田崎健太(ノンフィクション作家)
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書評「夜明けを待つ」(佐々涼子 集英社インターナショナル)「旧統一教会 大江益夫・元広報部長 懺悔録」(樋田毅 光文社新書)
ようやく佐々涼子さんの遺作となった「夜明けを待つ」を読んだ。読むまでに心の準備が必要だったのだ。 彼女の「エンド・オブ・ライフ」を知り、ぼくが編集長を務める、とりだい病院広報誌「カニジル」に出てもらうことを考えた。版元の集英社インターナショナルから彼女にコンタクトをとってもらった。 佐々さんとは、同年代。同時期に早稲田の法学部にいた。微妙なのは、ぼくが「一浪一留」と二つだぶっていることだ。ぼくたちの時代、法学部の女子は10パーセント以下。同じクラス、ゼミの名前を出すとすぐに共
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書評「人口は未来を語る」(ポール・モーランド著 橘明美訳 NHK出版)「世界は経営でできている」(岩尾俊兵 講談社現代新書)「慶應高校野球部」(加藤弘士 新潮新書)
最近読んだ本の一部 「人口は未来を語る」(ポール・モーランド著 橘明美訳 NHK出版)、かなり面白い。著者はイギリスの人口学者、人口の増減から世の中の流れを読み解いて行く。 要点を書き出してみる。 ・乳児死亡率が高くなる=子どもを失う不安が減る→出生率が下がる それでも、アメリカや欧州の国々が人口を保っているのは、「移民」がいるから ただし、移民の出生率はやがて「受け入れ国」の出生率に近づいて行く。 ・一般的に教育水準の高い女性よりも低い女性の方が子どもを産む。
書評『戦後期 渡米芸能人のメディア史 ナンシー梅木とその時代』(大場吾郎 人文書院)『統計学の極意』(デイヴィッド・シュピーゲルハルター 宮本寿代・訳 草思社)
最近読んだ本の一部 どちらも読者を選ぶ本。 『戦後期 渡米芸能人のメディア史 ナンシー梅木とその時代』(大場吾郎 人文書院)は、芸能界を取材しているぼくにとっては参考になる一冊だった。以前から「上を向いて歩こう」がなぜアメリカでヒットしたのか、謎だった。 その地ならしをしたともいえるのが、ナンシー梅木、雪村いずみたちだった。そこではハワイが重要な役割を果たし、ジャニー喜多川の父がいたLAの高野山米国別院も出て来る。 ナンシー梅木が、直面した日本の芸能プロダクションとア
【書評】『裏切り者は誰だったのか CIA対KGB諜報戦の闇』(ハワード・ブラム著 芝瑞紀、高岡正人訳 原書房)、『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(三宅香帆著 集英社新書)
金曜日夜から土曜日朝まで12時間飲んだ反動で昨日は眠り続けてました。 沖縄、米子で激しく動いていた疲れが出たのかもしれない。今日から通常営業に戻します。 最近読んだ本の一部。 『裏切り者は誰だったのか CIA対KGB諜報戦の闇』(ハワード・ブラム著 芝瑞紀、高岡正人訳 原書房)は、キューバ危機、JFケネディ暗殺時代の「CIA」と「KGB」の諜報戦を描いたノンフィクション。 「モグラ」と呼ばれる二重スパイ(時に三重か)、機密情報の受け渡しの詳細、海での不審死——スパイ小
【書評】「狂伝 佐藤泰志 無垢と修羅」(中澤雄大 中央公論新社)、「スヌーピーがいたアメリカ ピーナッツで読みとく現代史」(ブレイク・スコット・ボール 今井亮一訳 慶応大学出版会)
出版社を退社した30代はじめから、資料を読み込んだりすることもあって、365日のうち何らかの仕事をしないのはひどい二日酔いの日だけだった。 最近は、コロナ後遺症の頭痛もあるので、ペースを落として土日は休むようにしている。 とはいえ、本は読む。 長らく積ん読になっていた二冊を読み終えた。 まず「狂伝 佐藤泰志 無垢と修羅」(中澤雄大 中央公論新社) 20代の頃、井田真木子さんと一度だけ仕事をした。そのときに日本の純文学=私小説となったことで、日本文学が矮小化、世界に通
【書評】「サイエンスフィクション あなたが知らない科学の真実」「アメリカは自己啓発本でできている ベストセラーからひもとく」「お客さん物語」
暑くて仕事山積みで……しかし頭痛が出るので休みながら色々とやっています。 その合間に読んだ本の一部 「サイエンスフィクション あなたが知らない科学の真実」(スチュアート・リッチー ダイヤモンド社)は「エビデンス」という言葉の怖さを思い知らされる。いかに「論文」が恣意的に操作されるか。ぼくたちは科学では「再現性」があるものだと信じている。しかし、多くの論文——特に心理学ではそうではないと著者は書く(日本でも似非心理学者の本が溢れている)。研究者の良心に頼らざるえないという現