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初めてのインプロ

 先日、渋谷で行われた即興実験学校に参加してきた。ベーシックコース、アドバンスコースともに2時間ずつであった。
 私がインプロに触れるきっかけは演劇をしている同僚から勧められ、興味をもったからだ。詩や絵での表現を続けている中で、身体表現での3D作品として演技をしてみたいと思った。今思い返せば小学校時代から演技には興味はあったが演じる側に回る機会はあまりなかった。社会人になって上京し、学ぶ機会がある今教師として表現者としての幅を広げるために参加した。今回は演劇初心者として即興劇を学んだ記録を紹介する。
①心理的安全性の保たれるインプロの環境
 通称インプロはイギリスの教育家、演出家、劇出家であるキース・ジョンストンが生み出した即興演技の方法である。彼が生み出した失敗してもいい、ありのままの自分で肩の力を抜いて表現するという思想が心理的安全を保つ環境づくりにつながると知った。実際に初めてのワークであったが、周りの環境のおかげさまで徐々に肩の力を抜いて参加することができた。以上のことから今後教室においても「失敗してもいい。」という心理的安全性の保たれる環境づくりを目指したい。もちろん、自分自身へ対しても「失敗してもいい」と言ってあげたい。キースが言うように、人間は「絶対に失敗してはならない」状況よりも「失敗をしてもいいから、楽しもう。」という状況の方が力を尽くせるはずだ。今回の講師の先生もインプロを学ぶために渡った留学先でインプロの祭典があった際、優勝を目指さず楽しんだことでインプロで優勝できたとおっしゃっていた。
②joiningとtilt
 キースが提唱したjoiningとは相手に合わせて同調することだ。日本社会では自然とjoiningが行われているために相手に気を遣ってことを上手く進める風潮にあるそうだ。例えば、Aがオムライスが「食べたい」と言ったとする。それに対して、Bはラーメンが食べたかったがAに合わせて「オムライスにしよう」と言う。これがjoiningだ。私自身、自己分析をした際に共感性が1番の強さであることに気付いたが、joiningを知り今までの自分はjoiningしていたのだと感じた。このjoiningとはいわばシーソーを元の水平に戻す作業であり問題が起きないように回避する人間の無意識の行動であるそうだ。だからこそ、お話の中の演技は人々を魅了することを知った。それは、演技はjoiningではなくtiltしていると言うのだ。先ほどの例を事例にするとBがAに本音で「ラーメンが食べたい」と言った場合、演劇のお話の中では口論になると言うことだ。人間は非日常を求めて映画や演劇を見に行くであろう。その心理は、上記のようなtiltする場面を見たいという心理があるという。以上のことから私は演技においてはtiltする瞬間をつくり、観客に謎を与える必要があると知った。ただ、観客に共感性を与えることも演技の本質であるからこそ、joiningと tiltの相反するものを共存させるのは難しく、奥深いものであるのだと思った。
③魅力的な演技とは
 演技とはその役の人生を生き、観客に人間の真実を伝えることである。考えることと感じることを両立させることである。と鴻上 尚史さんの著者『表現と演出のレッスン』という本に書かれていた。実際に即興劇を実験的に行い、考えることと感じることを両立させる難しさと曖昧さを感じた。どうしてかというと、先ほど②で述べたtintを行うことと感情に合った身体表現を乗せることを考えて演技を成り立たせるとすると、観客を前にした際に緊張して恐怖を感じて両立は難しいからだ。考えることだけに集中すると固くなり、感じることだけに集中すると演技らしいものにならない。そこでインプロの講師から考えすぎず、練習しているうちに演技は自然とできるようになるとアドバイスをいただいた。以上のことから鴻上 尚史さんの本においても述べられていたが「場数を踏むこと」を大切にしていきたい。そして、場数を踏みながら考えなくとも演じることができるようになり、感じることを楽しみながら唯一無二な演技ができる表現者を目指すこととする。仕事においては、インプロで学んだ身体表現を用いながら感情を表現していきたい。
④感情を表現する身体表現とは
 いくつか身体表現を学んだ。そのうちの一つですぐできるものは「目を見開くこと」「目を細めること」であると講師の先生から学んだ。意外と小さな変化でも、他者に話しながら身体に微妙な変化をつけることは難しいが取り組みたいと思った。それは、今回のインプロで、講師の先生がおっしゃっていた感情を変えなくても身体表現を行うことで演技が成立し、相手に伝わると教わったからだ。これまで、喜怒哀楽を気心知れている人以外に出さずに生きてきた。そのため相手に気持ちが伝わりにくいこともあった。例えば、人よりも笑いの基準が高いことや緊張してしまったら笑ってしまうことがあるため楽観的な人と勘違いされたことがある。また、現在教師であるが叱ることが辛く自分にできるか不安で夢を諦めかけたこともある。今は子供たちの命に関わることであれば強く伝えるが、これ以外は同じ人間対人間の関係の中で、ユーモアにかつ伝わるように伝えたいと思っている。その中で、子供たちにメッセージを届ける際もインプロの技術を用い、こちらの伝えたいことが伝わるように声色と表情を工夫していきたい。
 主に、初心者として以上の3点について学んだ。今回のインプロのワークで出会った講師の先生や地元が同じ方など人々との出会いを大切にし、演劇に携わりながら本質に迫りたい。そして詩や絵での表現も続けいつか唯一無二の表現者になる。


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