田崎健太(ノンフィクション作家)

68年京都市生まれ。ノンフィクション作家。 (株)カニジル代表。著書に「偶然完全 勝新…

田崎健太(ノンフィクション作家)

68年京都市生まれ。ノンフィクション作家。 (株)カニジル代表。著書に「偶然完全 勝新太郎伝」「球童 伊良部秀輝伝」「電通とFIFA」「真説長州力」「真説佐山サトル」など。最新刊は「横浜フリューゲルスはなぜ消滅しなければならなかったのか」(カンゼン)。

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【全文】「真説佐山サトル」ノート

※この原稿は二〇一六年八月から二〇一八年四月まで水道橋博士主宰「メルマ旬報」の連載に修正、加筆したものです。原稿用紙296枚、おおよそ単行本一冊分になります。その他、取材時に撮影した未発表写真、佐山さんからお借りした貴重な資料や写真も掲載しています。 4月20日発売の文庫版「真説佐山サトル」(集英社)と合わせて楽しんでください。 【はじめに】  どんな分野であろうと、人間を取材することに変わりが無い。ひと揃いの使い慣れた道具を取り出せば、どんな分野でも描くことが出来ると

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    • 書評『地球上の中華料理店をめぐる冒険』(関卓中 講談社)

       今まで50を超える国と地域を旅してきた。途中から面倒臭くなって数えるのはやめたので、正式な数はわからない。ぼくは基本、その国の人たちが日常に食べている食事をとる。日本的料理(敢えて和食とは呼ばない)の店は行かない。ただ、ごく稀に消去法の最後として中華料理店を選ぶことはある。どこの国にもあり、中華系の小売店を含めて、この地球には中国人がいない場所はないのではないかと思う。 例えば、フランス領ギアナ。ブラジルの上に三つ並んでいる、ほとんどの人にとっては名前さえ知らない国々だ。

      • 超個人的書評『本業2024』(水道橋博士 青志社)

        水道橋博士の新著は、「タレント本」の書評集。彼はタレント本を〈膨大で払いきれない有名税に対するタレント本人による青色申告書〉と定義する。ひねりすぎていて、少し分かりにくい。 いわゆるタレント本を中心に俎上にあげながら、芸能界に忍び込んだルポライターとして書いた「藝人春秋」の続編である——。 それにしても博士とぼくの興味は重なる。 ぼくとしてはきちんと取材しているつもりだったのにファン扱いされた矢沢永吉さん(ぼくが詳しすぎたのだろう)の『アー・ユー・ハッピー』(この本の原

        • 書評「人口は未来を語る」(ポール・モーランド著 橘明美訳 NHK出版)「世界は経営でできている」(岩尾俊兵 講談社現代新書)「慶應高校野球部」(加藤弘士 新潮新書)

          最近読んだ本の一部 「人口は未来を語る」(ポール・モーランド著 橘明美訳 NHK出版)、かなり面白い。著者はイギリスの人口学者、人口の増減から世の中の流れを読み解いて行く。 要点を書き出してみる。 ・乳児死亡率が高くなる=子どもを失う不安が減る→出生率が下がる それでも、アメリカや欧州の国々が人口を保っているのは、「移民」がいるから ただし、移民の出生率はやがて「受け入れ国」の出生率に近づいて行く。 ・一般的に教育水準の高い女性よりも低い女性の方が子どもを産む。

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          書評『戦後期 渡米芸能人のメディア史 ナンシー梅木とその時代』(大場吾郎 人文書院)『統計学の極意』(デイヴィッド・シュピーゲルハルター 宮本寿代・訳 草思社)

          最近読んだ本の一部 どちらも読者を選ぶ本。 『戦後期 渡米芸能人のメディア史 ナンシー梅木とその時代』(大場吾郎 人文書院)は、芸能界を取材しているぼくにとっては参考になる一冊だった。以前から「上を向いて歩こう」がなぜアメリカでヒットしたのか、謎だった。 その地ならしをしたともいえるのが、ナンシー梅木、雪村いずみたちだった。そこではハワイが重要な役割を果たし、ジャニー喜多川の父がいたLAの高野山米国別院も出て来る。 ナンシー梅木が、直面した日本の芸能プロダクションとア

          書評『戦後期 渡米芸能人のメディア史 ナンシー梅木とその時代』(大場吾郎 人文書院)『統計学の極意』(デイヴィッド・シュピーゲルハルター 宮本寿代・訳 草思社)

          あなたは「最後の晩餐」に何を選びますか? とりあえず今日は麻婆豆腐を作る。

          1999年末に小学館を退社したとき、自分は(週刊誌)編集者には向いていないと思った。いわゆる世の中で話題になっているものに、ぼくはあまり興味がない。自分の関心ある部分と世の中がが重なることはごく稀だ。 今、行われているオリンピックについては、男子サッカーと女子サッカーを少し観ただけ。書き手としては独自の道を行くという強みにはなっているかもしれないが。 さて、さて。 ずっと以前、漫画家の弘兼憲史先生から「死ぬ前、最後の食事に何を選ぶか」と聞かれたことがある(弘兼先生はこう

          あなたは「最後の晩餐」に何を選びますか? とりあえず今日は麻婆豆腐を作る。

          【書評】『裏切り者は誰だったのか CIA対KGB諜報戦の闇』(ハワード・ブラム著 芝瑞紀、高岡正人訳 原書房)、『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(三宅香帆著 集英社新書)

          金曜日夜から土曜日朝まで12時間飲んだ反動で昨日は眠り続けてました。 沖縄、米子で激しく動いていた疲れが出たのかもしれない。今日から通常営業に戻します。 最近読んだ本の一部。 『裏切り者は誰だったのか CIA対KGB諜報戦の闇』(ハワード・ブラム著 芝瑞紀、高岡正人訳 原書房)は、キューバ危機、JFケネディ暗殺時代の「CIA」と「KGB」の諜報戦を描いたノンフィクション。 「モグラ」と呼ばれる二重スパイ(時に三重か)、機密情報の受け渡しの詳細、海での不審死——スパイ小

          【書評】『裏切り者は誰だったのか CIA対KGB諜報戦の闇』(ハワード・ブラム著 芝瑞紀、高岡正人訳 原書房)、『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(三宅香帆著 集英社新書)

          【書評】「移民の子どもの隣に座る 大阪・ミナミの「教室」から」「男はなぜ孤独死するのか 男たちの成功の代償」

          「カニジル」と「虹くじら」の入稿、新しい企画の準備などで追われ、暑さでへばっています。 コロナ後遺症については、とりだい病院の黒崎先生の勧めで服用をはじめた漢方が効いているのか、ここしばらくは寝込むほどの頭痛はなし。このまま行きたい。 最近読んだ本の一部。 「移民の子どもの隣に座る 大阪・ミナミの「教室」から」(玉置太郎 朝日新聞出版)の著者は朝日新聞の記者。 彼は「移民のルーツ」をもっている人間が多い、ミナミの「島之内」に家族と共に住み、「Minamiこども教室」でボラン

          【書評】「移民の子どもの隣に座る 大阪・ミナミの「教室」から」「男はなぜ孤独死するのか 男たちの成功の代償」

          【書評】「狂伝 佐藤泰志 無垢と修羅」(中澤雄大 中央公論新社)、「スヌーピーがいたアメリカ ピーナッツで読みとく現代史」(ブレイク・スコット・ボール 今井亮一訳 慶応大学出版会)

          出版社を退社した30代はじめから、資料を読み込んだりすることもあって、365日のうち何らかの仕事をしないのはひどい二日酔いの日だけだった。 最近は、コロナ後遺症の頭痛もあるので、ペースを落として土日は休むようにしている。 とはいえ、本は読む。 長らく積ん読になっていた二冊を読み終えた。 まず「狂伝 佐藤泰志 無垢と修羅」(中澤雄大 中央公論新社) 20代の頃、井田真木子さんと一度だけ仕事をした。そのときに日本の純文学=私小説となったことで、日本文学が矮小化、世界に通

          【書評】「狂伝 佐藤泰志 無垢と修羅」(中澤雄大 中央公論新社)、「スヌーピーがいたアメリカ ピーナッツで読みとく現代史」(ブレイク・スコット・ボール 今井亮一訳 慶応大学出版会)

          【書評】「サイエンスフィクション あなたが知らない科学の真実」「アメリカは自己啓発本でできている ベストセラーからひもとく」「お客さん物語」

          暑くて仕事山積みで……しかし頭痛が出るので休みながら色々とやっています。 その合間に読んだ本の一部 「サイエンスフィクション あなたが知らない科学の真実」(スチュアート・リッチー ダイヤモンド社)は「エビデンス」という言葉の怖さを思い知らされる。いかに「論文」が恣意的に操作されるか。ぼくたちは科学では「再現性」があるものだと信じている。しかし、多くの論文——特に心理学ではそうではないと著者は書く(日本でも似非心理学者の本が溢れている)。研究者の良心に頼らざるえないという現

          【書評】「サイエンスフィクション あなたが知らない科学の真実」「アメリカは自己啓発本でできている ベストセラーからひもとく」「お客さん物語」

          書評『はじまりのテレビ 戦後マスメディアの創造と知』はテレビを語る上で必読の一冊

          頭痛に悩まされながら、原稿を書いては横になるという感じで、かたつむりのように仕事を進めてます。 その合間に読んだ本の一部。 『ルポ 海外「臓器売買」の闇』(新潮新書)については、ぼくも興味があり調べていた問題でもある。国外での臓器移植の闇を読売新聞社会部が丁寧な取材で追い詰めている。ぼくたちのような個人の書き手、あるいは週刊誌ならば一気に行くところを、(いいかどうかは別にして)新聞ではそうしないところも印象的。 余談になるが、新聞記者たちの総合力、足腰の強さは間違いない

          書評『はじまりのテレビ 戦後マスメディアの創造と知』はテレビを語る上で必読の一冊

          傑作、必見!! ペルー映画「革命する大地(La revolucion y la tierra)

          昨日、教え子たちとの飲み会の前、新宿のケーズシネマでペルー映画「革命する大地(La revolucion y la tierra)をようやく観ることができた。 傑作——。 過去のペルーのドラマ、ドキュメンタリーを発掘、その映像とインタビューを組み合わせるという構成。スピード感のある編集、2時間があっという間だった。 テーマは軍事政権のベラスコ大統領について、だ。 ぼくはペルー大使公邸事件の取材でしばらくリマに滞在、その後も何度かペルーを訪れている。映画に出て来る新聞「エル・コ

          傑作、必見!! ペルー映画「革命する大地(La revolucion y la tierra)

          良質のノンフィクションは時に相手の心臓にナイフを突き立てる——「ルーリード伝」(アンソニー・デカーティス著 奥田祐士訳)

          「ルーリード伝」(アンソニー・デカーティス著 奥田祐士訳) ノンフィクションとしても音楽評論としても第一級の作品。 ルーリードのメディア嫌い、奇人変人ぶりは冒頭、著者でルーリードの友人でもあるアンソニー・デカーティスが教鞭を執る大学に呼んだとき、登壇するかどうかぎりぎりまでやきもきしたというエピソードで分かる。 ぼくは週刊ポスト編集部時代、作家で映画監督のポール・オースターにインタビューしたことがある。取材後、「あなたはルー・リードと仲良いんですよね」と話しかけると、オース

          良質のノンフィクションは時に相手の心臓にナイフを突き立てる——「ルーリード伝」(アンソニー・デカーティス著 奥田祐士訳)

          真説佐山サトルノート Last round 文庫の追加取材——エンセン井上2

          【この原稿は二〇一六年八月から二〇一八年四月まで水道橋博士主宰「メルマ旬報」での連載を修正、加筆したものです。秘蔵写真も入っている全話購入がお得です】 エンセンさんの生き様は実に「アメリカ人」的である。  子どもの頃からバスケットボール、野球、そしてラケットボールという複数の競技に触れ、その中で自分に向いていると思われたラケットボールを選んだ。一つの競技を突き詰めることを是とし、他競技との並立を嫌う日本とは違う。  また、大学生のときから「個」の意識を持って

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          真説佐山サトルノート Last round 文庫の追加取材——エンセン井上2

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          【無料公開】真説佐山サトルノート round 29 文庫の追加取材——エンセン井上1

           【この原稿は二〇一六年八月から二〇一八年四月まで水道橋博士主宰「メルマ旬報」での連載を修正、加筆したものです。秘蔵写真も入っている全話購入がお得です】  重版で修正を入れることを除けば、印刷された自分の単行本を読み返すことはほとんどない。  責了までの過程で嫌ほど、読み返し、修正を入れる。もうゲラを見たくないほど、その世界に没頭する。終わった瞬間、ぼくは頭を次の作品に切り替えるのだ。  理由は幾つかある。  まず印刷された後に読み返すと、直したい箇所を見つけてしまうのが嫌

          【無料公開】真説佐山サトルノート round 29 文庫の追加取材——エンセン井上1

          真説佐山サトルノート round 28  登場人物の一人をイニシャル「K」とした理由

          【この原稿は二〇一六年八月から二〇一八年四月まで水道橋博士主宰「メルマ旬報」での連載を修正、加筆したものです。秘蔵写真も入っている全話購入がお得です】  連載開始時には、ほぼ原稿を書き終わっている、あるいはしばらくは〝貯金〟があるという書き手もいれば、ぎりぎりにならないと書かないという人間もいる。  ぼくは後者だ。  『真説・佐山サトル』は、この連載の初回で書いたように見切り発車のような形で始まったこと、そして月刊誌であり時間的に余裕があるということから、毎月、原稿を書き出

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          真説佐山サトルノート round 28  登場人物の一人をイニシャル「K」とした理由

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