就活失敗して頭に来たので独立したが就活の方が楽すぎて草ww⑪

6年前に、”マーケティング”という言葉に 
出会った。

キッカケは、一本のメールに始まる。

その日は、博多区の事務所に
朝から向かって、珍しくコーヒーを淹れる。

文字にすれば、えらくアッサリだが、
初めての”事務所”を持つまでに、
色んな苦難を乗り越えてきた。

周囲の同い年のリーマンが
イージーモードで稼いだ給料を
女やクルマ、旅行に使っている間、

心底、底辺ながらも日々思考して学び、調べて、
折衝して、営業や制作を行っていた。

現金にしたら、100万そこいらの金だった。

コツコツ仕事で稼いで貯めた収益を
事務所開設に一気に使う。

「ベーさん、やっぱこのまんまじゃ
 俺らはアカンで。」

いつものベンチで、
不機嫌そうに尾崎は言った。

「ん?何がアカンの?」

コーヒーとタバコを吸おうとした矢先だったが、
こういう”何かが変わる時”何も口にしないことが
振り返ると多い気がする。

「自宅で仕事を続けても、お客様から見たら
俺たちって”不安要素”でしかないやん。」

「ちゃんと、事務所を持って、
 “体裁”をつくる。

そこで、しっかり相手についての
 ヒアリングをする。

そういう、基本的なところを
 抑えないかんくない?」

やけに説得感があったが、大抵、こういう時は
現状はすでに事足りているのである。

「面会は今時、相手のオフィスでも
 どこでもできるんだし、別によくね?」

「しかも、相手からすると、
 相手のオフィスに業者が来てくれる方が、
 親身で良いのでは?」

否定というよりは、別に無理してまで、
事務所を構える必要がないという事実を
伝えたまでだった。

「ベーさん。言っておくけど、
 俺らは、単に”お客様の言いなり”の下請けとは違う。

企業活動をしていく上で、
集客や営業成約率の改善、
教育工数の削減や求人獲得など、

本当の意味で、企業活動の”お役立ち”を果たさねば、
俺らの仕事なんか、所詮オナニー起業でしかないんよ。」

「その為にも、ヒアリングをする上で、
相手がこちらの事務所に訪問して、
まるで”お医者さんのようなカウンセリング”をする。

そして、処方したり、施術したりする。」 

「患者や病気、お困りの人は、
皆、病院に行く。 

企業活動をもっと促進させたり、
悩みを解決したい人は、
病院に値する俺らの”事務所”に来る。

これは、本当に大事なことやね。」

そこまで伝えられた時、
気持ちが一気に軽くなった。

「・・・おけ!
 要は、”自称出稼ぎのトレーナーもどき”はもう辞めて、
町医者のように、しっかり事務所構えて、
 腰据えて専門家としてしっかり貢献せーよってことね!」

「俺らもちゃんと、
 “動画のお医者さん”的なポジションを
しっかり確立して、貢献してかなあかんね!」

そうした経緯もあって、
この博多の事務所を準備して、

お客様をカウンセリングしたり、
提案する際の拠点として
利用していたのである。

昼食を食べずに、
編集をこなし終えて、

少し休憩していると
会社宛ての問合せメールが
“ポンっ”と一通入る。

「はじめまして。
土田と申します。

ちょっと急ぎの用なので、
 早めに返信頂きたいんですけど、
プロダクトローンチというマーケティングで使う
対談動画の撮影をしてもらえる業者さんを

探してます。
(ノウハウ自体は僕が持ってるので、
きちんとしたクオリティで撮影できる業者を
 探してる・・という感じです)

沖縄で2日間(1日目通しのリハ、2日目本番)
みたいな日程で考えているのですが、
予算内で対応してもらえると嬉しいのですが、
とりあえず詳しくはお電話で詰めたいので
折り返しご連絡ください。

土田 正明(つちだ まさあき)」

この日を境に、
仕事はアップデートされていき、

その後の売上は飛躍的に伸びて行く。

文面を見るとそこには、
自分の見識にない言葉がずらり。

“マーケティング?”
“ローンチ?”

そこへ、尾崎が事務所に到着。

「ベーさん、おっつー!」

「ちょ!これ見て!」

尾崎をPCモニターへ誘導して、
例の問合せメールを見せる。

「ちょっと今回ばかしは不安要素もあるから、
土田さんの案件、沖縄に一緒に行かへん?」

そう尾崎に伝える。

「いいよ!いいね! 一緒に行って、成長しよう!」

分からないことは、”恐れ”や”怖さ”がある。
しかし、”未体験や未知なことへの興味”がそれらを上回る。

後日、スズメたちは、
沖縄へ飛び立った。

たった数日間の仕事が、
後の人生を大きく変えていくことも知らずに。

続く・・・。

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