慎野たつき

頭の中に浮かんでは消える物語や思いを、文章として具現化していこうと思います。 創作小説…

慎野たつき

頭の中に浮かんでは消える物語や思いを、文章として具現化していこうと思います。 創作小説や日常の思いなど中心に。 プロフィール画像は親友の〝ねーさん〟に描いていただきました。 これまでの作品はマガジンにまとめております。 記事へ感想をいただけたら大変励みになりますのでお願いします!

マガジン

  • 【小説】迷い猫_創作大賞2024応募作品

    全10話 公開中 -あらすじ-  大学生の山本茉莉は、ある日、大通り沿いの側溝で衰弱する猫を見つける。通りかかったゼミの同期である小田友梨佳とともにその猫を助けた茉莉は、猫を保護し元の飼い主を探し始める。  難航するかに見えた飼い主探しはすぐに解決したが、飼い主として現れた人物から醸し出される不気味な雰囲気に戦慄した茉莉は一時的に猫を自宅へ匿うこととする。  猫を匿ったことにより茉莉と友梨佳は脅迫めいたメッセージを受けるようになる。次第に明らかになっていく、猫にまつわる様々な違和感の正体とその背後に存在する〝悪意〟とは……。

  • 【小説】ペデストリアンデッキの舞姫と焼けた靴

    全12話 72,889文字 -あらすじ- ——2020年3月某日、渋谷駅のペデストリアンデッキで女性が低体温症で亡くなる。  外資系保険会社に勤務する真山里奈は、仕事での評価が高く部下からの信頼も篤い優秀な女性。だが6年前に結婚した夫の真山裕貴との関係は数年前から悪く、今は別居し単身で都内のマンションに住む。そのマンションに2ヵ月前から、リョウという整体師が居候している。  高校生のユキは「7歳のときに死んでしまった」と思っていた母が実は生きていて、ある事故をきっかけに世間から誹謗中傷を浴びていることを知り、仲の良い部活の先輩駒場とともに母を救おうと考える。  2人と、渋谷駅で遺体で発見された女性との関係は……?

  • 【小説】ゆれるかご

    商社に勤める中村亜希子は、恋人の田畑聡とその娘小梅と、シェアハウスに暮らす同居人のような気負わない暮らしをしていた。 ある日、亜希子は会社の人事部から突然呼び出されあらぬ疑いをかけられる…… *** 全5話の創作小説です。 お気に召したら是非スキお願いします!

  • 【小説】窓際のMadam

    全2話 14,809文字(6530文字/8279文字) -あらすじー 毎日決まって夜21時にファミレスにくる女性…… 一杯のグラスワインだけを飲んで帰る。 アルバイトとして働く大学生 柏木萌花はバイト仲間の山本遥とその女性の〝日課〟について話題にしているうちに女性の奇妙な行動を目撃してしまう…… バイト先に来る常連さんの謎を通じて織りなす「まだ自分が何者かわからない」若者の日常と友情。

最近の記事

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【小説】迷い猫 1

【あらすじ】  大学生の山本茉莉は、ある日、大通り沿いの側溝で衰弱する猫を見つける。通りかかったゼミの同期である小田友梨佳とともにその猫を助けた茉莉は、猫を保護し元の飼い主を探し始める。  難航するかに見えた飼い主探しはすぐに解決したが、飼い主として現れた人物から醸し出される不気味な雰囲気に戦慄した茉莉は一時的に猫を自宅へ匿うこととする。  猫を匿ったことにより茉莉と友梨佳は脅迫めいたメッセージを受けるようになる。次第に明らかになっていく、猫にまつわる様々な違和感の正体とそ

    • サイトマップ【2024.7.31】

      こんにちは! 慎野たつきです。 ご覧いただきありがとうございます。 こちらのページは私のサイトマップです。今後も記事が増えたら更新していきます。 サイトマップを作ろうと思い立ったのは伊藤様のこの記事を拝読したからです。サイトマップへの熱い想いがすごい! 私はnoteでは主に創作小説などを載せております。 どう分類しようか悩んだのですが、なかなかジャンル分けが難しく……掲載順に並べてハッシュタグ的ワードを添えておくことにしました。 複数話ある中編以上のものは、マガジンなど

      • 【小説】迷い猫 10〔最終話〕

        9話 / マガジン (10)  友梨佳から聞いた住所は大学のキャンパスから目と鼻の先だった。一分さえも惜しかった茉莉は自転車で向かい、数分でその建物に辿り着いた。  淡い色合いの外観をしたアパートだった。部屋番号までもちろん聞いていたが、建物の前で茉莉は躊躇した。堂々とインターフォンを押したところで、門前払いにされる気がした。  友梨佳が来るまで待つ方がいい。そう思った茉莉は建物の前で待つことにした。  五分ほど経過しただろうか。  しばらくして視界に人影が入り、友梨

        • 【小説】迷い猫 9

          8話 / マガジン / 10話 (9) 「また後で連絡するよ。茉莉、あんまり考えこみすぎちゃダメだよ」  友梨佳との電話を終えると、茉莉は部屋の床に敷かれたラグに零れた涙の染みが出来ているのを見つめた。さらに一つ二つと染みが増える。  泣いていたって仕方ない。頭ではそう思うが、現実を直視すればするほど感情がかき乱される。  とろろの居たダンボール箱は無情なほどに部屋の中で存在感を示す。  たった三日間だったが、この部屋の中に生きものの温かみと柔らかさが満ちたことは、

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        【小説】迷い猫 1

        マガジン

        • 【小説】迷い猫_創作大賞2024応募作品
          10本
        • 【小説】ペデストリアンデッキの舞姫と焼けた靴
          12本
        • 【小説】ゆれるかご
          5本
        • 【小説】窓際のMadam
          2本

        記事

          【小説】迷い猫 8

          7話 / マガジン / 9話 (8)  ビルの裏手には事前の確認通りにロッカーがあった。薄暗くあまり人目につかない。犯罪者が好みそうな場所だと茉莉は感じた。  茉莉と友梨佳は周囲を何度も振り返りながら、その一つのロッカーにキャリーをしまう。  実際にはキャリーの中に猫はいないのだが、このような薄暗い中に生き物を入れろと指定してくる相手に自ずと嫌悪感が湧き起こる。  茉莉は一つ深呼吸をすると、ゆっくりと施錠をして、その鍵を持参した封筒に入れた。  二人はそのまま多摩モノレ

          【小説】迷い猫 8

          【小説】迷い猫 7

          6話 / マガジン / 8話 (7)  茉莉のスマートフォンに表示された母の名前を見ながら、茉莉は呆然とした。このタイミングでの母からの電話は、何事かを予感させる。横から翔太がスマートフォンを奪い取って電話に出た。 「おかん? 俺、翔太。うん、ちょっと姉と一緒にいるの。どうした?」  うんうん、といいながら翔太が話す。茉莉はまるで今も手の中にスマートフォンがあるようなポーズのまま、その様子を眺めた。 「え? あー……。ああ、それね。うんっと……ちょっとね、姉に聞かな

          【小説】迷い猫 7

          【小説】迷い猫 6

          5話 / マガジン / 7話 (6)  13時に自宅へ戻った翔太に、とろろの世話に関する説明をして、茉莉は家を出た。  三限が終わる頃に大学で友梨佳と話をするつもりだった。警察に届を出すにあたって、その後のことを相談したいと考えていた。 「部屋の扉閉めるの絶対忘れないでね。なんかあったら連絡して」 「うぇい」  翔太は手を振った。軽すぎて少々頼りないが、この状況でとろろを外に連れ歩くよりはマシだろうと考えた。午後はずっとオンラインゲームをするので自宅にいるという。

          【小説】迷い猫 6

          【小説】迷い猫 5

          4話 / マガジン / 6話 (5)  茉莉は6桁の数字を見つめた。  何故、最初にこの違和感に気付かなかったのだろう。普通、自分の飼い猫に数字などつけるだろうか。  これは何かを指し示す番号に違いない。  ヒントがあまりにも少ない中、とりあえず茉莉はその6桁の数字を検索してみた。世の中の様々な商品番号などがヒットし、もちろん何の参考にもならない。  続いて「猫 103568」と検索してみる。こちらもペット用品などがヒットした。 「そんなにうまくはいかないか」  茉

          【小説】迷い猫 5

          【小説】迷い猫 4

          3話 / マガジン / 5話 (4) 「利久斗!」  友梨佳が声を上げると同時にその男性は友梨佳と茉莉の手を引いた。そのまま階段を下り路肩に停めてあった車に2人を誘導すると、乗るよう促した。  茉莉は何が何だか分からないまま猫のキャリーを抱え車に乗り込んだ。  黒い服の人物は、まさに茉莉たちが車に乗り込んだ瞬間にあと僅かのところまで辿り着いた。  車の窓から険しい表情で覗き込むと、次の瞬間乱暴に車の扉を叩いてきた。ドンドン、ドンドン、執拗に何度も叩きつけてくる。 「

          【小説】迷い猫 4

          【小説】迷い猫 3

          2話 / マガジン / 4話 (3)  翌朝、母と弟が出かけた頃合いに友梨佳が猫のキャリーを持ってやってきた。到着の連絡を受け茉莉が家の外に出ると、道路の向かいから友梨佳が手を振っているのが見える。 「おはよう! 飼い主さん見つかって良かったね」 「うん。小田さん、ここまでどうやってきたの?」 「うん? 車だよ。送ってもらった」  涼し気な顔で友梨佳は返した。一人暮らしのはずなのに誰に、などと野暮なことは茉莉とて聞かない。 「友梨佳でいいよ。私も茉莉って呼んでいい?

          【小説】迷い猫 3

          【小説】迷い猫 2

          1話 / マガジン / 3話 (2)  助けたほうがいい、そう思いながら具体的な案も浮かばないまま数分が過ぎた。せめてなにか、箱でもあれば……、茉莉はショッピングモール一階のテナントにスーパーが入っていたことを思い出した。スーパーなら、おそらく使い古しのダンボールを無償で配布しているはずだ。  でもそれまでこの猫はどうする? 戻ってきたら、もう居ないのではないか……。  そこまで茉莉が考えたときだった。猫と自分の間にふいに影が交ざった。 「山本さん?」  振り返るとそ

          【小説】迷い猫 2

          【小説】試したがる女

          1 ――2023年10月10日  私が今から皆さんにお話しするのは、決して他言はしないと誓約したある事実についてです。何故、守秘義務に反して話すかというと、シンプルに言って〝墓場まで持っていくのがしんどくなったから〟。  念の為言い添えると、私はそこまで口の軽いほうではありません。その証拠として、これから話す内容はこの15年間今まで誰にも話したことはありません。  ただ、元来人間は秘密を隠しておくことが出来ない性質で、その秘密が重要であればあるほど、外部に漏らしていけない

          【小説】試したがる女

          【雑記】noteをはじめて3年経った

           こんにちは。慎野たつきです。  タイトル通りですが、私がnoteに最初の作品を載せてから、なんと3年が経過してしまいました。  光陰矢の如し……  歳月人を待たず……  いやいや、時の流れがここ数年狂っているのではないか?(そんなわけない)  なんとなく一区切りでもあるので、ここらで振り返りしてみようと思い立ちました。  3周年といえば、バンドやアイドルとかなら周年ツアーとかしちゃうタイミングだし?  他のクリエイターさんを見ていると、「自分のイチオシ作品」や「スキが

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          【読書録】黒澤いづみ著『人間に向いてない』

          読み始めて「すごい」の連続。 家族という一番近くて一番難しい人間関係を考えるきっかけとなった。 ■黒澤いづみ著『人間に向いてない』について ■感想(未読の方へ:主題に触れています)  ある日突然、人間の姿が虫や魚・小動物などに似ている、それでいてグロテスクな異形に変異してしまうという病。別名ミュータント・シンドローム。  設定からして衝撃を受ける。  変異した異形の種類や外観に関する表現が細かくて、文字から伝わってくる〝未知のもの〟への恐怖やおどろおどろしさ、中でも〝脚

          【読書録】黒澤いづみ著『人間に向いてない』

          【小説】ペデストリアンデッキの舞姫と焼けた靴 12(最終話)

          第五章 (2)  一睡も出来なかった里奈は、身支度をして出社した。睡眠不足をやり過ごすためエナジードリンクを飲み干しさらにはカフェインを摂取して、朝のミーティングに出た。その後、智哉に声をかけた。 「結城くん、ちょっと……」 「おはようございます。なんですか? お客さんでも紹介してくれるんですか?」  智哉はいつものテンションで里奈に接してきた。たまたま空室となっていた応接に入るとストレートに訊ねた。 「あなた〝舞姫〟なの?」  里奈のその言葉に、結城智哉は一瞬今ま

          【小説】ペデストリアンデッキの舞姫と焼けた靴 12(最終話)

          【小説】ペデストリアンデッキの舞姫と焼けた靴 11

          第五章 (1)  里奈は上司に「看病の必要が無くなったので、明日から出社したい」と申し出た。  正直働く気持ちにはなれないが、働かなければ生きていけない。ましてや夫の裕貴はあんな状況でしばらくは入院することとなるだろう。  自宅は連帯債務でローンを組んでいたし、自分が働かなければ……という義務感だけで、里奈は無理やり重い腰を上げた。  翌朝、里奈は朝のミーティングの前に部長のもとへ行くと、部長は首でくいっとミーティングルームを示し、場所を移すことを促した。  ミーティン

          【小説】ペデストリアンデッキの舞姫と焼けた靴 11