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今日から使える建築雑学#2「土といえば〇〇」

1.瓦

和風の建物の屋根といえば何? 
と聞かれれば、おそらく大半の人が「瓦屋根」と答えるのではないでしょうか?

その瓦の原料は粘土です。(今ではセメントも使いますが。)実は、日本国内の瓦生産量の半分以上を占めるのが、愛知県生まれの瓦である「三洲瓦」です。「三州」とは愛知県の「三河地方」のことです。

2.三和土

さらにもう一つ。
こちらの漢字は何と読むか分かるでしょうか?

「三和土」

こちらは「たたき」。
日本建築に昔から土間の仕上として用いられていました。最近でもたたき仕上の土間が流行っているでしょうか。

一般的に「三和土(たたき)」は、赤土・消石灰・にがりの3つの材料を混ぜて作られることから、この字になったといわれています。

しかし、この「たたき」を1906年初版の『日本建築辞彙』(著:太田博太郎)で調べてみると、"風化花崗石なり。之に石灰及び苦盬を混せて泉水又は床等を作ることあり。参州碧海群のもの最有名なり。仍て参州土の名あり。"とあります。

「参州碧海群のもの最有名なり。仍て参州土の名あり。」
参州→三州→三河のことで、碧海は愛知県三河地方の地名です。
参州土→三州土→三河の土→三和土に変化したという説もあるのではないかと私は思っています。昔の人々が、たたきといえば、「三河の土」→「三河土」→「ミカワツチ」→「ミワツチ」→「三和土」と訛って、たたきを当て字として「三和土」とも表記するようになったのではないでしょうか。「たたき」という音を、3つの材料を使うからという理由で、到底知らないと読めない漢字「三和土」に敢えて変換する理由があったでしょうか。

しかも、この1906年の建築辞彙には「敲き」と表記してあり、「三和土」という表記はありません。つまり、三州が三河と呼ばれるようになった1900年代と同時発生的に「三和土」と書かれるようになったと考えられます。当時、全国の職人たちにまだ「三河」という言葉が知れ渡っていなく、ミカワツチが「ミワツチ」に聞こえたのかもしれません。

3.陶磁器

愛知といえば陶磁器も有名です。陶磁器の原料も土です。陶磁器を総称して「セトモノ」と呼ぶことがありますが、こちらの語源は愛知県の瀬戸市で生産される瀬戸焼からきています。瀬戸焼の始まりは平安時代からとも言われており、とても古い歴史があります。

そして、日本各地の陶磁器産地の中で、中世から現代まで続く窯を「日本六古窯」といいます。
6つの産地とは、越前・瀬戸常滑・信楽・丹波・備前です。6つのうち2つの産地(瀬戸・常滑)が愛知県にあります。

4.LIXILとTOTO

洗面器や便器の陶器といえば、たいていこの2大メーカーがまず浮かぶのではないでしょうか。

LIXILは約10年ほど前に、INAXやトステムなどの数社が合併された会社ですが、INAXはもともと常滑焼で有名な愛知県常滑の会社「伊奈製陶」からきている。

TOTOは、こちらも愛知県名古屋市に本社がある明治創業の「ノリタケ」の製陶研究所が母体となり1917年に設立された東洋陶器株式会社の略称「東陶(トウトウ)」からきています。もちろんノリタケも陶磁器で有名な世界的なメーカー。(※TOTO本社は北九州市にある)

5.土といえば愛知

以上のように、古来から土の産地や焼き物文化として活躍していた愛知。今日は雑学として一つ、「土といえば愛知」から連想して、普段何気なく見る「三州瓦」や「三和土」、「セトモノ」に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

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