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【書評】「狂伝 佐藤泰志 無垢と修羅」(中澤雄大 中央公論新社)、「スヌーピーがいたアメリカ ピーナッツで読みとく現代史」(ブレイク・スコット・ボール 今井亮一訳 慶応大学出版会)
出版社を退社した30代はじめから、資料を読み込んだりすることもあって、365日のうち何らかの仕事をしないのはひどい二日酔いの日だけだった。 最近は、コロナ後遺症の頭痛もあるので、ペースを落として土日は休むようにしている。 とはいえ、本は読む。 長らく積ん読になっていた二冊を読み終えた。 まず「狂伝 佐藤泰志 無垢と修羅」(中澤雄大 中央公論新社) 20代の頃、井田真木子さんと一度だけ仕事をした。そのときに日本の純文学=私小説となったことで、日本文学が矮小化、世界に通
【書評】「サイエンスフィクション あなたが知らない科学の真実」「アメリカは自己啓発本でできている ベストセラーからひもとく」「お客さん物語」
暑くて仕事山積みで……しかし頭痛が出るので休みながら色々とやっています。 その合間に読んだ本の一部 「サイエンスフィクション あなたが知らない科学の真実」(スチュアート・リッチー ダイヤモンド社)は「エビデンス」という言葉の怖さを思い知らされる。いかに「論文」が恣意的に操作されるか。ぼくたちは科学では「再現性」があるものだと信じている。しかし、多くの論文——特に心理学ではそうではないと著者は書く(日本でも似非心理学者の本が溢れている)。研究者の良心に頼らざるえないという現
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良質のノンフィクションは時に相手の心臓にナイフを突き立てる——「ルーリード伝」(アンソニー・デカーティス著 奥田祐士訳)
「ルーリード伝」(アンソニー・デカーティス著 奥田祐士訳) ノンフィクションとしても音楽評論としても第一級の作品。 ルーリードのメディア嫌い、奇人変人ぶりは冒頭、著者でルーリードの友人でもあるアンソニー・デカーティスが教鞭を執る大学に呼んだとき、登壇するかどうかぎりぎりまでやきもきしたというエピソードで分かる。 ぼくは週刊ポスト編集部時代、作家で映画監督のポール・オースターにインタビューしたことがある。取材後、「あなたはルー・リードと仲良いんですよね」と話しかけると、オース