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書評『はじまりのテレビ 戦後マスメディアの創造と知』はテレビを語る上で必読の一冊

頭痛に悩まされながら、原稿を書いては横になるという感じで、かたつむりのように仕事を進めてます。

その合間に読んだ本の一部。


『ルポ 海外「臓器売買」の闇』(新潮新書)については、ぼくも興味があり調べていた問題でもある。国外での臓器移植の闇を読売新聞社会部が丁寧な取材で追い詰めている。ぼくたちのような個人の書き手、あるいは週刊誌ならば一気に行くところを、(いいかどうかは別にして)新聞ではそうしないところも印象的。

余談になるが、新聞記者たちの総合力、足腰の強さは間違いない。これだけの能力、意欲のあるが記者がいるのだから、もっと生かし方があるようにも思った。マクロの視点から見ることのできる「編集者」不在問題である。

それはともかく非常に面白い本。カニジル、カニジルラジオで取りあげます。


『はじまりのテレビ 戦後マスメディアの創造と知』(人文書院)は、もの凄い力作。今後、草創期のテレビを語る上で教科書になるような本。ここまできちんと調べて、まとまった本は存在しなかった。当時の芸能界を調べているぼくにとっては、仮説の答え合わせが出来た。付箋、アンダーライン多数。著者の松山秀明さんは、86年生まれの若い研究者。これからの活動が楽しみである。

一番の発見は、大阪の朝日放送が発行していた『放送朝日』という放送雑誌の存在。主たる執筆者は、当時新進気鋭の学者だった梅棹忠夫、そして小松左京。小松左京は、この雑誌を〈関西唯一の「高級総合誌」〉と評した。放送の枠を超えた先鋭的な雑誌が関西に存在したことを知らなかった。

雑誌は「場」である。その「場」を作るのが編集者だ。そうした編集者を涵養し、遊ばせる知性と余裕が、あの時代のテレビにはあったのだ。

5000円と高いが、それだけ価値がある一冊。


カニジルラジオのエンディングで、SeuJorgeが「ヤキソバ」を連呼するあの曲を使った、ぼくとしては、「ソース焼きそばの謎」(ハヤカワ新書)は外せない。こちらもしっかりとした調査に基づいた良書でした。


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