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大学中退して独立したら独立なんて必要なかった話⑩

SAの文字が見える。ウィンカーを出す。サイドミラーを確認すると、後ろを走る二台もウィンカーを出した。SAに入ると、バイク用の屋根がある駐車場にバイクを止めた。後ろの二台も横に並んで駐車した。その二台を見てみると、鳥部とはぎだった。白田がいなかった。

「白田は?」と聞く。

「わからんが急におらんごとなった。北九州あたりから後ろからついてこなくなった。」とはぎが話す。

そうか。一番白田の近くを走っていたはぎがそういうなら間違いないだろう。北九州あたりで、何かあったに違いない。もしかして事故にあったのか。僕たちに比べて、事故に遭っている白田だったらありえる。いやいや事故にあったとしても、3人とも全く気づかなかったというものおかしなものだ。事故ではなくても、何かトラブルがあったに違いない。そのような一人脳内会議をしながら、何も不安な気持ちがないように

「まあとりあえず、はぎ白田に電話してみて。出るかわからんけど」

「オッケー」とはぎが電話をかける。するとすぐに電話に白田が出た様子だった。うん、うん、うんと小気味よくはぎが相槌をしている。ある程度相槌を繰り返した後で「うん、オッケー!わかった。」とはぎは電話を切った。

「んで、なんて?」と鳥部。

「よくわからんけど、急にエンジンが止まったんだって。またエンジンをかけたら、かかったから、また走らせたらまた止まるんだって。どうしようもないから、とりあえず今JAF呼んだから、バイク屋に行ってみるって。俺は気にせず行っていいよ。追いつくからだってさ。」


とはぎから説明を受けた。とりあえず事故でなくてよかったと少し胸を撫で下ろした。しかし同時に白田の新しいバイクですら、トラブルにあうということは、自分のバイクはこのツーリング中もつのかという不安出てきた。でも悩んでも仕方がない。まだ起こってないことに、不安を抱いても仕方がないのだ。不安で何もしないことほど無意味なことはない。

「って言ってたけど、どうする?待つ?」とはぎ。

「いや行こう!元々どんなトラブルがあっても走れるやつは東京まで走りきろうって言ってたやん。そしてこれからはそれぞれで好きなように走ろう。」

「ん?どういうこと?」と鳥部が聞く。

「それぞれの疲労具合も変わるやろうし、バイクのエンジンも違うからそれぞれで行こう。休憩が必要なら自分で判断して休めばいいし、そっちの方が人に合わせて走るより安全な気がする。」

「せやな!レースやな!!」と鳥部が嬉しそうに言った。

「飛ばしすぎるなよ。鳥部のバイクも古いし、事故ったら元も子もないからな。

「わーった!わーった!」とわかってるのかと言いたくなる様子でいった。

こうして僕たちはそれぞれで東京まで走ることになった。


バイクは僕に教訓をくれる。

仲間だからといってずっと一緒に走る必要はない。時にトラブルに遭うこともある。時に人より出遅れることもある。時に一人立ち止まり休みたい時もある。共に目指すものが一緒なら良いのだ。あいつらならきっと追いついてきてくれる。そう信じて自ら前に進むしかないのだ。

そして、何もせずに座っていても、東京は自ら僕らのもとにくることはない。何もせずに目標を達成することはないのだ。もし何もせずに達成したとすれば、それは他の人の達成に違いないのだ。そんな達成嬉しくもない。どんなにきつくても自分のバイクは自分でしか運転できない。目標達成のためにできることは自ら前に進むことだけなのだ。



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