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デフ・ヴォイス

書名:デフ・ヴォイス
著者:丸山正樹
出版社:文藝春秋
発行日:2011年7月25日(単行本)
発行日:2015年8月4日(文庫本)
読了日:2019年4月29日(文庫本)
ページ数:311ページ

文藝春秋(単行本):https://bit.ly/2GQsY22
文藝春秋(文庫本):https://bit.ly/2PHgZXu
amazon:https://amzn.to/2GJCpPx

<あらすじ>

耳が聞こえない両親を持つ
耳が聞こえる主人公・直人。
約20年間、警察職員として働くも
退職をして、手話通訳士の資格を取得して
その世界で働く事になった。
親は耳が聞こえないが、自分は聞こえる「コーダ」として
育った直人がある殺人事件を通してろう者の心に寄り添い
胸が痛くなる事件の真相に迫ります。

<感想>

デフヴォイス。ろう者の世界を知る事ができる
手話通訳士が主人公(直人)のサスペンスを
読んだのはこれが初めて。
すごく新鮮で知らない世界を知る事ができた。
過去とつながる殺人事件。
捜査線上にあがる”ろう者”。
結構、辛い話でもありました。
読み応えもあり、オススメの1冊です。

<デフ・ヴォイス>

”デフ・ヴォイス”に込めた著者の意味は
装丁にもありますが、下記の様です。

・ろう者の声
・ろう者の手話
・社会的少数者の声

言いたい事を言いたくても
伝えたくても言えない。
そんな人たち、マイノリティの人も
”デフ・ヴォイス”なのかもしれない。

⚫︎ろう者の手話に2種類あること
⚫︎法律でも「いん唖者の不処罰又は刑の減軽」
を定めた刑法第40条が1995年に削除されたこと。

ろう者であるというだけで、刑事責任能力が免れる
というのは逆差別ではないかという事だそうです。

<手話通訳>

「手話通訳には確かに技術も必要ですが
心が通わなければできない仕事である」

伝えるだけが仕事なら機械や他の手段でもできるけど
その人の気持ちを理解しながら通訳する。
外国語の通訳の様に訳せれば良い。
っていうわけではない。
奥深いね。

<孤独>

主人公(直人)の両親、兄もろう者で唯一聴者である直人。
両親は兄の心配ばかりしていて
直人にはあまり気をかけない。
同じ屋根の下でも実は世界が違う。
複雑である。孤独を感じる。
聴者であっても、家族がろう者であると
一概に幸せとは言えないところがある。
架け橋として通訳をしなければならない場面も多いだろう。

<聾者・聴者>

「聴覚障害者・健常者」ではなくて
「聾者・聴者」を使う。

<聾唖者>

「聾唖者」の”唖”には”話せないことの意”が含まれる。
そのため、”聴こえないが、話せないわけではない”ので
唖を覗いて、ろう者という言葉を使う。

<コーダ>

「コーダ」 (CODA:Children of Deaf Adults)
…ろう者の親の子供。ろう者を親に持つ聴こえる子。

恥ずかしながら、コーダという言葉を初めて知った。
知識、勉強不足だったけど、ろう者の親から
必ずろう者が生まれるわけではなくて
当然、聴者の子が生まれる事もありますよね。
その辺が遺伝かどうかは解明されていない部分が多いとの事。

<日本語対応手話>

・日本語対応手話…一般的に知られている手話
(日本語に手の動きを一つ一つ当て嵌めていく手法)

<日本手話>

・日本手話…ろう者が昔から使っているもの

手話は一つだけだと思ってました…。

日本語対応手話は文法が日本語と同じで
日本語を手話に当て嵌めていくのに対して
日本手話は”sign"に重きを置いてるから
日本語の文法とは違う。

日本手話はろう者にとっての言語であり
日本語は第2言語である。
2つの言語、文化を知っているので
バイリンガル・バイカルチュラルという事でもある。

知らない事ばかりだったけど
少しだけ”ろう者の世界”に触れる事ができました。
もちろん、実際対面した事がないので
ほとんどわかっていないのだけれど
小説・ミステリーを通して色々勉強できたし
読み応えもあって、おすすめできる1冊です。

<登場人物>

・荒井直人…主人公、43歳、手話通訳士
・荒井悟志…直人の兄
・荒井枝里…悟志の妻
・荒井司…悟志、枝里の息子
・荒井敏夫…直人の父
・千恵美…直人の元妻、40歳
・安斉みゆき…直人の恋人、元職場同僚
・安斉美和…みゆきの娘
・米原智之…みゆきの前夫、直人の元同僚
・何森…巡査部長
・冴島素子…リハセン手話通訳学科講師
・手塚瑠美…NPOフェロウシップ代表、27歳
・半谷…瑠美の婚約者、衆議院議員
・新藤…NPO所属、大柄、30代女性、手話通訳し
・片貝…NPOフェロウシップの顧問弁護士
・益岡…ろう者、高齢
・手塚総一郎…瑠美の父、手塚ホールディングス創業者
・手塚美ど里…瑠美の母
・能美隆明…和彦の父、ろう児施設「海馬の家」の理事長
・門奈哲郎…「海馬の家」の施設利用者の父、能美隆明殺害で出頭
・門奈清美…哲郎の妻。
・門奈幸子…哲郎、清美の娘

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