見出し画像

傑作、必見!! ペルー映画「革命する大地(La revolucion y la tierra)

昨日、教え子たちとの飲み会の前、新宿のケーズシネマでペルー映画「革命する大地(La revolucion y la tierra)をようやく観ることができた。
傑作——。
過去のペルーのドラマ、ドキュメンタリーを発掘、その映像とインタビューを組み合わせるという構成。スピード感のある編集、2時間があっという間だった。
テーマは軍事政権のベラスコ大統領について、だ。
ぼくはペルー大使公邸事件の取材でしばらくリマに滞在、その後も何度かペルーを訪れている。映画に出て来る新聞「エル・コメルシオ」のサッカーチームに入り、試合にも出た。国会議員チームとフットサルもしたことがある。
サッカーで仲良くなった記者たちが手筈を整えてくれて国会の中に入った(大使公邸事件のとき、日本の外務省が行かないようにと言っていたアマゾン地帯で取材できたのも、彼らがある程度の安全を担保してくれたからだ。もちろん、空港に着いてからペルーの公安に尾行された)。サッカーは世界共通の「言語」なのだ。

2000年に再訪したとき国会議員チームとフットサル

さて、映画である。

ぼくはそれなりに文献を読んで、ベラスコ政権について知っているつもりだった。
60年代から、ラテンアメリカでは、ペルーの他、ブラジル、チリ、アルゼンチンなどで軍事政権が誕生している。その1つという認識だった。この映画を観て、ベラスコはクーデターによる軍事政権でありながら、キューバのような「革命」を起こそうとしていたことを知った。農地改革である。
ペルーなどラテンアメリカの国々は、メディアを旧宗主国の欧州出身の人間が握っている。彼ら、彼女たちにとって財産を奪ったベラスコは目障りだった(先住民族の土地を不当に自分のものにしたのは彼らだ)。だから、歴史をねじ曲げベラスコを悪者にした。
ぼくもその轍にはまっていたのだ。
この映画の中でぼくが一番気に入ったのは、ベラスコの後継大統領となったフランシスコ・モラエスのインタビューである。前半、モラエスは好々爺という風情である。しかし、ベラスコの行った改革を全て覆したのはモラエスであり、ペルーのドキュメンタリー映画を廃棄したのも彼だった。監督と思われる人物は「あなたが映画を廃棄しましたよね」と問う。彼は「そんなものあったっけ」としらばっくれる。このやり取りをきちんと入れることが大事。棘を持つことが取材者には必須だ。ぼくのノンフィクションと同じ。彼とは仲良くなれる。
映画の後のトークショー、パンフレットを見て残念だったのは、誰もウーゴ・ソティルに触れていないこと。FCバルセロナでプレーしたこともある元サッカー選手だ。映画ではソティルを主人公にした「エル・チョロ」が使われている。ラテンアメリカの文化を語る上で、サッカーは切り離せない。しかし、日本の「アカデミア」はなぜかそこに目を瞑っている気がする。
ウーゴ・ソティルについては、今週更新した「国境なきフットボール」でも触れている。偶然完全。
https://www.ninomiyasports.com/archives/112238


催涙弾の飛ぶ中、デモを取材
ペルーの国会


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?