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テクパンの私的博物誌

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自然や様々な生物に関するお話
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2024年1月の記事一覧

アンドロギュノスな魚

アンドロギュノスな魚

※こちらの記事は現在非公開のマガジン【アセクのたわごと】に収録されていたものを【テクパンの私説博物誌】に向けて再編集したものです

人間を始めとした哺乳類や鳥類、爬虫類、両棲類の場合、生まれ持った性別は生涯固定のもので、変える事は出来ない。然し魚類の中には敢えて性別を固定せず、生涯の間にオスになったりメスになったりする種類が少なからず居る(両棲類の一部にもこの特性を持つ種類がいるようだが、魚類の方

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カミに喰われる

カミに喰われる

現存する大型のネコ科の猛獣(ライオン、ヒョウなど)の大多数がアフリカなどの熱帯を起源とする中、虎だけはユーラシア極部をその起源とする説がある。
実際虎の分布域は、北はロシアやシベリアから南はインドまでと、ライオンやヒョウとはやや異なる(ヒョウは逆に北上してユーラシアまで分布を拡げているが)。
嘗ては9亜種の虎が地上に棲息していた事が判っている。だが毛皮や肉、骨(漢方薬にされる)目当ての密猟やスポー

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呑兵衛な小動物

呑兵衛な小動物

"ツパイ"(Tupaia)と呼ばれる動物群が居る。

語義は東南アジアの何処かの国の言葉(マレー語?)で【リス】を意味するが、リスとは全く縁が遠い動物である。ごく近年までは原始的な霊長類の仲間とされていたが、その後の研究により全ての有胎盤類(カモノハシ、ハリモグラ、有袋類を除いた哺乳類の総称)の基盤に近い動物だと考えられるようになった。

このツパイと言う動物、兎に角データが乏しい。最大の種でもド

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【くちばし】の思い出

【くちばし】の思い出

【くちばし】は、イタリア系ロシア人の小説家ヴィタリー・ビアンキ作による絵本のタイトルである。
ヒタキ(原作では詳しい種類は不明。絵本では恐らくサメビタキかコサメビタキとして描かれている)がシメ、イスカ、様々なシギ類、ヨタカ、ペリカン等の嘴の役割を知って驚く…だいたいそんな骨子の内容で、ワタクシが子供の頃、大事に読んでいた一冊だ。
鳥類画や動物画を描かせたら日本でも並ぶ人がない画聖、故・薮内正幸さん

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鹿の子模様

鹿の子模様

※この記事は以下に記す内容を頭に入れつつお読み下さい

☆鹿の仲間は年に一回ツノが生え変わる(但し、シフゾウと言う鹿は例外的に年に二回ツノが生え変わる)。春先に「ベルベット」と呼ばれる皮膚を被ったツノが伸びはじめ、秋頃に骨化してベルベットが剥がれ、冬に落ち、そして春に再びツノが生える。因みに本記事で触れたい内容からズレるが、骨化する前の皮膚を被った鹿のツノは【袋ヅノ】(漢方名は【鹿茸(ろくじょう)

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パンダ四方山話

パンダ四方山話

パンダ(ジャイアントパンダ)の写真集を何冊も世に送り出されている写真家にして画家のケレン・スーさんの著書【野生的大熊猫(ふるさとのパンダ)】に「人類は皆パンダが大好き」と言う一文がある。果たして本当にそうだろうか。

動物好きを50年近く続けて実感しているが、実はパンダほど好き嫌いがはっきり分かれる動物もそうそう存在しないのである。そして、パンダが嫌われる理由の八割には政治的な因縁がつき纏う。本記

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