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vol.9 SCにも欲しいCFOという存在

藻類のミドリムシを使ったバイオ燃料や食品、化粧品などの開発を進める「ユーグレナ」という企業はご存知でしょうか?この企業は、飲料も製造しているのですが、なんと今年の9月からペットボトルを全廃するそうです。しかも、2021年中に、商品に使われる石油由来プラスチックを半減するそうです。

〈BuzzFeed News/2020年7月4日〉

サスティナブル(持続可能な社会)というのは、最近の重要なキーワードで、どの分野でも取り組みが進んでいますが、かなり思い切った決断をしました。

この英断に導いたのが、CFOの小澤杏子さん。なんと18歳の高校生です。

CFOは通常「Chief Financial Officer(最高財務責任者)」のことを指しますが、ユーグレナさんのCFOは「Chief Future Officer」。つまり、最高未来責任者。副社長に次ぐ、3番目のポジションとのことです。

永田暁彦副社長は、「会社と地球の未来のことを決めるのに、未来を生きる当事者がいないのは、おかしい。未来を生きる主役の子どもたちこそに、考えてもらうべきではないか」と思い、CFO(最高未来責任者)を18歳以下で募集し、小澤に白羽の矢を立てたそうです。

SCは果たして遠い未来を夢想しているだろうか?

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私は普段、電鉄系や不動産系の商業施設を受け持つことが多く、そのほとんどの施設に親会社が存在しています。ゆえに、社長以下幹部は親会社からの出向で固められ、数年ごとに役員が変わります。

新しい体制になる度に、組織が大幅に変わるので、会社としてはとても流動的です。もちろん、そうであることでのメリットもたくさんあります。協力会社との癒着が減ったり、部署間を異動する機会が多いことで、さまざまな人とさまざまな仕事をする機会に恵まれます。マンネリを防ぐという意味でも大きいでしょう。

しかし、一方でどうしても短期的な視点になります。社長が交代する度に中長期計画(だいたいは3ヵ年計画)を刷新するので、商業施設によっては社長が代わる度に会社が変わるようなものです。

どうしても計画と行動が場当たり的になってしまい、数年ごとに変わる組織で上手くやり過ごすことが重要になってしまいます。プロセスデザイナーの柴田昌治さんのお言葉を借りるなら、「挑戦文化」ではなく「調整文化」が優先してしまいます。そうなると目下、すぐに成果が出せるのはコスト削減。未来への投資は皆無となります。

「調整文化」がSCのコモディティ化を進めてしまう

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私は各SCには、無形資産も含め、多くの財産(個性・武器)が眠っていると思っています。長く経営している企業ほど、それがあると思います。

しかし、調整文化では小手先の計画や改善になってしまいますし、数年間何事も問題を起こさないことが主目的になってしまうので、確実に前例(成功事例)がある方策をとってしまうので、コモディティ化が進んでしまいます。それはそうです。前例があることをトレースしているだけなのですから。

これでは、この企業の未来は先細りしてしまいます。ユーグレナさんのような理想的で大胆な形をとれるかは分かりませんが、未来を考える装置、未来に投資する装置は組織として実装した方が良いでしょう。

コロナで先が見えないという声がありますが、コロナ前からVUCA時代(答えのない時代)と言われていました。成功事例もすぐに時代遅れになってしまう今、過去の、他社の、成功事例を追いかけることは、とてもリスクが高い。本当に顧客の立場に立って、本当に素敵なことを夢想し、失敗を恐れず挑戦する。そのような企業体質をどうつくるか?CFOの事例は、そんなことを痛切に考えさせてくれます。





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