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なんだかあそびたくなっちゃう!家族のあそびとは?ー「家族のあそびレシピ」レポートVol.1ー

家族を取り巻く「ひと」「もの」「こと」を含め、「チーム」として仕事と家事の両立を提案する「チームわが家」。賛同の声の一方で「家族の対話が難しい」「チームを創るのが大変!」という声も多く、(株)MIMIGURIの田端さん&臼井さんに伴走いただきながら半年間にわたり改めて「チームわが家って何だろう?」という問いと向き合いました。

その結果、「対話は大事!」と風紀委員的に説くのではなく、もっとシンプルに「家族であそぼう!」を促していけば良いのでは?という着地点に到達。

そこで、普段から遊ぶように何かを創り出しているクリエーターの皆さんの力を借りながら、「なんだか自然とあそびたくなっちゃう家族のあそびを考える」非公開のワークショップを開催しました。

今回はそのワークショップをフリーライターの黒澤真紀さんにレポートいただきました。

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女性のキャリア形成への意識が向上し、男性の育児参加が推進されている現在、仕事と家庭を両立させたいと願いながらも、多くの家族は「チーム」になることの難しさに直面しています。彼らが言うのは「そもそも夫婦の対話が難しい」。

その課題を解決すべく、何気ない日常に「あそび」を取り入れることで、家族が自然に対話できる関係をつくるきっかけになるのではと(株)MIMIGURIとwonderlife LLPが非公開のワークショップを共同開催。

手作りおもちゃ作家の佐藤蕗さん、ボードゲームデザイナーのミヤザキユウさん、演劇家の藤原佳奈さん、自炊料理家の山口祐加さんを招き、「家族のあそびレシピ」について考えました。

以下は、ワークショップのレポート(全3回)の第1回です。冒頭、ワークショップの主旨を株式会社MIMIGURIの臼井さんが説明。その後、4人のクリエイターの紹介とそれぞれがワークショップに臨む想いを語りました。

「家族であそぼう!」ではなく「家族でついやりたくなっちゃう!」あそびとは? (株)MIMIGURI 臼井隆志さん

「今日は家族のあそびレシピというものをみんなでアイディアを出し合ってクリエーターのみなさんと創っていきたい」と話すのは今回のワークショップを共同企画した株式会社MIMIGURIの臼井さん。

チームわが家の重さや難しさをどう解消するかの問い直し。たどりついたのは、「いかにパートナーとの対話を促すか」、「家族資源の格差をいかに解消するか」というベクトルから、「家族って楽しい!」「なんかげたげた笑っちゃう!」というシンプルな方向への転換でした。

MIMIGURI アートエデュケーター 臼井隆志さん 今回のワークショップのデザインを行った。

そこで企画したのが、今回のワークショップ。「普段から遊ぶように何かを作り出している4人のクリエイターからヒントをもらいながら、家族でついやっちゃうような楽しい遊びを投げかけたい」と話します。

子育てはチーム戦。アベンジャーズのような家族でいたい 手作りおもちゃ作家佐藤蕗さん

「うちの〝チームわが家″はアベンジャーズですね」と話すのは、おもちゃクリエイターの佐藤蕗さん。長男が産まれた頃を「とにかく忙しかった。それを超えられたのは、家族がチームになれたから」と振り返ります。「チームわが家」に共感する部分も多かったそう。

佐藤蕗さん。11歳と4歳の子育てをしながら、手作りおもちゃ作家として活躍中。

その背景に、夫からの「子どもが産まれて制約が増えちゃったと言わないでいいような選択をしよう」という言葉があります。そこから佐藤さんは「アベンジャーズのようにそれぞれが個性豊かに生きよう」と考えるように。夫婦のクリエイティブな仕事がお互いの刺激になり、また、子ども達との関わりを通してお互いに気づきを得ることが多いと言います。

クリエイターの夫との共作「くらしのひらがな」は空間にひらがなを散りばめたひらがな表。「ひらがながおもしろいってことが子どもに伝わってほしい」(佐藤さん)

生活を遊びや学びに変える視点を大切にする佐藤家では今、〝サラダハザード″がはやっています。事業主は11歳の長男。彼が家のプランターで育てたレタスを週に1回、500円で家族に提供し、エクセルで収支管理をします。「遊びと学びを別のものにしたくない」と話す佐藤さんならではの家族のあそびです。「ワークショップではこれまで眠っていたアイデアを掘り起こしながらみなさんと楽しみたい」と話します。

ゲームは勝ち負けじゃなく、楽しく過ごすことが第一 ボードゲームデザイナー ミヤザキユウさん

2人目は、ボードゲームデザイナーのミヤザキユウさん。大学卒業後、出版系の企業で働きながら同人でゲーム作りのワークショップに参加したことがきっかけで、ボードゲームデザイナーに転身しました。

ミヤサキユウさん。ボードゲームデザイナーとして数々のゲームを手がける。

ミヤザキさんが今回のワークショップで家族のあそびに取り入れたいのは、「ゲームで楽しく遊びたいから、言われなくてもちゃんとしてしまう概念」です。〝ちゃんとする″とは、いわゆる、〝たしなみ″のようなもの。「ボードゲームはちゃんとしてなきゃ遊べない。いやなやつとは遊びたくないから」。遊びを遊びとしてたしむのは大人でも難しく、まして負けるとすねてしまう子どもが一緒だとなおさらです。ただし、「ゲームの目的は勝ち負けじゃない。楽しい時間にすること」だという想いを家族で共有できれば、〝ちゃんとできる″とミヤザキさんは考えます。「いいセッションのためには手加減もあり。それは全然悪いことではない」。ただし、あけすけにならないように。そのコツも伝授したいそうです。

演劇は、邪魔をしないための積極的なはたらきが重要 演劇家藤原佳奈さん

続いてのお話は、3人目のクリエイター、演劇家の藤原佳奈さんです。演劇家としての仕事を、「人や社会の働きを見つめて、本来の気持ち良い働きを邪魔しないための働きをすること」だと言います。それは家族にしても同じで、家族のどこかが目詰まり起こしている状況を解決するには、何もしないのではなく、邪魔しないための働きをすることが大切だと考えます。

演劇家の藤原佳奈さん。演劇創作の他、「からだのことば」を考える場づくりにも取り組む。

藤原さんは演劇のワークショップを通じて多くの高校生と接してきました。そこで感じるのは、「成長していきましょうというのは強迫観念なんじゃないか」ということ。「何も持っていなくてもいい。体が動かなくてもいい。お互いに存在しているだけで大丈夫というところから始めないとしんどくなる気がする」と話します。

そんな価値観を持つ藤原さんは、チームわが家の「言い訳」に共感します。いきなり家族の問題に触れることは難しいからこそ、そこに近づきやすい寄り道や、座りやすい席を用意するのが大事だと考えるそう。「家族を考えることと演劇を考えることは、何かを動かすときに、〝なんか体が自然に動いちゃう″感覚を探すところが似ている。ワークショップでもそういった動きを見つけていきたい」。

料理はどんどんミニマムにしていけば良い 自炊料理家 山口祐加さん

4人目に登場した自炊料理家の山口祐加さんのレッスンで好評なのが、スープルーレットです。これにはスープの食材を決めるための遊び道具で、1番下に1個目の野菜、2個目の欄にタンパク質類、最後に香り系の野菜、一番上に和・洋・中・塩が書いてあります。「献立を決めるタスクをどうやって楽しめるのかと考えた」という狙い通り、子どもたちは大喜びでルーレットを回すそう。親子でレッスンに参加した子どもが料理を好きになり、スーパーでお母さんと一緒に野菜を選ぶようになったという嬉しい話も。自身も7歳で料理の楽しさに目覚めたという山口さん。「家族がお互いの好きなことで支え合えたらいい」と考えます。

自炊料理家・山口祐加さん。自炊する人を増やすために子ども向けにもレッスンを行う。

ただ山口さんが気になるのは、子育て世代は忙しすぎるのに、料理への理想が高すぎること。それに対して「共働きで3~4品作るのは無理。一汁一菜のシンプル料理で十分。どんどんミニマムにしてほしい」と話します。また、料理教室の9割が女性であることも気になっています。林田氏が問題提起する「夫婦間の資源格差」に通ずる点です。「性別に関係なく料理はできる。そのバランスをこのワークショップで見つけられたら」と話してくれました。

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◎参加メンバー
クリエーター
佐藤蕗 手作りおもちゃ作家
ミヤザキユウ ボードゲームデザイナー
藤原佳奈 演劇家
山口祐加 自炊料理家

レコーディング
宮地龍馬(映像クリエーター)
さのはるか(グラフィックレコーダー)

主催
株式会社MIMIGURI
臼井隆志
田幡祐斤
押田一平

wonderlife LLP
林田香織

◎ライティング
黒澤真紀:フリーライター。都内学習塾に勤務した後、2011年フリーライターに転身。お茶の水女子大学大学院修了。社会科学修士。教育、医療分野を中心に取材と執筆を行う。小学生から高校生までの問題集執筆や模擬試験問題の作成にも携わる。男児2人の母。