場し、うなぎパイとうなぎサブレのセットでも購入可能です。

うなぎパイV.S.O.P

 風味付けのブランデーも用いた大人用のうなぎパイプレミアム。こちらは、ゴマの代わりにマカデミアナッツを使用したり、生クリームを配合することによって、通常のうなぎパイより、まろやかでサクッとしていつつ、しっとり感も味わえます。香ばしさは抑えられ、濃厚でなめらかな味わいです。

うなぎパイは下記から購入できます。

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