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テクパンの私的博物誌

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自然や様々な生物に関するお話
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2024年3月の記事一覧

悲劇の巨獣

悲劇の巨獣

ゾウは、激しい生存競争と人類との対峙に振り回された悲劇の生き物である。

現存するゾウはアフリカに棲むサバンナゾウ(ヘッダー画像参照)とマルミミゾウ(シンリンゾウ)、そして南アジアに棲むアジアゾウの3種類だけである。

東南アジア各国では古くからアジアゾウの子供を捕らえ、飼い馴らして役畜として用いた。他方、アフリカのサバンナゾウは、スポーツハンティングの獲物としてハンターに追い回され続けた。
そし

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動かない鳥

動かない鳥

動物の世界では、時折「何故この動物がこのタイミングで流行るんだろう」と疑問符を浮かべざるを得ないようなマニアックな動物の流行がしばしば起こる。
昭和時代末期にはテレビのコマーシャルを切っ掛けに、エリマキトカゲやアホロートル(メキシコサンショウウオ)がそんなカタチでメジャーになった。世が平成に入ってからもその流れは続き、これまでに様々な動物が突然と言って良いタイミングで知名度を上げている。アルパカ、

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幻の毒蛇

幻の毒蛇

(ヘッダー画像はウィキメディア・コモンズより、ツチノコの【正体】のひとつに数えられている毒蛇・ヒメハブ)

日本には【ツチノコ】と呼ばれる未知の毒蛇の存在が各地に伝わっている。所謂【未確認動物】(UMA)と呼ばれる生き物のひとつだが、外国の未確認動物研究家の間では実在の可能性が高いと評されている。
【バチヘビ】【ゴハッスン】【カヤノヒメ】【ノヅチ】【ヨコヅツヘンビ】【タテクリカエシ】等、様々な別名

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毛刈り

毛刈り

大陸由来の致死性感冒が猛威を振るう前までは、各地の動物園に足繁く通って動物を眺めていたものである。今はもう松葉杖無しでは歩けなくなったので、すっかり無沙汰であるが。

そんな動物園行脚の小旅行で、時折ヒツジの毛刈りに出くわす事があった。
出会ったヒツジの多くは、コリデール種と言う長い毛を持つ毛用種のヒツジではなかったかと思う。刈られた毛を実際に触る機会があったが、脂を含むやや湿った手触りだった。

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古代南米の猛獣達

古代南米の猛獣達

(ヘッダー画像はウィキメディア・コモンズより、最も有名と思われる砕歯目の肉食動物、ティラコスミルス)

【収斂進化】と言う言葉がある。
隔てられた大陸で異なる系統の動物が、その環境下で担っているニッチェ(生態的地位)に適応した結果、外観が似通った姿になる進化の事である。
オーストラリアに棲息する有袋類(嘗ては【有袋目】と言うひとつの目にまとめられていたが、現在では双門歯目、フクロネコ目、クスクス目

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アーバン・ファルコン

アーバン・ファルコン

最近、オオタカやハヤブサ、チョウゲンボウなど、肉食性鳥類の都市近郊進出が増えているそうである。中でもハヤブサは、東京都に近い場所でも頻繁にその姿を見かけるようになった。

ハヤブサの都市進出について語る前に、先ずハヤブサがどんな鳥なのか軽く触れてみよう。

ハヤブサは鳥綱ハヤブサ目に分類される鳥で、肉食性の鳥としては最も早く飛ぶとされる鳥である(水平飛行で時速100km。因みに全鳥類で水平飛行で最

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取り留めもないワニの話

取り留めもないワニの話

最近、ストレス緩和の一環として、YouTubeの動物関連の動画を幾つか視聴しているのだが、その中でワニの捕食に関する動画が複数上がっているのを良く見かける。

ワニは御存知獰猛な肉食動物である。
肉であれば生き死にに拘りは無く、また種類を問わず何でも平らげる。
映像にはシマウマやガゼル等の大型植物食動物を捕食するモノから、ドブネズミや魚等の小形動物を食べる映像、変わったところではカメを食べる

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肉喰う猿

肉喰う猿

猿と聞いて、大抵の人が思い浮かべるイメージは何だろうか(本記事では、敢えて【類人猿(ヒト、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、テナガザル)】を省いた霊長目の動物を限定して【猿】と呼称する)。
果物(特にバナナ)を片手に陽気に暮らす…そんなイメージだろうか。

猿の仲間にベジタリアンが多いのは事実である。キツネザルの仲間はほぼ全てがベジタリアンだ。木の葉、果実、木の芽を食べる他、猛毒を持つ竹を専門

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貝食のスペシャリスト

貝食のスペシャリスト

(ヘッダー画像及び挿入写真はいずれもウィキメディア・コモンズより借用)

猛禽類(ワシやタカ、フクロウ、ハヤブサなど捕食性に特化した鳥類、その中でも特にワシやタカの仲間)は、生きる為、一生の間に数多くの他の生き物を捕らえて食べる。

彼等の世界を詳しく知らない我々人間は、猛禽類は餌になりそうな生き物ならどんな生き物でも無差別に襲うものと考えがちである。実際、猛禽類の大多数は獲物の選り好みをせず、食

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森の護り神

森の護り神

(ヘッダー画像及び挿入写真はいずれもウィキメディア・コモンズより借用)

ヒクイドリと言う鳥は、知れば知る程に面白い鳥である。

頭に抱いた骨質のトサカ、鋭い目つき、極彩色の肉垂、ゴワゴワした毛髪状の羽毛。そして足には長さ10センチ以上の鋭い爪。
異国情緒溢れる外見からヒクイドリをペットにする好事家も多いが、その飼い主が突然、逆上したヒクイドリに蹴り飛ばされて負傷した…なんて話は良く聞くところだ。

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【元祖】パンダ

【元祖】パンダ

今でこそ【パンダ】と言えばジャイアントパンダを指すようになったが、この【パンダ】と言う名称は、元々レッサーパンダを指す語句だった。

【パンダ】と言う語の誕生には諸説あるが、一般的にはネパール語でレッサーパンダを意味する【ネガリャ・ポニャ】(【ネガリャ】は竹、【ポニャ】は爪の意)の【ポニャ】がフランス語転化されて誕生したと言う説が有力である。因みにレッサーパンダ…元祖【パンダ】が西洋にもたらされ、

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